1 / 1
手がふれただけの話よ
しおりを挟む
お昼休みの前の授業は、皆、様々な過ごし方をしている。そわそわしている人や、ちゃんと聞いている人、怠くて仕方ない人、完全に寝てしまっている人。
私はというと、何をするでもなく「この魔法薬をこの先、私が作ることってあるのかしら。」とか思いながら、真剣に聞いているふりをしている。
たまたま今日は他クラスと合同の授業で、先生がいつもと気分を変えましょうと魔法で席順をシャッフルさせた。
いつもは隣に幼馴染兼、親友のエヴァが座るのだけれど、今日はノア・コールドウェルが座っている。
親同士が不仲なため、彼は何かと私を目の敵にしていた。そのため、今も互いに緊張感があり、出来れば隣に座りたくない人物No.1だった。
この授業中ずっと彼が今どこを見ているかとか、そんなことが気にかかり、ぼーっとしているバカみたいな顔だけは見られたくない…と顔の筋肉を硬直させた。
私はもう20分も前から、時計が終わりの時間を指すのを待っていた。授業は何となく聞いている。そして、彼を出来るだけ見ないようにしている。
コールドウェルは、学年でも5番に入るほど優秀なので、授業中に寝ているなんてことはないと思う。
だからこそ、余計に窮屈さが増すのだ…。私は何も考えずに授業中もダラダラとしていたいのだから。
「それでは、今日はここまでにしましょうか。」
そう言って、先生は漸く授業を終わってくれた。教科書をトントンっと机の上でまとめて、杖をしまう。
その時、何かがおかしいと感じた。何故なら、隣の気配が全く動かないのだ。教科書をしまったり、立ちあがろうとする気配もない。
私は、今まで一度も見なかった隣の席をゆっくりと確認した。
「え。」
コールドウェルは、寝ていた。
左肘を机につけて、手の甲に顎を置いて、考え込むような体制で、その美しい瞼を閉じている。
少し長めの前髪が、彼の美しさを一層際立たせている。
「アメリア、私ちょっと寄るとこあるから先食べといて~。」
エヴァは扉に向かいながらそう言って、行ってしまった。
ほとんどの生徒が教室から出た頃、私は意を決して彼を起こすことにした。
「コールドウェル、授業終わったわよ。」
そう言っても、全く起きそうにない。良くこんな体制で寝ていられるものだ。
「コールドウェル~。」
今度は、肩を叩いたり、揺らしてみる。
「…ん。」
彼は、そう言って眠そうに重い瞼を少し開けた。
私は固まっていた。固まらざるを得なかった。何故なら、彼の左手が自然と彼の肩に触れていた私の手を触って、そっと退けたからだ。
少し、握られているようにも感じ、体が硬直する。
コールドウェルは漸く、意識を取り戻してきたようで、ゆっくりと目を見開いてこちらを見た。
「フローリー…。」
「あの、もうとっくに授業終わったわよ。珍しいわね、寝てるなんて。」
彼は、今の状況について、じっと考えているようだった。
「ところで、その手を話してもらえると助かるわ。」
彼は、スッと優しく手を離した。
「すまない。」
私は、そして扉へと向かった。同い年の男の子に手を握られただけで、こんなにドキドキするとは思わなかった。
顔が熱い。いつも話さない相手だから、余計なのだろうか。やたらと彼が美しいのも問題かもしれない。
私は、扉を出て、彼には聞こえない声で言った。
「手が触れただけの話よ。」
そう言って、自分を落ち着けて、そして後ろ手に扉を閉めた。
私はというと、何をするでもなく「この魔法薬をこの先、私が作ることってあるのかしら。」とか思いながら、真剣に聞いているふりをしている。
たまたま今日は他クラスと合同の授業で、先生がいつもと気分を変えましょうと魔法で席順をシャッフルさせた。
いつもは隣に幼馴染兼、親友のエヴァが座るのだけれど、今日はノア・コールドウェルが座っている。
親同士が不仲なため、彼は何かと私を目の敵にしていた。そのため、今も互いに緊張感があり、出来れば隣に座りたくない人物No.1だった。
この授業中ずっと彼が今どこを見ているかとか、そんなことが気にかかり、ぼーっとしているバカみたいな顔だけは見られたくない…と顔の筋肉を硬直させた。
私はもう20分も前から、時計が終わりの時間を指すのを待っていた。授業は何となく聞いている。そして、彼を出来るだけ見ないようにしている。
