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06-リナリアの回想②
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待ち合わせ場所は、病院から歩いて5分位のコンビニの駐車場。
指定された黒い車のナンバーを確認して近づくと斗真が車から降りてきた。
「よかった、来てくれた」
満面の笑みを向けて安心したように呟いた。
「あんな風に書かれたら来ない訳にはいきません」
私は素っ気ない態度で言葉を放った。
「それでも嬉しいよ。君は俺に全然興味が無いようだからね」
「女性全てが貴方に興味を持つなんて思っていたら傲慢ではないでしょうか?」
「まったく、君の言うとおりだね。でも俺はそんな風には全然思ってないよ」
私の棘のある言い回しにも優しい笑みを崩さない斗真に戸惑いが隠せない。イケメンの微笑みは破壊力抜群で私は絆されないように彼の目を正面から見ることが出来なかった。
「さあ、乗って」
紳士のように助手席のドアを開けて座るように促す斗真に何とか平静を保つ私。
一つ一つスマートな仕草にも何故か苛立ってしまう。
一体私を誘ってどうするつもりなのだろうか?
「強引で悪かった。こうでもしないと君を誘っても来てくれないかと思ったから。何か予定とか有ったのなら申し訳無い」
「今更です」
私は素直になれずついつい斗真に冷たい言い方をしてしまった。
「お詫びに今日は美味しいものをご馳走するよ」
それでも斗真は怒ることなく私に話しかけてくれた。
斗真が連れて行ってくれたのはお洒落な和風レストランだった。
一見様お断りと言われそうな格式の高そうなレストランは、私一人だったら絶対に行くことは無いだろうと思われた。
入り口まで来たのに躊躇する私。
「どうしたの? 和食じゃない方がよかった?」
斗真はそう言ったが私にとってはそう言う問題じゃなかった。「高そう」とか思う以上に「私なんかがこんな店に足を踏み入れて良いのだろうか?」と言う思いの方が強かった。
それでも私の為に予約したのであろうことを思うと今更断ることも出来なくて促されるまま店に入った。
黒を中心とした店内に所々に和が施され、和紙で作られた照明は柔らかい光を放っていた。ついつい初めて足を踏み入れた高級感漂う店を見回したくなるのを抑えて案内された個室に入り席に着いた。
「実はさぁ、俺も初めてなんだよね。この店に来るの」
斗真の柔らかい笑みに目を逸らす私。自分の笑顔がどんなに強い破壊力があるのか全く自覚がない斗真に苛立ってしまう。
イケメンってずるいわっ! そんな笑顔を向けられると勘違いしてしまいそうになじゃない。
「あんなに女性に囲まれているのに?」
あっと思ったのも束の間、私の口からついつい本音が零れていた。でも、仕方が無い。一度口から零れた言葉は元に戻すことは出来ないのだ。雰囲気が悪くなることを覚悟しつつ斗真の顔色を伺った。
斗真が一瞬固まり、片手で口を抑えていた。やっぱり言い過ぎてしまっただろうか? そんな心配が頭を過ぎったが、斗真の方が僅かに震えていることに気がついた。
「くっ、くくくくっ……やっぱり君は面白いや」
あれ? どこに笑う要素があったのだろう? 不思議に思って首を傾げる私。
「さて、飲み物は何が良い? お酒、飲めるよね。俺は車だから飲めないけど、君は飲んでもいいよ。帰りは送るから」
「じゃあ、遠慮なく」
斗真は全然気にした様子もなくお酒を勧めてきた。送ってくれるのならいいよね。私は気持ちを切り替えて、だったらとことん奢って貰おうと思った。
だって、私の貴重な時間を奪ったんだもの。それくらい許されると思う。
それが間違いの元だった。
高級和風レストランだけあって、お店の料理もお酒も美味しかった。お酒は和食に合うおすすめの日本酒を選んだ。
私はアルコールに強い方で、毎日のように晩酌していた。仕事が終わった後のビールは何ものにも代え難い私にとって楽しみの一つだった。二日酔いの経験もなかったので過信していたのかも知れない。
この時までは。
ビールと違って日本酒は思いの外私の判断能力を奪ってしまった。記憶を失うほど酔ってしまうとはなんたる失態。
私は翌日、斗真の腕の中で目を覚ましたのだった。
指定された黒い車のナンバーを確認して近づくと斗真が車から降りてきた。
「よかった、来てくれた」
満面の笑みを向けて安心したように呟いた。
「あんな風に書かれたら来ない訳にはいきません」
私は素っ気ない態度で言葉を放った。
「それでも嬉しいよ。君は俺に全然興味が無いようだからね」
「女性全てが貴方に興味を持つなんて思っていたら傲慢ではないでしょうか?」
「まったく、君の言うとおりだね。でも俺はそんな風には全然思ってないよ」
私の棘のある言い回しにも優しい笑みを崩さない斗真に戸惑いが隠せない。イケメンの微笑みは破壊力抜群で私は絆されないように彼の目を正面から見ることが出来なかった。
「さあ、乗って」
紳士のように助手席のドアを開けて座るように促す斗真に何とか平静を保つ私。
一つ一つスマートな仕草にも何故か苛立ってしまう。
一体私を誘ってどうするつもりなのだろうか?
