149 / 197
歪んだ愛情
147
しおりを挟む
陽をどう助けるのか。考えても空回りしている自分に気付く。
記憶のある範囲では、このような心理状態になるのは生まれて初めてだ。
そこでサポートしてくれるのは、やはり吾妻だった。朔也の精神状態など顔を見なくてもお見通しと言ったところだろう。
鳴り始めたスマートフォンは、吾妻からの着信を告げていた。
『朔也、お前やっぱりもってるな』
禅問答のようだとは思わない。吾妻がもってる、と言えば、もってるのだと思う。吾妻に嘘などつかれたことはないのだから。
そして、吾妻から続けられる言葉に、漸く合点がいく。
南野が潜伏しているであろう場所は、つい最近まで炎星会のシマだった。
炎星会が解散となり、その後暫くは本部預かりとなっていたが、最近になって辰星会のシマとなった。
その地域の3割ほどが、今後再開発区域として決定しているため、開発事業を得意とする辰星会に任せられたのだ。
当然辰星会のフロント企業の1つである不動産会社が所有者、使用者の情報はもちろん空室物件も全て把握している。
その情報とハッカーが調べあげた南野のスマートフォンの位置情報で、ローラー作戦よりは遥かに合理的な捜索ができるはずだと言う。
そして今まさに、吾妻と同乗している工藤が空室物件や怪しげな使用者を炙り出しているのだ。
直径500メートルの中で空室物件は30。そのうち改装中の物件は16。それらの全てに今日は工事のため業者が出入りしている。業者は全て辰星会が絡んでいるため、捜索の優先順位は下げてもいいのではないかと言う。
まずは空室物件のうち14室から。その中でも建物への出入りが人目につき難い雑居ビルにまとめて4室の空室があるため、そこから手を付けてみてはどうかと言うのが工藤からのアドバイスだ。
やはり手持ちの情報量がものを言う。
因みに、その雑居ビルの空室4室は、改装工事はおろか入居者も決まってはいないため、最悪の場合、鍵を壊して入っても構わないとまで言ってくれる。工藤自身も鍵を取りに戻る手間がもどかしいため、朔也より早く到着したら鍵を壊して入室するつもりだとも。
しかし、その雑居ビルは昭和の時代に建てられたビルであり、セキュリティ面はザルだと言う。
防犯カメラの設置もないため、現時点での中の様子は全くわからない。陽を連れ去った南野が陽と2人きりでいるとは限らないのだ。
だからこそ
『朔也 無理はするな』
例え朔也の方が早く現場に着こうとも、無茶はするなと吾妻は言う。
『ああ。わかってる』
逸る気持ちを抑えつつ、スピード違反気味の組員の運転に意見することもなく、目的の場所へと向かった。
記憶のある範囲では、このような心理状態になるのは生まれて初めてだ。
そこでサポートしてくれるのは、やはり吾妻だった。朔也の精神状態など顔を見なくてもお見通しと言ったところだろう。
鳴り始めたスマートフォンは、吾妻からの着信を告げていた。
『朔也、お前やっぱりもってるな』
禅問答のようだとは思わない。吾妻がもってる、と言えば、もってるのだと思う。吾妻に嘘などつかれたことはないのだから。
そして、吾妻から続けられる言葉に、漸く合点がいく。
南野が潜伏しているであろう場所は、つい最近まで炎星会のシマだった。
炎星会が解散となり、その後暫くは本部預かりとなっていたが、最近になって辰星会のシマとなった。
その地域の3割ほどが、今後再開発区域として決定しているため、開発事業を得意とする辰星会に任せられたのだ。
当然辰星会のフロント企業の1つである不動産会社が所有者、使用者の情報はもちろん空室物件も全て把握している。
その情報とハッカーが調べあげた南野のスマートフォンの位置情報で、ローラー作戦よりは遥かに合理的な捜索ができるはずだと言う。
そして今まさに、吾妻と同乗している工藤が空室物件や怪しげな使用者を炙り出しているのだ。
直径500メートルの中で空室物件は30。そのうち改装中の物件は16。それらの全てに今日は工事のため業者が出入りしている。業者は全て辰星会が絡んでいるため、捜索の優先順位は下げてもいいのではないかと言う。
まずは空室物件のうち14室から。その中でも建物への出入りが人目につき難い雑居ビルにまとめて4室の空室があるため、そこから手を付けてみてはどうかと言うのが工藤からのアドバイスだ。
やはり手持ちの情報量がものを言う。
因みに、その雑居ビルの空室4室は、改装工事はおろか入居者も決まってはいないため、最悪の場合、鍵を壊して入っても構わないとまで言ってくれる。工藤自身も鍵を取りに戻る手間がもどかしいため、朔也より早く到着したら鍵を壊して入室するつもりだとも。
しかし、その雑居ビルは昭和の時代に建てられたビルであり、セキュリティ面はザルだと言う。
防犯カメラの設置もないため、現時点での中の様子は全くわからない。陽を連れ去った南野が陽と2人きりでいるとは限らないのだ。
だからこそ
『朔也 無理はするな』
例え朔也の方が早く現場に着こうとも、無茶はするなと吾妻は言う。
『ああ。わかってる』
逸る気持ちを抑えつつ、スピード違反気味の組員の運転に意見することもなく、目的の場所へと向かった。
10
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる