太陽と月

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歪んだ愛情

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陽をどう助けるのか。考えても空回りしている自分に気付く。
記憶のある範囲では、このような心理状態になるのは生まれて初めてだ。

そこでサポートしてくれるのは、やはり吾妻だった。朔也の精神状態など顔を見なくてもお見通しと言ったところだろう。
鳴り始めたスマートフォンは、吾妻からの着信を告げていた。

『朔也、お前やっぱりもってるな』

禅問答のようだとは思わない。吾妻がもってる、と言えば、もってるのだと思う。吾妻に嘘などつかれたことはないのだから。

そして、吾妻から続けられる言葉に、漸く合点がいく。

南野が潜伏しているであろう場所は、つい最近まで炎星会のシマだった。
炎星会が解散となり、その後暫くは本部預かりとなっていたが、最近になって辰星会のシマとなった。

その地域の3割ほどが、今後再開発区域として決定しているため、開発事業を得意とする辰星会に任せられたのだ。

当然辰星会のフロント企業の1つである不動産会社が所有者、使用者の情報はもちろん空室物件も全て把握している。

その情報とハッカーが調べあげた南野のスマートフォンの位置情報で、ローラー作戦よりは遥かに合理的な捜索ができるはずだと言う。

そして今まさに、吾妻と同乗している工藤が空室物件や怪しげな使用者を炙り出しているのだ。
直径500メートルの中で空室物件は30。そのうち改装中の物件は16。それらの全てに今日は工事のため業者が出入りしている。業者は全て辰星会が絡んでいるため、捜索の優先順位は下げてもいいのではないかと言う。
まずは空室物件のうち14室から。その中でも建物への出入りが人目につき難い雑居ビルにまとめて4室の空室があるため、そこから手を付けてみてはどうかと言うのが工藤からのアドバイスだ。

やはり手持ちの情報量がものを言う。
因みに、その雑居ビルの空室4室は、改装工事はおろか入居者も決まってはいないため、最悪の場合、鍵を壊して入っても構わないとまで言ってくれる。工藤自身も鍵を取りに戻る手間がもどかしいため、朔也より早く到着したら鍵を壊して入室するつもりだとも。

しかし、その雑居ビルは昭和の時代に建てられたビルであり、セキュリティ面はザルだと言う。
防犯カメラの設置もないため、現時点での中の様子は全くわからない。陽を連れ去った南野が陽と2人きりでいるとは限らないのだ。

だからこそ

『朔也  無理はするな』

例え朔也の方が早く現場に着こうとも、無茶はするなと吾妻は言う。

『ああ。わかってる』

逸る気持ちを抑えつつ、スピード違反気味の組員の運転に意見することもなく、目的の場所へと向かった。
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