【完結】初恋相手にぞっこんな腹黒エリート魔術師は、ポンコツになって私を困らせる

季邑 えり

文字の大きさ
16 / 103

1-15

しおりを挟む
「ご無沙汰しています。…ドース部長」

 よかった、声は、震えなかった。普通に挨拶できたかな。

「なんだ、知り合いだったのか?ああ、シキズキはそういえば、サザン帝国に留学していたな」

「はい、同じ学園でしたので。といっても、学年は違ったので。デズモント嬢、すみませんが、今取り込んでいます。またの機会に、懐かしい話を聞かせてください」

 そう言うと、アレクセイ部長に挨拶をして、シキズキはその場を離れた。

……挨拶しかできなかった。

「では、次の場所を案内しよう」
「は、はい」

 いけない、感傷にひたっている暇はない。今日は挨拶周りが主な仕事だけど、これも大切な外交だ。しっかりしなくては。

「‥‥‥大丈夫か?」
 
 少し青ざめていたのかもしれない。アレクセイ部長は、優しく声をかけてくれた。もしかしたら、その声は、私たちの関係を知っていたのかもしれない、と思わせる。あの場では、知らないフリをしてくれたけれど。

「あ、はい。大丈夫です。慣れない靴が、痛くなってしまって。でも、ヒール(癒し)をかけたので、大丈夫です」

「そうか、無理はしないように。では、次に作成部門に行こう」
「わかりました」
 

*****

 その後は、初日ということで早めに部屋へ帰ることができた。広い王宮の中の、長期滞在者用の部屋を与えられた私は、歩いて帰宅することができた。職場が近いのは、ちょっとありがたい。

でも、王宮の中なので、使い魔を使って帝国と通信ができない。結界が張られているからだ。

 サザン帝国のロドリゲス団長からは、定期的に連絡することを命じられている。でも、今日は疲れた。身体が、というより、心が。

 そう、あの黒曜石のような瞳をみた瞬間、4年前の情景を思い出してしまった。最後の日に、叫んだ言葉も。

 でも、今日の彼の瞳は、私との間に、あれほど濃密な関係があったことを、全て否定しているようだった。あれだけ、愛を囁いた彼が。あれだけ、私に優しかった人が。もう、いなかった。

「なんか…悔しいな」
 こんなに緊張したのは、私だけだったのかな。第二開発部門の部長、っていうくらいだから、事前に私が来ることは、知っていたと思う。だから、あんな風に、驚きもせず、私の存在を無視できたのだろう。

 この4年間、あの恋を引きずって、忘れようとして忘れられなくて。苦しんだのは、私だけだったのだろうか。

「ん…やっぱり、許せない。セリアの言う通り、仕返しプラン、してみようかな…」

 あまり本気にしていなかったけど、今日の彼の態度を見て、久しぶりにふつふつとした怒りがこみあげてくる。よし、仕返ししよう!ここまできたら、私の4年間の苦しみを、彼にも味わってもらうしかない!

 やる気いっぱいになったアユフィーラは、早速どうやって彼に近づこうかと、考え始めた。

ちょっと間違った方向に突っ走る彼女を、そっと見つめる使い魔がいることに、彼女は気づくことができなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...