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07-リナリアの回想③
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知らない天上。
大きなベッド。
腰に絡まる太い腕。
覚醒した私は状況が把握できなかった。
布団をそっと捲ると一糸纏わぬ姿であることが確認できた。何か下腹部が痛い? それに身体が重怠い……。
きっと、二日酔いのせいばかりではないだろう。
うそでしょう?
なんでこんなことに……
昨日、食事をしながらお酒を飲んで……
何だかフワフワして楽しくなっちゃって……
それで……どうしたんだっけ……?
「莉奈、そのお酒美味しそうだね。俺も一緒に飲みたいから俺の部屋で飲み直さないか? 帰りはちゃんとタクシー呼んであげるから」
昨夜耳に届いた斗真の声が頭の中で反芻した。
まっ、まさか、そんなありふれた下心満載の言葉に私は騙されたと言うのだろうか?
それで、なんて答えたんだっけ? 思い出すのは怖いけど、思い出さなければどうにもならないので自分の心に問いただした。
そう、たしか……
「やだぁ、井上先生。そんな手には乗りませんよぉ。でも飲み直すのは賛成です。このお酒美味しいもの……」
「そうだよね。でも、俺は車だからさ、やっぱり俺の部屋に行こう」
「ふふふっ、仕方ないですねぇ。今回だけですよぉ」
自分が言った言葉を思い出して血の気が引くのが分かった。
それから……えーと……たわいもない話をしていたような……気がする。それで……
「倉橋さんは今付き合っている人とかいないの?」
「えーいませんよ。私は仕事に生きるのです。それに私と付き合いたいなんて人いません。私は驚くほどもてないんですから」
「そんなことないよ倉橋さんは可愛いよ。俺と付き合わない? いや、俺にしときなよ」
そう、確かそんなことを言われたんだった。ああ、そうか私口説かれたんだ。でもきっとそれは遊び目的で……口説き文句に免疫のない私はまんまと引っかかった訳だ。
徐々にその後の記憶が蘇ってきた。ゆっくり近づいた斗真の顔、初めて触れる柔らかな唇、それにあんなことやこんなこと……。
恥ずかしすぎて顔に熱が集まるのを感じた。
うわぁ! まずい! まずいわよ! こんなこと。私の初めてがぁぁぁぁ……。
心の中で身悶える私。
アルコールが入ると思考能力が低下することを身をもって実感した。
いやいやいや、だめでしょ。そんな男の上等文句に引っかかったなんて。
いやぁぁ! もう、私のばかぁ!
なんで? なんで私ってばこんな簡単な手に引っかかってるの?
自分自身を叱責するが、過ぎてしまったことは覆らない。
まんまと敵の罠に嵌ったのだ。……敵ではないけど。
兎に角、ここは冷静になって考えてみる。
私、きっと遊ばれたんだ。こんなモテモテイケメンドクターが私を相手にするわけがない。
自分に靡かない女は珍しいもんだから、ゲームの様に私を落としたんだ。
私は自分の疎かさ加減に辟易した。どう考えてもこれは自分の落ち度だ。
無理矢理連れ込まれたわけではないのだから、成人女性としては自己責任としか言えない。
私はその太い腕の中で溜息を吐いた。
でも斗真は私の予想に反した言葉を発する。
「やあ、目が覚めたんだね莉奈。今日から君は俺の恋人と言うことでよろしく」
「えっ?」
昨夜のことを思い出した為か、斗真に見つめられボンッと音が出そうな程顔が赤くなったことを実感した。
「あたりまえだろ? 莉奈の全てはもう俺のものなんだから。それにしても莉奈はやっぱり可愛いなぁ」
斗真はギュッと私を抱きしめて頬ずりしてきた。
「えっ? 遊びじゃないの? そんなにイケメンでモテモテなのにもしかして本気で私のこと好きなの?」
私の脳内はパニック状態だった。だから、つい本音を言ってしまった。
「ハハハッ、当たり前だ。俺は初めて会ったときから莉奈のことが好きだ。愛してる。だからもう君を離さない」
斗真はそう言って私を抱く腕に更に力を入れた。
この時、私は斗真の言葉を半信半疑で受け取った。だってね、ベッドの中で言う男の「愛している」と言う言葉は信用するなって言うじゃない?
だから、まともに信じてはいけないと自分自身に言い聞かせていたのだ。それなのに私は斗真の甘い態度に次第に絆されていった。
あのイケメン顔で惚けたように何度も愛を囁かれて無視できる人がいるのなら誰か教えて欲しい。今まで会っていたというのに何時も別れ際には離れがたくなった。
病院で彼を見かける度に胸がきゅんとなった。仕事で仕方が無いとは言え、彼が他の看護師と話しているのを見かけただけで胸がもやもやした。
自分が自分じゃないと思えるほど彼に溺れていくのが分かった。
そして怖くなった。
彼を失うことが……。
私の不安は現実となり、その後彼の裏切りを知る事になるのだった。
大きなベッド。
腰に絡まる太い腕。
覚醒した私は状況が把握できなかった。
布団をそっと捲ると一糸纏わぬ姿であることが確認できた。何か下腹部が痛い? それに身体が重怠い……。
きっと、二日酔いのせいばかりではないだろう。
うそでしょう?
