67 / 197
陽の試練 蒴也の忍耐
67
しおりを挟む
咲恵との通話を終わらせれば、吾妻がタブレット端末をタップしながら朔也の前に立つ。
『明日はかなりタイトなスケジュールになるかと』
明後日は朝から陽の受診と夕刻から売り専バーの面接があるのだ。
自動的に明日のうちにケリを付けたい案件が増える。
明日の予定を吾妻が読み上げていく。
朝からフロント企業を何軒か回らなければならない。各企業で大口の契約や新規のプロジェクト始動等が重なり1つ1つの案件にそれなりの時間がかかるだろう。
そしてイレギュラーな何かが起こらないとも限らない。炎星会絡みのことで言えば、いつ何が仕掛けられるかわからない状態が続いている。
『結城が3日、いや2日大人しくしていてくれればいいが』
吾妻も軽く頷き同意を示せば、廊下が俄に騒がしくなる。
3回のノックと共に聞こえたのはハッカー達のリーダーの声だ。
ドアも開けずに報告を始めるのは気が急くせいだろう。
『内藤が病院に移るようです。生きているようです』
少し前に炎星会事務所に訪れた医師に伴われ担架に乗せられた内藤の姿が監視カメラに写し出されたのだ。
そして
『結城も同じ自動車に乗り込みました』
結城も内藤に付き添うのだろう。しかし今さら入院して内藤が人間に戻れるのか。薬と篠崎の暴挙で心身共に、かなりの痛手を追っているはずだ。
『結城の行動をなるべく詳細に掴んでくれ』
結局吾妻もドアを開けることなく短く指示を出せば、廊下には再びの静寂が訪れる。
ハッカー達の情報収集により、結城の動きも内藤の状態も見えている。
今のところ、明星会にも朔也にも危険はないだろう。
吾妻は内線で麻生に車を回すように指示し特に護衛を増やすこともなく朔也を自宅へと帰らせた。
結城の動き方次第で明日にも護衛を増やせるよう段取りはするが、陽が医療センターを受診する明後日までは静かにしていて欲しいものだ。
当然、朔也も陽も危険に晒すつもりなどないが陽に恐い思いはさせたくない。それは朔也だけでなく 吾妻の思いでもある。
そして万が一、ほんの少しでも陽が恐い思いをしようものなら朔也が炎星会に対して、どんな暴挙にでるのか。
吾妻は 頭を振り想像を追い払った。
ほんの数日前に出逢った少年に朔也はそれほどまでに心を奪われている。
今後、少年の存在が朔也の弱味となることは確かだ。少々頭の痛い気もするが、護るべき存在を得た朔也は同時に心の拠り所を得たのだ。
例えヤクザであっても、そのようや場所を得ることは悪いことではないだろう。
朔也と、そして陽を護るため吾妻は脳内で独り作戦会議を始めつつ、帰路を急ぐ朔也の後ろ姿を見送った。
『明日はかなりタイトなスケジュールになるかと』
明後日は朝から陽の受診と夕刻から売り専バーの面接があるのだ。
自動的に明日のうちにケリを付けたい案件が増える。
明日の予定を吾妻が読み上げていく。
朝からフロント企業を何軒か回らなければならない。各企業で大口の契約や新規のプロジェクト始動等が重なり1つ1つの案件にそれなりの時間がかかるだろう。
そしてイレギュラーな何かが起こらないとも限らない。炎星会絡みのことで言えば、いつ何が仕掛けられるかわからない状態が続いている。
『結城が3日、いや2日大人しくしていてくれればいいが』
吾妻も軽く頷き同意を示せば、廊下が俄に騒がしくなる。
3回のノックと共に聞こえたのはハッカー達のリーダーの声だ。
ドアも開けずに報告を始めるのは気が急くせいだろう。
『内藤が病院に移るようです。生きているようです』
少し前に炎星会事務所に訪れた医師に伴われ担架に乗せられた内藤の姿が監視カメラに写し出されたのだ。
そして
『結城も同じ自動車に乗り込みました』
結城も内藤に付き添うのだろう。しかし今さら入院して内藤が人間に戻れるのか。薬と篠崎の暴挙で心身共に、かなりの痛手を追っているはずだ。
『結城の行動をなるべく詳細に掴んでくれ』
結局吾妻もドアを開けることなく短く指示を出せば、廊下には再びの静寂が訪れる。
ハッカー達の情報収集により、結城の動きも内藤の状態も見えている。
今のところ、明星会にも朔也にも危険はないだろう。
吾妻は内線で麻生に車を回すように指示し特に護衛を増やすこともなく朔也を自宅へと帰らせた。
結城の動き方次第で明日にも護衛を増やせるよう段取りはするが、陽が医療センターを受診する明後日までは静かにしていて欲しいものだ。
当然、朔也も陽も危険に晒すつもりなどないが陽に恐い思いはさせたくない。それは朔也だけでなく 吾妻の思いでもある。
そして万が一、ほんの少しでも陽が恐い思いをしようものなら朔也が炎星会に対して、どんな暴挙にでるのか。
吾妻は 頭を振り想像を追い払った。
ほんの数日前に出逢った少年に朔也はそれほどまでに心を奪われている。
今後、少年の存在が朔也の弱味となることは確かだ。少々頭の痛い気もするが、護るべき存在を得た朔也は同時に心の拠り所を得たのだ。
例えヤクザであっても、そのようや場所を得ることは悪いことではないだろう。
朔也と、そして陽を護るため吾妻は脳内で独り作戦会議を始めつつ、帰路を急ぐ朔也の後ろ姿を見送った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
248
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる