クロスタイムラビリンス -cross time LABYRINTH- 〜刻の迷宮と不思議なダンジョン〜

タナ

文字の大きさ
6 / 8
第Ⅰ章

第6話 

しおりを挟む
「…ナ。ねえ、……きてってば!」
 何者かがラグナを揺さぶっている。眠気混じりにラグナが目を開けると、すぐ近くにユンの顔があった。
「あ、気がついた?もう、ラグナ全然起きないんだから」
「ん…ああユンか。悪いな」
 ラグナは目を擦って周りを確認する。宿らしき建物のベッドでどうやら眠っていたらしい。
「それにしても…ここ、どこなんだろう?」
「え?」
ラグナが呆けて聞き返す。
「ああいや、私達が気づいたとき何だかよくわからない草原にいたのよ。クルアさんが起こしてくれたんだけど、ラグナだけ全然起きなくて…」
「クルアは今どこに?」
「ここ、一応どこかの国の村みたいなの。だから村民に話を聞いて回っているらしいけど…」
 ラグナがベッドから降りる。そして指を少し振ってみた。
 魔力濃度の確認のためである。
 魔力濃度とは、いわばこの世界のゆらぎを示している。
 魔力濃度が高ければ高いほど強力で邪悪な魔物が出現し、低ければ弱い魔物しか出てこない。また魔力濃度は場所によってそれぞれ異なるため、この場所がどのくらい魔王の支配に近づいているのかがわかるのだ。
 幸い、この村の魔力濃度はそれほど高くないようだ。
 とは言っても、ラグナたちがいた時代よりかは遥かに濃度が収束されている。この時代が危険だという証拠だ。
「おお、やっと起きたのか」
 そうこうしているうちにクルアが帰ってきた。
「ごめんな、世話かけてしまったみたいで」
「いやいやいいんだ。それよりも…」
 クルアが神妙な面持ちで話し始める。3人は椅子に座り、クルアはどこからかもらってきた地図を広げ説明し始める。
「まずわかったことは、今俺達がいる時代は約300年前のB.C.1350ってことだ」
「300年前?」
「そう。村の人によると魔王が誕生して5年ぐらいたっているらしい」
「ご、5年!?」
 ユンが驚く。
「5年たったってことは、南半球はすでに…」
「ああ。南半球は完全に封印され、北半球にもじわじわ封印の余波が押し寄せているそうだ。ラグナ、魔力濃度はどのくらいだった?」
「そうだな…元の時代よりかは遥かに高いのは間違いないけど、まだそんなに魔王の手中にあるって感じではなかったな」
「つまり、まだ姫様は生きてるってことか…」
「え?」
 クルアが足を組みながらつぶやく。ラグナは反射的に聞き返した。
「ああいや、姫様は英雄エルリアの血を引く王族だろ?王族は一般人より魔力が高いし、それにほとんどの場合が白魔術適正だから、魔王の魔力が弱まるからさ」
「魔王は黒魔術使いなのか?」
「ああ。魔王は姫様の魔力を黒魔術に変えて取り込むつもりなのだろうけど、なにせ5000人の王族を一斉に攫ったんだからな。魔力が弱まって当然だ」
「なるほど…つまり、魔力濃度が低いということはまだセイラちゃんが魔王に乗っ取られてないってことですね!」
 ユンが納得する。クルアはうなずき、ラグナは胸をなでおろした。
「にしても…ここ、かなり辺境なんじゃないのか?」
 ラグナは言う。
 窓から景色を見渡しても、周囲は青々と茂った雑草だらけの平原しかなく、村の裏には山しかなかった。
「300年前だからな。発展してないのも仕方ないだろう」
 クルアが答える。
 魔力濃度が高く、さらに辺境の地となると、元の時代にはない植物やレアアイテムがあるかもしれない。
(まあ、鍛えるにはちょうどいいかもな) 
 ラグナは思った。


★★★


 「旅人?」
 「ええ。見る限り冒険者のようです。男が2人と女が1人…」
 「職業ジョブは?」
 「男の1人は騎士ナイトで弓使いのようです。ですが、他の2人はまだ15,6といったところでしょうか」
 「つまり、ジョブは持っていないと…」
 玉座に座った男が右手を顎に添えて思案する。
「どうしますか?魔王の送り込んだ手先というのも考えられますが」
 侍従が玉座の男に言うが、男は侍従の意見を否定した。
「いや、それはないだろう。俺は剣士だから魔力のことには詳しくないが、魔力濃度が薄くなったのが少し感じられた。それも、彼らがオセットの村に来る少し前に、だ」
「……王は、一体何を考えておられるのですか?」
「さあ?どうだろうな」
 王と呼ばれるその男は、一瞬だが不敵に微笑んだ。侍従はそれを見逃さなかった。


 王の名は、ユーサーという──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵
ファンタジー
 ーーある日、平穏な世界は終わった。  そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。  そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...