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歪んだ愛情
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吾妻や工藤との遣り取りで、その存在を忘れていたが朔也の隣には亜美がいる。
何故か朔也にしなだれかかり離れようとしない。
でもダメだ。陽が匂いに敏感に反応することは経験上知っている。陽を取り戻しに行って、この腕の中に収まってくれなかったら、恐らく朔也はショック死するほどのダメージを受ける。
女性に対して、執着心を持ったこともないが、強い嫌悪感を抱いたこともなかった朔也が、この瞬間は亜美が疎ましいことこの上ない。
だが、とにかく今は陽を探し出すこと、それ以外のことを考えるつもりはない。
陽の無事を祈りつつ、南野がいるであろう場所への到着を待つ。
あと数分で到着と言う時に吾妻からの着信だ。ほんの1足先に到着した吾妻は、朔也を待たずに陽を探し始めると言う。
勢いと成り行きで同行した工藤も運転手の麻生もいるため、危険はないと判断した吾妻が陽を思い急いているのだ。
工藤が提案した雑居ビルは4階建てで、空室4室のうち2室が4階、1室が2階、残り1室が1階であり、吾妻は工藤を伴い4階の2室から捜索すると言う。
後から到着する朔也が1階から捜索すれば合理的でもある。
『維新、俺もあと2~3分で到着だ』
その数分を惜しむほどに吾妻も焦っているのだろう。自動車のドアの開閉音や複数の足音が電話越しに聞こえる。
『朔也、一度切るぞ』
4階の空室にたどり着いたのだろう。幾分声が落とされ通話が切れた。ほぼ同時に朔也の自動車も目的の雑居ビルへと到着する。
転げるようにサイドシートから降りた組員が朔也のためにドアを開ける。
『朔也さん!どちらへ?』
この期に及んで、亜美は本当に何も解っていないのだろうか。
『貴様の相手をしている暇はない』
言い捨てて自動車を降りようとするが、亜美の細腕か朔也のスーツを引っ張っている。それを振り払えば、狂ったようなわめき声を上げ始めた。
『朔也さんは私と結婚するのです』
だから、腕を振り払った行為は間違いなのだと言う。今からでも遅くはないのだから自動車に乗り、この汚いビルからは早く離れるべきなのだと。
確かに、お世辞にも綺麗とは言えない古い雑居ビルだ。だからこそ、陽をここから連れ出さなければならない。
『俺は貴様などと結婚する気はない』
南野と亜美、どちらが主犯でどちらが幇助になるのかなど知ったことではないが、これは立派な誘拐だ。
『俺はヤクザだが、犯罪者と結婚するつもりなどない』
ここまでを言っても、亜美はわからないのだろう。
『誘拐なんて人聞きの悪いこと、おっしゃらないで』
邪魔なものを排除しただけなのだと、まだ言い募る。
『俺にとっての邪魔者は俺が決める』
貴様こそが邪魔なのだと言い捨て、組員と共に雑居ビルへと足を踏み入れた朔也だった。
何故か朔也にしなだれかかり離れようとしない。
でもダメだ。陽が匂いに敏感に反応することは経験上知っている。陽を取り戻しに行って、この腕の中に収まってくれなかったら、恐らく朔也はショック死するほどのダメージを受ける。
女性に対して、執着心を持ったこともないが、強い嫌悪感を抱いたこともなかった朔也が、この瞬間は亜美が疎ましいことこの上ない。
だが、とにかく今は陽を探し出すこと、それ以外のことを考えるつもりはない。
陽の無事を祈りつつ、南野がいるであろう場所への到着を待つ。
あと数分で到着と言う時に吾妻からの着信だ。ほんの1足先に到着した吾妻は、朔也を待たずに陽を探し始めると言う。
勢いと成り行きで同行した工藤も運転手の麻生もいるため、危険はないと判断した吾妻が陽を思い急いているのだ。
工藤が提案した雑居ビルは4階建てで、空室4室のうち2室が4階、1室が2階、残り1室が1階であり、吾妻は工藤を伴い4階の2室から捜索すると言う。
後から到着する朔也が1階から捜索すれば合理的でもある。
『維新、俺もあと2~3分で到着だ』
その数分を惜しむほどに吾妻も焦っているのだろう。自動車のドアの開閉音や複数の足音が電話越しに聞こえる。
『朔也、一度切るぞ』
4階の空室にたどり着いたのだろう。幾分声が落とされ通話が切れた。ほぼ同時に朔也の自動車も目的の雑居ビルへと到着する。
転げるようにサイドシートから降りた組員が朔也のためにドアを開ける。
『朔也さん!どちらへ?』
この期に及んで、亜美は本当に何も解っていないのだろうか。
『貴様の相手をしている暇はない』
言い捨てて自動車を降りようとするが、亜美の細腕か朔也のスーツを引っ張っている。それを振り払えば、狂ったようなわめき声を上げ始めた。
『朔也さんは私と結婚するのです』
だから、腕を振り払った行為は間違いなのだと言う。今からでも遅くはないのだから自動車に乗り、この汚いビルからは早く離れるべきなのだと。
確かに、お世辞にも綺麗とは言えない古い雑居ビルだ。だからこそ、陽をここから連れ出さなければならない。
『俺は貴様などと結婚する気はない』
南野と亜美、どちらが主犯でどちらが幇助になるのかなど知ったことではないが、これは立派な誘拐だ。
『俺はヤクザだが、犯罪者と結婚するつもりなどない』
ここまでを言っても、亜美はわからないのだろう。
『誘拐なんて人聞きの悪いこと、おっしゃらないで』
邪魔なものを排除しただけなのだと、まだ言い募る。
『俺にとっての邪魔者は俺が決める』
貴様こそが邪魔なのだと言い捨て、組員と共に雑居ビルへと足を踏み入れた朔也だった。
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