「強引で悪かった。こうでもしないと君を誘っても来てくれないかと思ったから。何か予定とか有ったのなら申し訳無い」
「今更です」
私は素直になれずついつい斗真に冷たい言い方をしてしまった。
「お詫びに今日は美味しいものをご馳走するよ」
それでも斗真は怒ることなく私に話しかけてくれた。
斗真が連れて行ってくれたのはお洒落な和風レストランだった。
一見様お断りと言われそうな格式の高そうなレストランは、私一人だったら絶対に行くことは無いだろうと思われた。
入り口まで来たのに躊躇する私。
「どうしたの? 和食じゃない方がよかった?」
斗真はそう言ったが私にとってはそう言う問題じゃなかった。「高そう」とか思う以上に「私なんかがこんな店に足を踏み入れて良いのだろうか?」と言う思いの方が強かった。
それでも私の為に予約したのであろうことを思うと今更断ることも出来なくて促されるまま店に入った。
黒を中心とした店内に所々に和が施され、和紙で作られた照明は柔らかい光を放っていた。ついつい初めて足を踏み入れた高級感漂う店を見回したくなるのを抑えて案内された個室に入り席に着いた。
「実はさぁ、俺も初めてなんだよね。この店に来るの」
斗真の柔らかい笑みに目を逸らす私。自分の笑顔がどんなに強い破壊力があるのか全く自覚がない斗真に苛立ってしまう。
イケメンってずるいわっ! そんな笑顔を向けられると勘違いしてしまいそうになじゃない。
「あんなに女性に囲まれているのに?」
あっと思ったのも束の間、私の口からついつい本音が零れていた。でも、仕方が無い。一度口から零れた言葉は元に戻すことは出来ないのだ。雰囲気が悪くなることを覚悟しつつ斗真の顔色を伺った。
斗真が一瞬固まり、片手で口を抑えていた。やっぱり言い過ぎてしまっただろうか? そんな心配が頭を過ぎったが、斗真の方が僅かに震えていることに気がついた。
「くっ、くくくくっ……やっぱり君は面白いや」
あれ? どこに笑う要素があったのだろう? 不思議に思って首を傾げる私。
「さて、飲み物は何が良い? お酒、飲めるよね。俺は車だから飲めないけど、君は飲んでもいいよ。帰りは送るから」
「じゃあ、遠慮なく」
斗真は全然気にした様子もなくお酒を勧めてきた。送ってくれるのならいいよね。私は気持ちを切り替えて、だったらとことん奢って貰おうと思った。
だって、私の貴重な時間を奪ったんだもの。それくらい許されると思う。
それが間違いの元だった。
高級和風レストランだけあって、お店の料理もお酒も美味しかった。お酒は和食に合うおすすめの日本酒を選んだ。
私はアルコールに強い方で、毎日のように晩酌していた。仕事が終わった後のビールは何ものにも代え難い私にとって楽しみの一つだった。二日酔いの経験もなかったので過信していたのかも知れない。
この時までは。
ビールと違って日本酒は思いの外私の判断能力を奪ってしまった。記憶を失うほど酔ってしまうとはなんたる失態。
私は翌日、斗真の腕の中で目を覚ましたのだった。
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