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手がふれただけの話よ
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お昼休みの前の授業は、皆、様々な過ごし方をしている。そわそわしている人や、ちゃんと聞いている人、怠くて仕方ない人、完全に寝てしまっている人。
私はというと、何をするでもなく「この魔法薬をこの先、私が作ることってあるのかしら。」とか思いながら、真剣に聞いているふりをしている。
たまたま今日は他クラスと合同の授業で、先生がいつもと気分を変えましょうと魔法で席順をシャッフルさせた。
いつもは隣に幼馴染兼、親友のエヴァが座るのだけれど、今日はノア・コールドウェルが座っている。
親同士が不仲なため、彼は何かと私を目の敵にしていた。そのため、今も互いに緊張感があり、出来れば隣に座りたくない人物No.1だった。
この授業中ずっと彼が今どこを見ているかとか、そんなことが気にかかり、ぼーっとしているバカみたいな顔だけは見られたくない…と顔の筋肉を硬直させた。
私はもう20分も前から、時計が終わりの時間を指すのを待っていた。授業は何となく聞いている。そして、彼を出来るだけ見ないようにしている。
コールドウェルは、学年でも5番に入るほど優秀なので、授業中に寝ているなんてことはないと思う。
だからこそ、余計に窮屈さが増すのだ…。私は何も考えずに授業中もダラダラとしていたいのだから。
「それでは、今日はここまでにしましょうか。」
そう言って、先生は漸く授業を終わってくれた。教科書をトントンっと机の上でまとめて、杖をしまう。
その時、何かがおかしいと感じた。何故なら、隣の気配が全く動かないのだ。教科書をしまったり、立ちあがろうとする気配もない。
私は、今まで一度も見なかった隣の席をゆっくりと確認した。
「え。」
コールドウェルは、寝ていた。
左肘を机につけて、手の甲に顎を置いて、考え込むような体制で、その美しい瞼を閉じている。
少し長めの前髪が、彼の美しさを一層際立たせている。
「アメリア、私ちょっと寄るとこあるから先食べといて~。」
エヴァは扉に向かいながらそう言って、行ってしまった。
ほとんどの生徒が教室から出た頃、私は意を決して彼を起こすことにした。
「コールドウェル、授業終わったわよ。」
そう言っても、全く起きそうにない。良くこんな体制で寝ていられるものだ。
「コールドウェル~。」
今度は、肩を叩いたり、揺らしてみる。
「…ん。」
彼は、そう言って眠そうに重い瞼を少し開けた。
私は固まっていた。固まらざるを得なかった。何故なら、彼の左手が自然と彼の肩に触れていた私の手を触って、そっと退けたからだ。
少し、握られているようにも感じ、体が硬直する。
コールドウェルは漸く、意識を取り戻してきたようで、ゆっくりと目を見開いてこちらを見た。
「フローリー…。」
「あの、もうとっくに授業終わったわよ。珍しいわね、寝てるなんて。」
彼は、今の状況について、じっと考えているようだった。
「ところで、その手を話してもらえると助かるわ。」
彼は、スッと優しく手を離した。
「すまない。」
私は、そして扉へと向かった。同い年の男の子に手を握られただけで、こんなにドキドキするとは思わなかった。
顔が熱い。いつも話さない相手だから、余計なのだろうか。やたらと彼が美しいのも問題かもしれない。
私は、扉を出て、彼には聞こえない声で言った。
「手が触れただけの話よ。」
そう言って、自分を落ち着けて、そして後ろ手に扉を閉めた。
私はというと、何をするでもなく「この魔法薬をこの先、私が作ることってあるのかしら。」とか思いながら、真剣に聞いているふりをしている。
たまたま今日は他クラスと合同の授業で、先生がいつもと気分を変えましょうと魔法で席順をシャッフルさせた。
いつもは隣に幼馴染兼、親友のエヴァが座るのだけれど、今日はノア・コールドウェルが座っている。
親同士が不仲なため、彼は何かと私を目の敵にしていた。そのため、今も互いに緊張感があり、出来れば隣に座りたくない人物No.1だった。
この授業中ずっと彼が今どこを見ているかとか、そんなことが気にかかり、ぼーっとしているバカみたいな顔だけは見られたくない…と顔の筋肉を硬直させた。
私はもう20分も前から、時計が終わりの時間を指すのを待っていた。授業は何となく聞いている。そして、彼を出来るだけ見ないようにしている。
コールドウェルは、学年でも5番に入るほど優秀なので、授業中に寝ているなんてことはないと思う。
だからこそ、余計に窮屈さが増すのだ…。私は何も考えずに授業中もダラダラとしていたいのだから。
「それでは、今日はここまでにしましょうか。」
そう言って、先生は漸く授業を終わってくれた。教科書をトントンっと机の上でまとめて、杖をしまう。
その時、何かがおかしいと感じた。何故なら、隣の気配が全く動かないのだ。教科書をしまったり、立ちあがろうとする気配もない。
私は、今まで一度も見なかった隣の席をゆっくりと確認した。
「え。」
コールドウェルは、寝ていた。
左肘を机につけて、手の甲に顎を置いて、考え込むような体制で、その美しい瞼を閉じている。
少し長めの前髪が、彼の美しさを一層際立たせている。
「アメリア、私ちょっと寄るとこあるから先食べといて~。」
エヴァは扉に向かいながらそう言って、行ってしまった。
ほとんどの生徒が教室から出た頃、私は意を決して彼を起こすことにした。
「コールドウェル、授業終わったわよ。」
そう言っても、全く起きそうにない。良くこんな体制で寝ていられるものだ。
「コールドウェル~。」
今度は、肩を叩いたり、揺らしてみる。
「…ん。」
彼は、そう言って眠そうに重い瞼を少し開けた。
私は固まっていた。固まらざるを得なかった。何故なら、彼の左手が自然と彼の肩に触れていた私の手を触って、そっと退けたからだ。
少し、握られているようにも感じ、体が硬直する。
コールドウェルは漸く、意識を取り戻してきたようで、ゆっくりと目を見開いてこちらを見た。
「フローリー…。」
「あの、もうとっくに授業終わったわよ。珍しいわね、寝てるなんて。」
彼は、今の状況について、じっと考えているようだった。
「ところで、その手を話してもらえると助かるわ。」
彼は、スッと優しく手を離した。
「すまない。」
私は、そして扉へと向かった。同い年の男の子に手を握られただけで、こんなにドキドキするとは思わなかった。
顔が熱い。いつも話さない相手だから、余計なのだろうか。やたらと彼が美しいのも問題かもしれない。
私は、扉を出て、彼には聞こえない声で言った。
「手が触れただけの話よ。」
そう言って、自分を落ち着けて、そして後ろ手に扉を閉めた。
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