俺のせいで不登校になったクラスの美少女が記憶喪失になって再登校してきた件

タナ

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12話 戦線離脱

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 俺が教室に戻ったのは、ちょうどみんなが課題を提出し終わったときで、今から班の役職決めをしようというときだった。

「あ、──君!」

 副担の多廻おおまわり女史が声をかけてくる。相変わらず背が小さい。

「どこ行ってたんですか!授業サボって!」

 いや、第一声がそれかよ。お前中田先生から聞いてないの?

「何か理由があってサボったんですか?」
「中田先生に呼び出されて会議室行ってました」
「は?中田先生?」

 ああ、やっぱこいつ話覚えてねえわ。

「中田先生と、ってどういうことですか?説明してください」

 はあ、と俺はわざとらしくため息をつく。多廻がムッとした。

「あのですね、先生聞いてないんですか?中田先生は伝えたって言ってたんですけど?」

 俺が少しキレながら言う。

「今、平本のご両親がここに来られているんです。で、俺はあいつがなんであんな風になったかを知ってるでしょう?だからお二人が俺に話を聞きたいと言ってきたらしいんです」

 俺は1つも事実を捻じ曲げることなく伝える。すると、多廻がムカつく感じで驚いた。

「平本さんのご両親?」

 え?

「平本さんって、平本さん?そういえば平本さんもサボってるけど……」

 は?サボってるってなんだ?

「あの、先生」
「はい?」

 多廻が明らかに不機嫌な様子で聞き返してくる。どうせ俺がさっき言ったことも覚えてなさそうだ。
 いや、そんなことはどうでもいい。問題はさっきこいつが言ったことだ。

「平本がサボってるってどういうことですか?」
「え?言葉の通りですよ。平本さん、この時間の始めっからいないんですよ。全く、どこにいるんだか……」

 保健室にいるに決まってるだろう。

 というか、平本の事情も知らないのか?2年連続副担任なのに?

「あの、先生。平本って……」
「で?なんで中田先生に呼ばれてたのかまだ聞いてませんでしたね」

 多廻が俺の言葉を遮る。人の話さえも最後まで聞けんのかお前は。

「だーかーら、平本の親御さんと話をしてたんです。さっきも言いましたよ?」
「そうでしたか?まあいいです。私の記憶にないのなら言ってなかったのでしょう。早く席に着きなさい」

 もうマジでこいつなんなの?ねえこいつ殺っちゃっていい?ほんとに殺っちゃっていい?

「あ、そうだ。──君、平本さん見てませんか?」
「平本ですか?見ましたよ。保健室から出てくるのを」

 俺が答える。こいつに教えるのはどうも癪に触るが仕方がない。平本がありもしないこと言われても可哀想だし。

「保健室?なんで保健室なんかに?」
「いや、不登校明けだからだろ」

 こいつのバカさ加減に思わず0.02秒でツッコんでしまった。吉本新喜劇もびっくりの速さだった。

「不登校明け?ああ、そういえばそうでしたね」

 "そういえば"?お前そんなことも覚えてないの?

 流石に俺もムカついてきた。

「でもだからってなんで保健室に行くんですか」
「保健室登校って知らないんですか?保健室は知り合いがいないから楽なんですよ」

 保健室登校も知らないってもう教員採用試験からやり直したほうがいいんじゃないか?なんで試験受かったんだ?金かな?そういえばこいつお嬢様だったんだっけ。1年のときすっげえ自慢されたわ。案外あり得るかもしれない。

 ほんとに、頭が沸いてるんじゃなかろうか。

「へー、よく知ってるんですね」

 てめえが無知なだけだろ、と言いそうになったがぐっと堪えた。

「でもまず先生に連絡することが先でしょう?担任も副担任も変わってないんだから話せるでしょう?」
「確かにそうですけど、平本記憶喪失だから赤の他人にしか見えないんじゃないんですか?」

 俺が言った。すると多廻は、

「記憶喪失ですねえ……」

 と訳のわからないことを言った。そして、俺の目の前でこんなことを言い放った。 

 
「それって、ただの逃げですよね」
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