なんでこんなことに……
昨日、食事をしながらお酒を飲んで……
何だかフワフワして楽しくなっちゃって……
それで……どうしたんだっけ……?
「莉奈、そのお酒美味しそうだね。俺も一緒に飲みたいから俺の部屋で飲み直さないか? 帰りはちゃんとタクシー呼んであげるから」
昨夜耳に届いた斗真の声が頭の中で反芻した。
まっ、まさか、そんなありふれた下心満載の言葉に私は騙されたと言うのだろうか?
それで、なんて答えたんだっけ? 思い出すのは怖いけど、思い出さなければどうにもならないので自分の心に問いただした。
そう、たしか……
「やだぁ、井上先生。そんな手には乗りませんよぉ。でも飲み直すのは賛成です。このお酒美味しいもの……」
「そうだよね。でも、俺は車だからさ、やっぱり俺の部屋に行こう」
「ふふふっ、仕方ないですねぇ。今回だけですよぉ」
自分が言った言葉を思い出して血の気が引くのが分かった。
それから……えーと……たわいもない話をしていたような……気がする。それで……
「倉橋さんは今付き合っている人とかいないの?」
「えーいませんよ。私は仕事に生きるのです。それに私と付き合いたいなんて人いません。私は驚くほどもてないんですから」
「そんなことないよ倉橋さんは可愛いよ。俺と付き合わない? いや、俺にしときなよ」
そう、確かそんなことを言われたんだった。ああ、そうか私口説かれたんだ。でもきっとそれは遊び目的で……口説き文句に免疫のない私はまんまと引っかかった訳だ。
徐々にその後の記憶が蘇ってきた。ゆっくり近づいた斗真の顔、初めて触れる柔らかな唇、それにあんなことやこんなこと……。
恥ずかしすぎて顔に熱が集まるのを感じた。
うわぁ! まずい! まずいわよ! こんなこと。私の初めてがぁぁぁぁ……。
心の中で身悶える私。
アルコールが入ると思考能力が低下することを身をもって実感した。
いやいやいや、だめでしょ。そんな男の上等文句に引っかかったなんて。
いやぁぁ! もう、私のばかぁ!
なんで? なんで私ってばこんな簡単な手に引っかかってるの?
自分自身を叱責するが、過ぎてしまったことは覆らない。
まんまと敵の罠に嵌ったのだ。……敵ではないけど。
兎に角、ここは冷静になって考えてみる。
私、きっと遊ばれたんだ。こんなモテモテイケメンドクターが私を相手にするわけがない。
自分に靡かない女は珍しいもんだから、ゲームの様に私を落としたんだ。
私は自分の疎かさ加減に辟易した。どう考えてもこれは自分の落ち度だ。
無理矢理連れ込まれたわけではないのだから、成人女性としては自己責任としか言えない。
私はその太い腕の中で溜息を吐いた。
でも斗真は私の予想に反した言葉を発する。
「やあ、目が覚めたんだね莉奈。今日から君は俺の恋人と言うことでよろしく」
「えっ?」
昨夜のことを思い出した為か、斗真に見つめられボンッと音が出そうな程顔が赤くなったことを実感した。
「あたりまえだろ? 莉奈の全てはもう俺のものなんだから。それにしても莉奈はやっぱり可愛いなぁ」
斗真はギュッと私を抱きしめて頬ずりしてきた。
「えっ? 遊びじゃないの? そんなにイケメンでモテモテなのにもしかして本気で私のこと好きなの?」
私の脳内はパニック状態だった。だから、つい本音を言ってしまった。
「ハハハッ、当たり前だ。俺は初めて会ったときから莉奈のことが好きだ。愛してる。だからもう君を離さない」
斗真はそう言って私を抱く腕に更に力を入れた。
この時、私は斗真の言葉を半信半疑で受け取った。だってね、ベッドの中で言う男の「愛している」と言う言葉は信用するなって言うじゃない?
だから、まともに信じてはいけないと自分自身に言い聞かせていたのだ。それなのに私は斗真の甘い態度に次第に絆されていった。
あのイケメン顔で惚けたように何度も愛を囁かれて無視できる人がいるのなら誰か教えて欲しい。今まで会っていたというのに何時も別れ際には離れがたくなった。
病院で彼を見かける度に胸がきゅんとなった。仕事で仕方が無いとは言え、彼が他の看護師と話しているのを見かけただけで胸がもやもやした。
自分が自分じゃないと思えるほど彼に溺れていくのが分かった。
そして怖くなった。
彼を失うことが……。
私の不安は現実となり、その後彼の裏切りを知る事になるのだった。
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