太陽と月

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収束

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早朝から本部を訪れ、若衆に案内された朔也と吾妻は桐島と半年ぶりの再会を果たす。

『オジキご無沙汰しております』

2人揃って頭を下げれば作務衣姿の桐島に茶室へと通された。

見知った3人の茶会はラフなものだ。3人で風炉釜を囲み金平糖を口に含んだ。

桐島により点てられた薄茶をすっと飲みきり特に茶碗を見ることもなく、桐島へと返す。

『まったく。お前達には侘びも寂びもないな』

苦笑気味の桐島に、取って付けたように

『結構なお点前で』

と頭を下げる。
しかし侘びも寂びもないのは桐島とて同様だ。

『何か土産があるから顔を出したんだろ?』

悪い笑顔は見慣れている。桐島が切り出したのだ。朔也も早々にそこに乗る。

『オジキ、嫁は見つかりましたか?』

吾妻が愛用のタブレット端末を何度かタップして動画を再生する。
前田達也の面接の際、監視カメラが録画していた映像だ。音声も拾っていることから容姿だけでなく店長との会話も記録されている。

『頭の弱そうなボクちゃんだな』

第一声がそれだ。あまり好印象は与えられなかったのだろうか。

『年の割に若く見えるな。それに別嬪さんだ』

可能な限り早く連れて来いと言う桐島に、朔也から1つ提案をする。

『オジキ、また逃げられないように何か手を打っては?』

離れと言っても十分な広さがあるここに、座敷牢を作ってはどうかと。

朔也からすれば、前田達也がどう扱われようとも興味はない。
ただ、みすみす逃げられるようなことは許せないのだ。できる限り長い間心身への苦痛をと望んでしまう。どのような苦痛を与えられるのかに興味はないし、それによって前田達也が命を落としたとしても構わない。

陽を捨てたことへの復讐。
陽の父親であることへの嫉妬。

それを消化するために鬼畜を鬼畜にあてがう。朔也の自己満足に過ぎない行動ではあるが、特に罪悪感もない。

『早速明日から改築工事に取りかかります』

ここの持ち主である八神には土門を通じて既に了承を得ている。

桐島に甘い八神からは

『桐島の思うままに』

と言われているのだ。

『ただの座敷牢では面白くないな』

桐島から、そんな要望がでるのは想定内であった。

様々なプランを提案し、桐島が望んだ座敷牢は、コンクリート打ちっぱなしの床に排水の設備。パーテーションのない剥き出しのシャワーとトイレ。
そして、人を吊ることができる強固な梁とそこに下ろす鎖りだった。

傘下の建設会社に5日で仕上げさせることを約束し、その日のうちに前田達也を受け渡すこととした。

『あぁ、天海。いくらだ?』

桐島は「前田達也」と言う道具を買うつもりなのだろう。
しかし朔也は人身売買に興味はない。

『改装費用は総裁からいただきますので』

それだけ言い残し、離れを後にした。
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