コールドウェルは、学年でも5番に入るほど優秀なので、授業中に寝ているなんてことはないと思う。
だからこそ、余計に窮屈さが増すのだ…。私は何も考えずに授業中もダラダラとしていたいのだから。
「それでは、今日はここまでにしましょうか。」
そう言って、先生は漸く授業を終わってくれた。教科書をトントンっと机の上でまとめて、杖をしまう。
その時、何かがおかしいと感じた。何故なら、隣の気配が全く動かないのだ。教科書をしまったり、立ちあがろうとする気配もない。
私は、今まで一度も見なかった隣の席をゆっくりと確認した。
「え。」
コールドウェルは、寝ていた。
左肘を机につけて、手の甲に顎を置いて、考え込むような体制で、その美しい瞼を閉じている。
少し長めの前髪が、彼の美しさを一層際立たせている。
「アメリア、私ちょっと寄るとこあるから先食べといて~。」
エヴァは扉に向かいながらそう言って、行ってしまった。
ほとんどの生徒が教室から出た頃、私は意を決して彼を起こすことにした。
「コールドウェル、授業終わったわよ。」
そう言っても、全く起きそうにない。良くこんな体制で寝ていられるものだ。
「コールドウェル~。」
今度は、肩を叩いたり、揺らしてみる。
「…ん。」
彼は、そう言って眠そうに重い瞼を少し開けた。
私は固まっていた。固まらざるを得なかった。何故なら、彼の左手が自然と彼の肩に触れていた私の手を触って、そっと退けたからだ。
少し、握られているようにも感じ、体が硬直する。
コールドウェルは漸く、意識を取り戻してきたようで、ゆっくりと目を見開いてこちらを見た。
「フローリー…。」
「あの、もうとっくに授業終わったわよ。珍しいわね、寝てるなんて。」
彼は、今の状況について、じっと考えているようだった。
「ところで、その手を話してもらえると助かるわ。」
彼は、スッと優しく手を離した。
「すまない。」
私は、そして扉へと向かった。同い年の男の子に手を握られただけで、こんなにドキドキするとは思わなかった。
顔が熱い。いつも話さない相手だから、余計なのだろうか。やたらと彼が美しいのも問題かもしれない。
私は、扉を出て、彼には聞こえない声で言った。
「手が触れただけの話よ。」
そう言って、自分を落ち着けて、そして後ろ手に扉を閉めた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
上手に騙してくださらなかった伯爵様へ
しきど
恋愛
アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。
文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。
彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。
貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。
メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【完結】断罪された占星術師は、処刑前夜に星を詠む
佐倉穂波
恋愛
星は、嘘をつかない。嘘をついていたのは——わたし自身だった。
王宮の卜部に勤める十七歳の占星術師リュシア・アストレアは、ある日、王太子妃候補の婚儀に「凶」の星を読んだ。星が告げるままに報告したに過ぎなかったのに、翌朝には牢に入れられていた。罪状は「占星術を用いて王家を惑わせ、王太子暗殺を画策した」こと。
言いがかりだ。
しかし、証明する術がない。
処刑は五日後の朝と告げられ、リュシアは窓もない石の牢に閉じ込められた。
そこで彼女は気づいてしまう。占いが外れ続けていた本当の理由に。
道具も星図もない暗闇の中で、生まれて初めて、星の声を正しく聞いた。
瞼の裏に広がる夜空が、告げる。
【王太子が、明後日の夜に殺される】
処刑前夜に視た予言を、誰が信じるというのか。それでも、若き宰相クラウス・ベルシュタインは深夜の牢へ足を運び、断罪された少女の言葉に耳を傾けた。
二人の出会いは、運命をどう変えていくのかーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる