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03-リナリアの逃避
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昨日は休みだったから、部屋の中に引きこもっていたら何とか第三王子に遭遇せずに済んだ。
でも、今日は勤務日だからそうはいかない。
私の主な仕事は王女様や西の離宮で暮らす者達の生活に必要な物を揃える、所謂お買い物係だ。もちろん収支報告もしなければならない。
私と同じ仕事に就いている者は私の他に三人いる。つまり、4人で仕事を回しているのだ。
「どうしたの? リナリー、何だか今日は暗いじゃない?」
「メリッサ、何だか一昨日の飲み過ぎのせいでちょっと怠いみたい」
「あら? あの後帰ってからまた飲んだの? そういえばあなた残っていたワインボトル持って行ってたわね。あれ、半分以上残ってたけどまさか全部一人で飲んだって言わないわよね」
私はメリッサの言葉にそっと目を逸らした。
「まったく、昨日一日で酔いが抜けなかったってこと? まさか昨日も飲んだ訳じゃないわよね?」
私は更に目を逸らす。
「あなたねぇ、いつか酒で失敗するわよ!」
メリッサのお小言にもう既に失敗しましたとは言えない私だった。
だって、寝ようとすると第三王子の麗しい寝顔がちらついて眠れなかったのよぅ!
だから、ついついお酒に頼ってしまったのよぅ!
心の中で私は涙を流した。
兎に角、ほとぼりが冷めるまで第三王子と会うわけにはいかない。
仕事部屋はこの西の離宮内にあるからきっとそれは叶うだろう。
と思っていたのに……。
「リナリア・ハーセンロンダ嬢はおられるか?」
その声に呼ばれて顔を上げると王宮に使える従者がドアの前に立っていた。
「はい、リナリアは私です。何かございましたか?」
「第三王子トーマス殿下がお呼びです」
折角この離宮から出なければ会わないと思っていたのに、まさかこう堂々と呼び出されるとは!
こうして名指しで呼び出されると言うことは殿下は私のことを知っていて一夜を共にしたのだろう。
でも、何で? 何で私の名前を知っているの?
私ってそんなに目立つ存在じゃないわよね。
意味が分からず首を傾げる私。
「リナリー、あなた何をしたのよ」
訝しげな目を向けるメリッサ。
あら? 訝しげな目を向けているのはメリッサだけじゃないわね。
同じ任務に就いている他の二人もメリッサと同じ目を私に向けているのはなぜ?
私、何もしていないわよね。
タダちょっと飲み過ぎて第三王子と一夜を共にしちゃっただけじゃない? だからといって多分何もなかったと思うわよ。だって、前世での初めての時は朝起きたら下腹部が重怠かったしちゃんと痛かったもの。どこがとはハッキリとは言えないけど。
それに酔った勢いでしちゃった。テヘペロ? なんてことは前世ではよく聞く話だったわよね。もちろん、相手が王子様なんて話は聞いたことはなかったけど。
兎に角、例え一夜を共にしたとしてもそれだけで何もなかった……筈。
「なっ、何もしていないわよ!」
ああ、もうこんな焦ったように答えてしまっては心当たりがあるようなものではないか。
はあ、何れにせよ第三王子の呼び出しを無視するわけにはいかないわよね。
私は呼びに来た従者が案内するままに第三王子が住まう東の離宮に向かった。
案内された扉の前で来ると私は固まってしまった。
いや、ここって第三王子の自室だよね。二日前にこの部屋で一夜を共にしたのだからしっかりと覚えている。
せっかく誰にも見られないようにこの部屋から去ったのにこう堂々とプライベートルームに呼ばれるなんてまずいんじゃないの?
そう思ったのに従者が殿下に取り次いでいる。
「やぁ、リナリア嬢。待っていたよ。入り給え」
直ぐに第三王子が部屋から出て来て私の方に目を向けると満面の笑みで言った。
第三王子に逆らえるはずもなく私はその言葉に従って部屋に入った。
ああ、何で私またこの部屋にいるの?
