俺のせいで不登校になったクラスの美少女が記憶喪失になって再登校してきた件

タナ

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8話 彼の場合

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 もし、この世に神様がいるとしたら、俺はそいつを思いっきりぶん殴りたくなるような、そんな人生を歩んできました。

 なんというか、人によっては羨ましいとか妬ましいって思うかもしれませんが、俺にとってはこんな人生など今すぐ終わってしまえばいいと思ってしまうような、そんな人生なんです。

 
 先生は既にご存知でしょうが、俺には両親がいません。俺の両親は俺が3歳のときに死にました。俺だけを残してです。
 もうね、最悪ですよ。んですよ?しかも大好きな両親がです。泣いて泣いて泣きじゃくりましたね。なんで死んだのって。なんで僕だけ置いていくのって。悲しかったなあ。

 俺の母親は専業主婦だったんですけど、父親は大手企業のエリートだったんです。それに両親は保険とかも入ってて、つまるところ遺産が莫大にあった。これは後から聞いたことですが、ざっと7億円あったそうです。家とか車とかも買う予定だったらしいから、たくさん貯金してたんでしょう。

 もうお察しでしょうけど、通夜と葬式は地獄絵図でしたよ。親族はみんな遺産に目がくらんで、誰も両親のことなんか悼んでいなかった。みんなろくでなしですよ。ギャーギャーギャーギャー叫んで喚いて、俺のものだ私のものだ、終いには酒によったのか殴り合いなんか始めだして。俺のことなんか誰も引き取る気なんて鼻っから無かったんです。

 遺産の問題は一夜で解決するはずもなく、みんな葬儀場の社員の方に追い出されるように帰っていきました。

 でも1つ問題があった。そう、俺。俺の処遇です。
 俺は帰る家も保護者もないから、誰かが引き取らないといけないわけで。
 でも誰も引き取りたくなくて。

 結局、俺は孤児院に送られることになりました。

 なんて言えばいいんですかね。感情なんてありませんでしたよ。
 俺を引取ろうとしなかった親族も、どうにでもなってしまえと思っていた俺も、全員狂ってたんです。子供ながらに、復讐を考えていたくらいですから。いつか絶対に殺してやろうと思ってましたよ。人の心なんてありゃしません。

 孤児院の先生はみんな優しかった。色んなことを説いてくれたし、生きる術を教えてくれた。初めて愛を知りました。両親死んでますからね。愛なんて覚えてませんよ。

 今でも孤児院に通って暮らしてますけど、みんないい子達ですよ。流石に俺より悲惨な運命を辿った奴はいませんけど、みんな何かを抱えてる。まあ、普通の子供が孤児になるわけないですし。

 で、俺は孤児なんで中学、つまり義務教育が終わったら働かなければならないんですよ。自立して社会の一員にならないといけない。孤児院はその手助けをする施設ですからね。決して孤児を匿う家などではないんです。

 俺は別に働いても良かったんですけど、3年のときの担任が無駄に熱血でして。「お前は天才だからもっと学ぶべきだ」って言って推薦書いてくれたんですよ。この学校も割と有名な進学校ですし、無理だろーとか思ってたらなんか受かっちゃって。それで今俺はここにいるんです。

 なんつうか、凄い新鮮ですよ、高校は。中学と違って明確な夢持ってる奴らがうじゃうじゃいる。ほら、俺なんかは本来孤児院にいない身ですし、でも賃貸契約とか結べないから、アルバイトとかしてお金稼いで、身辺のことはすべて自分でやるっていう条件で住んでるわけで。

 つまり、夢なんかないんですよ。その日暮らして、未来のこと考えて少しずつ少しずつ貯金して。仕事なんか選んでいられませんから、「これになりたい!」って真剣に思ってるやつが物珍しくもあり、愚かだなあって嘲ってもいました。
 
 もしかしたらなんで中学で働かせるくせに家を提供してやらないんだって思われたかもしれないんですけど、大体孤児が働く場合って住み込みなんです。だって保護者いないですし。仕事の上司や同僚が家族みたいなものなんですよ。

 ちょっと話が逸れました。
 俺は高校に入って新しいクラスメートができて、まああんまり友達はいなかったんですけど、それなりに楽しくはやってたんですね。

 でも、俺お金無いから遊びに行ったりとかできないんですよ。だから文化祭の打ち上げとかも全部断ってました。部活も仕事があるから入れないし、段々クラスでも浮いた存在になってきたんです。
 それに俺、頭良かったし。頭がいいっていうか、みたいな感じですけど、その影響もあって妬まれてたんですね。

 で、そんなふうに俺がクラスで孤立してたときに、遂にあいつと会ってしまったんです。
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