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陽の試練 蒴也の忍耐
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朝一の修行を終えた蒴也は、自身の寝室で陽の着替えを手伝っていた。
白地に黒の小さなドット柄のシャツが陽の可愛らしさを引き立てる。
昨日蒴也の手元を見ていたのだろう陽が、自分でボタンを掛けようとしている。
昨日は見られなかった行動だ。さっきみたいに甘えられるのもいいが、少しでも自我が芽生えてくれたらいい。
蒴也はそんな思いで見守りつつ自身も着替えを済ませた。根気よくボタンと格闘する陽は、一番下のボタンを1つ自力で掛けられたようだ。段違いだが。
『陽、エラかったな。自分でできて。ちょっとだけ手伝うぞ』
自分のそれよりも長く節の高い蒴也の指先を不思議そうに見つめる陽は、全てのボタンが閉められると、今度はそれを外そうとする。
『えっ、あっ、陽どうした?』
当然陽から答えはない。
色や柄が気に入らないのか?
いや、この服を出した時、陽は自ら手を伸ばして着替えを始めた。それにこれまで服の色や柄を気にする生活をしていたことも考え難い。
着心地が悪いのか?菜々子が買ってきた服は、そう廉価な物ではない。生地はコットンで肌触りも悪いものではないし縫製も丁寧で縫代やタグが肌にあたってしまうと言うことでもなさそうだ。
何故?どうして?
表の仕事でも裏の仕事でも相手の腹の中を探ることは得意だった蒴也が陽の行動の意図が全く読めないのだ。
声も掛けられず黙ったままの蒴也の前で、陽は随分と時間を掛け1つだけボタンを外し、そしてまたボタンをとめた。
自分でやりたかったのか。恐らくそれだ。
『陽、自分でできるのに』
ごめんな。俺が余計なことをした。
世の中の親は、こんな風に子供の成長を体感しているのかもしれない。
昨日はボタンを掛けることすらしようとしなかった陽が、今日は自分でボタンを掛けたのだ。
『陽はこれからもっと色んなことができるようになるよ』
取るに足らないようなことであっても、1つ成長した陽の額にキスを1つ。
まるで陽へのご褒美のようには見えるが、陽は当然無反応で。それに寂しさを覚えるのが蒴也である。
そんな感動と感傷に浸る暇もなく、インターホンも鳴らずに玄関のドアが開く音だけがする。
玄関前まで来れる人間は何人かいるが、玄関の鍵を開けられるのは蒴也と吾妻だけなのだ。
『おはようございます』
複数人の声がする。料理番と雑用を任せる組員を帯同すると言っていた。
『陽、リビングに行こうか』
陽を見守り、助けてくれる奴らが来たのだ。
でもな、陽
1番にお前を護りたいと思っているのは俺なんだ。忘れてくれるなよ。
そんな胸の内は言葉にすることもなく、陽と手を繋ぎ寝室を出たのだ。
白地に黒の小さなドット柄のシャツが陽の可愛らしさを引き立てる。
昨日蒴也の手元を見ていたのだろう陽が、自分でボタンを掛けようとしている。
昨日は見られなかった行動だ。さっきみたいに甘えられるのもいいが、少しでも自我が芽生えてくれたらいい。
蒴也はそんな思いで見守りつつ自身も着替えを済ませた。根気よくボタンと格闘する陽は、一番下のボタンを1つ自力で掛けられたようだ。段違いだが。
『陽、エラかったな。自分でできて。ちょっとだけ手伝うぞ』
自分のそれよりも長く節の高い蒴也の指先を不思議そうに見つめる陽は、全てのボタンが閉められると、今度はそれを外そうとする。
『えっ、あっ、陽どうした?』
当然陽から答えはない。
色や柄が気に入らないのか?
いや、この服を出した時、陽は自ら手を伸ばして着替えを始めた。それにこれまで服の色や柄を気にする生活をしていたことも考え難い。
着心地が悪いのか?菜々子が買ってきた服は、そう廉価な物ではない。生地はコットンで肌触りも悪いものではないし縫製も丁寧で縫代やタグが肌にあたってしまうと言うことでもなさそうだ。
何故?どうして?
表の仕事でも裏の仕事でも相手の腹の中を探ることは得意だった蒴也が陽の行動の意図が全く読めないのだ。
声も掛けられず黙ったままの蒴也の前で、陽は随分と時間を掛け1つだけボタンを外し、そしてまたボタンをとめた。
自分でやりたかったのか。恐らくそれだ。
『陽、自分でできるのに』
ごめんな。俺が余計なことをした。
世の中の親は、こんな風に子供の成長を体感しているのかもしれない。
昨日はボタンを掛けることすらしようとしなかった陽が、今日は自分でボタンを掛けたのだ。
『陽はこれからもっと色んなことができるようになるよ』
取るに足らないようなことであっても、1つ成長した陽の額にキスを1つ。
まるで陽へのご褒美のようには見えるが、陽は当然無反応で。それに寂しさを覚えるのが蒴也である。
そんな感動と感傷に浸る暇もなく、インターホンも鳴らずに玄関のドアが開く音だけがする。
玄関前まで来れる人間は何人かいるが、玄関の鍵を開けられるのは蒴也と吾妻だけなのだ。
『おはようございます』
複数人の声がする。料理番と雑用を任せる組員を帯同すると言っていた。
『陽、リビングに行こうか』
陽を見守り、助けてくれる奴らが来たのだ。
でもな、陽
1番にお前を護りたいと思っているのは俺なんだ。忘れてくれるなよ。
そんな胸の内は言葉にすることもなく、陽と手を繋ぎ寝室を出たのだ。
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