静寂の3minutes

nandemoarisa

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6鏡

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 母が亡くなった時もそうだった。メッセージで何気ない会話をしていた。
ほとんど毎日会いに行っていた。夜だってメッセージを送っていた。
 けれど、あの日曜日、その前日はバイトが夜遅くまで入っていて寝坊してしまった。
「昼から病院に行くね」と連絡して「はーい!何か美味しいもの食べたい。」とメッセージが来たので
「何系?甘い系?しょっぱい系?」と連絡したところ、何も返ってこなかったので、お昼寝でもしたのかなと思っていた。
すると、それから少し経って父から電話がかかってきて、突然容体が悪くなり、亡くなったと言われた。
 震えた。ついさっきまで、普通にメッセージで話していたのに、なんで?と、その回答のないメッセージを何度も見た。
ずっと「いつ終わりが来てもおかしくない。」と父には言われていたし、覚悟はずっとできてたつもりだった。
だけど、あまりにも突然終わりが来たので、私はすぐには母の死を受け止められなかった。
今でも、死に目に会えなかったことを悔いているし、最後に美味しいもの食べさせてあげたかったってずっと思ってる。
 後悔はもうしたくない。

 そんな母のことを思い出すと、不安は私に纏わりついて離れず、体が重くて、心臓が重くて、どうしても鏡台から離れることが出来なかった。
紺は、今どうしているんだろう。突然、倒れてはいないだろうか。まだ出会って一週間しか経っていないというのに、彼のことをまだ少ししか知らないというのに、彼のことを結構好きだった。だから、余計、心配で仕方ない。
 返事が来ないまま、お手洗い以外の時間を鏡台の前の椅子で過ごした。21時になっていた。

 すると、突然、あの文字が左から浮き上がってきた。

[3minutes]

私は、迷いなく手を文字に伸ばして、指先で触れて、「3minutes」と言った。
すると、半裸でタオルを肩にかけた紺が映った。鏡の中では、何となく「きゃー!」と言っていそうな様子で、上半身を両手で隠している。私は、ほっとしたけれど、そんな様子の彼に腹が立って、怒りで鏡が見れなかった。
俯いている私を変に思ったのか、スマホが鳴った。

「もしもし」

通話ボタンを押して、小さな声でそう言う。

「どしたの。なんか、ごめん。」
「何で謝ってんの、意味分かってないくせに。」
「返事しなかったから?」

私は何も答えなかった。

「ごめん。昨日充電し忘れて、出かけ先で充電無くなって今帰ってきたとこなんだよ。」

変でしょ。一週間前に出会ったとこなのに。こんなメンヘラ彼女みたいな束縛みたいなことになってるとか。

「こっちこそ、ごめん。気にしないで。ちょっと心配しただけ。」

「気にするよ。」

私が言い終わる前に、紺はそう言った。

「泣いてんじゃん。青。」

「泣いてないし。」

「見えてるっつの。」

紺は鏡に手をついた。申し訳なさそうな顔で私を見ている。

「只事じゃないってわかるよ。一週間しか話したことなくても。」
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