そんな疑問は、その次に来る第三王子の言葉で掻き消えた。
「酷いよリナ。朝目覚めたらいなくなっているんだから」
第三王子は二人きりになると空の様に蒼い双眸を細めて苦笑したのだった。
でも、今日は勤務日だからそうはいかない。
私の主な仕事は王女様や西の離宮で暮らす者達の生活に必要な物を揃える、所謂お買い物係だ。もちろん収支報告もしなければならない。
私と同じ仕事に就いている者は私の他に三人いる。つまり、4人で仕事を回しているのだ。
「どうしたの? リナリー、何だか今日は暗いじゃない?」
「メリッサ、何だか一昨日の飲み過ぎのせいでちょっと怠いみたい」
「あら? あの後帰ってからまた飲んだの? そういえばあなた残っていたワインボトル持って行ってたわね。あれ、半分以上残ってたけどまさか全部一人で飲んだって言わないわよね」
私はメリッサの言葉にそっと目を逸らした。
「まったく、昨日一日で酔いが抜けなかったってこと? まさか昨日も飲んだ訳じゃないわよね?」
私は更に目を逸らす。
「あなたねぇ、いつか酒で失敗するわよ!」
メリッサのお小言にもう既に失敗しましたとは言えない私だった。
だって、寝ようとすると第三王子の麗しい寝顔がちらついて眠れなかったのよぅ!
だから、ついついお酒に頼ってしまったのよぅ!
心の中で私は涙を流した。
兎に角、ほとぼりが冷めるまで第三王子と会うわけにはいかない。
仕事部屋はこの西の離宮内にあるからきっとそれは叶うだろう。
と思っていたのに……。
「リナリア・ハーセンロンダ嬢はおられるか?」
その声に呼ばれて顔を上げると王宮に使える従者がドアの前に立っていた。
「はい、リナリアは私です。何かございましたか?」
「第三王子トーマス殿下がお呼びです」
折角この離宮から出なければ会わないと思っていたのに、まさかこう堂々と呼び出されるとは!
こうして名指しで呼び出されると言うことは殿下は私のことを知っていて一夜を共にしたのだろう。
でも、何で? 何で私の名前を知っているの?
私ってそんなに目立つ存在じゃないわよね。
意味が分からず首を傾げる私。
「リナリー、あなた何をしたのよ」
訝しげな目を向けるメリッサ。
あら? 訝しげな目を向けているのはメリッサだけじゃないわね。
同じ任務に就いている他の二人もメリッサと同じ目を私に向けているのはなぜ?
私、何もしていないわよね。
タダちょっと飲み過ぎて第三王子と一夜を共にしちゃっただけじゃない? だからといって多分何もなかったと思うわよ。だって、前世での初めての時は朝起きたら下腹部が重怠かったしちゃんと痛かったもの。どこがとはハッキリとは言えないけど。
それに酔った勢いでしちゃった。テヘペロ? なんてことは前世ではよく聞く話だったわよね。もちろん、相手が王子様なんて話は聞いたことはなかったけど。
兎に角、例え一夜を共にしたとしてもそれだけで何もなかった……筈。
「なっ、何もしていないわよ!」
ああ、もうこんな焦ったように答えてしまっては心当たりがあるようなものではないか。
はあ、何れにせよ第三王子の呼び出しを無視するわけにはいかないわよね。
私は呼びに来た従者が案内するままに第三王子が住まう東の離宮に向かった。
案内された扉の前で来ると私は固まってしまった。
いや、ここって第三王子の自室だよね。二日前にこの部屋で一夜を共にしたのだからしっかりと覚えている。
せっかく誰にも見られないようにこの部屋から去ったのにこう堂々とプライベートルームに呼ばれるなんてまずいんじゃないの?
そう思ったのに従者が殿下に取り次いでいる。
「やぁ、リナリア嬢。待っていたよ。入り給え」
直ぐに第三王子が部屋から出て来て私の方に目を向けると満面の笑みで言った。
第三王子に逆らえるはずもなく私はその言葉に従って部屋に入った。
ああ、何で私またこの部屋にいるの?
そんな疑問は、その次に来る第三王子の言葉で掻き消えた。
「酷いよリナ。朝目覚めたらいなくなっているんだから」
第三王子は二人きりになると空の様に蒼い双眸を細めて苦笑したのだった。
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