22 / 30
21話 宿敵
しおりを挟む
川本先生と共に平本が行ってしまったため、あいつから何かを聞くことはできなくなった。今この場には、松原と俺と徳丸だけがいる。
「おいおい…」
俺が口に出す。
「松原、お前めちゃくちゃ悲惨な運命辿って生きてんじゃねえか。知らなかったよ」
「別に知らなくてもいいだろう。どうせいつか噂になるだろうなとは思ってたんだ」
松原は遠くを見つめて呟いた。
俺は頭を整理することにした。
取り敢えず今まで聞いたことを簡潔に説明すると、松原には愛美と言う名前の幼馴染(しかも年上)がいて、その人は1年生のある日学校でレイプされた。犯人は当時の3年生であり、徳丸は新人時代にその人たちを担当した。しかし犯人側は弁護士(中田という)を雇っていて、その結果端した金で強引に解決させられてしまった。
徳丸には昔からロリコン趣味があり、愛美さんの事件を担当して以来そのトラウマが変な方向に走るようになってしまい、自分が女生徒を襲う立場になってしまった(今回が最初ではあるが)。が、その時駆けつけた俺と松原でそれを止め、無事誰も苦しまずに済ませることができた。
話は戻る。いつ頃判明したのかはわからないが、愛美さんは父親不明の子を妊娠していた(恐らく親はあの3年生の誰かだろう)。そして愛美さんの両親と松原の両親はそれを松原に隠していた。なぜなら、それを松原が知ってしまうとひどく悲しんでしまうためであった。そのため松原が愛美さんの妊娠及び出産を知ったのは生まれてきた子供がある程度成長した後になってしまった(松原曰く「離乳食が食べられるぐらい」)。松原自身、自分だけ愛美さんの苦しみを知らなかったことにかなり絶望しており、また愛美さんも松原を拒むようになったため、やり場のない気持ちが今も心にくすぶっている──
というのが今まで俺が聞いた話だ。
つまりこの事件の発端は愛美さんをこの場所に連れ込んで犯した3年生であり、彼らを担当した中田という弁護士であり、そしてこの事件を隠蔽した学校関係者全てということになる。上級生が下級生を襲ったなどという事件が普通世に出回らないはずがないから、何らかの取引で揉み消したとしか考えられない。
「おいおい…」
俺は思わず同じセリフを反芻してしまっていた。
敵はもっと大きかったのだ。
やがて掃除を告げるチャイムが鳴る。
だけど、とてもこの学校を掃除する気にはなれなかった。
「おいおい…」
俺が口に出す。
「松原、お前めちゃくちゃ悲惨な運命辿って生きてんじゃねえか。知らなかったよ」
「別に知らなくてもいいだろう。どうせいつか噂になるだろうなとは思ってたんだ」
松原は遠くを見つめて呟いた。
俺は頭を整理することにした。
取り敢えず今まで聞いたことを簡潔に説明すると、松原には愛美と言う名前の幼馴染(しかも年上)がいて、その人は1年生のある日学校でレイプされた。犯人は当時の3年生であり、徳丸は新人時代にその人たちを担当した。しかし犯人側は弁護士(中田という)を雇っていて、その結果端した金で強引に解決させられてしまった。
徳丸には昔からロリコン趣味があり、愛美さんの事件を担当して以来そのトラウマが変な方向に走るようになってしまい、自分が女生徒を襲う立場になってしまった(今回が最初ではあるが)。が、その時駆けつけた俺と松原でそれを止め、無事誰も苦しまずに済ませることができた。
話は戻る。いつ頃判明したのかはわからないが、愛美さんは父親不明の子を妊娠していた(恐らく親はあの3年生の誰かだろう)。そして愛美さんの両親と松原の両親はそれを松原に隠していた。なぜなら、それを松原が知ってしまうとひどく悲しんでしまうためであった。そのため松原が愛美さんの妊娠及び出産を知ったのは生まれてきた子供がある程度成長した後になってしまった(松原曰く「離乳食が食べられるぐらい」)。松原自身、自分だけ愛美さんの苦しみを知らなかったことにかなり絶望しており、また愛美さんも松原を拒むようになったため、やり場のない気持ちが今も心にくすぶっている──
というのが今まで俺が聞いた話だ。
つまりこの事件の発端は愛美さんをこの場所に連れ込んで犯した3年生であり、彼らを担当した中田という弁護士であり、そしてこの事件を隠蔽した学校関係者全てということになる。上級生が下級生を襲ったなどという事件が普通世に出回らないはずがないから、何らかの取引で揉み消したとしか考えられない。
「おいおい…」
俺は思わず同じセリフを反芻してしまっていた。
敵はもっと大きかったのだ。
やがて掃除を告げるチャイムが鳴る。
だけど、とてもこの学校を掃除する気にはなれなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる