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私は、研究派遣されていた期間の報告を兼ねて、魔術師団長を訪ねた。ロドリゲス団長は報告書を読むと、私に寛ぐように言い、話し始めた。
「いや~、すごいな、お前は。国際コンペで、最優秀賞を取ってくるとは。驚いたよ」
「スレイヤールでの研究環境と、開発チームがとても協力的でした。そのおかげです」
「いやいや、デズモンドの実力だよ。今後はここでも、役立ててくれるといいのだが…」
「団長、環境も大切です。もう少し、活発な議論ができる環境が、開発力に繋がります」
「っは、お前の言う通りだな。俺も気を付けるよ…」
そう言うと、ロドリゲス団長はおもむろに手元にある紙を見た。
「しかし、本当に赤の日に登録するとは…その、家の方は大丈夫なのか?」
私が、赤の日に登録したことは、既に魔術師団に報告が上がっていた。
「はい、父も既に、覚悟しています。跡取り娘ですから、まぁ。いいのではないかと」
そもそも、帝国が私にとんでもない命令を出したから、こんなことになっている。赤の日は、ペナルティーなのだ。
「その、デズモンドにとって、帝国の命令はつらかったか。少し、報告は受けているが…」
きっと、ドース部長のことだろう。あれだけ派手に公開告白して、恋人宣言したからには、帝国に伝わってもおかしくはない。
「いろいろありましたが、大丈夫です。私は、赤の日に出ますので。いい、区切りです」
「はぁ~、お前もイイ女になったのになぁ~」
「団長、それはセクハラですよ。気を付けてくださいね」
その後は二人でははは、と笑いながら面談を終えた。まだしばらくは、休暇が続く。私は、もう一度ここで働けるといいのだけど、と願いつつ、その場を離れた。
*****
私の所に前触れもなく突然訪問してきた人によって、私の束の間の休息が終わることになった。
「アユフィーラ・デズモンド、話がある」
それは、小川で別れたきりになっていた、イザーク先輩だった。
「イザーク先輩、どうされたのですか?私に話とは…」
慌てている様子のイザーク先輩を応接室に案内すると、部屋に入ったとたん、先輩が聞いてきた。
「アユフィーラ、お前はなんてボケた目をしているんだ。あれからシキズキと話をしたのか?」
「いいえ、何も。彼とはもう、終わっていますから、何も話すことはありません」
はっきりと伝える。彼への思いを断ち切るためにも、赤の日に登録したのだ。
「では、アイツの状態とか、何も知らないのだな」
ため息をつきながら、イザーク先輩は私を呆れた目でみた。
「‥‥‥状態とは?何かあったのですか?」
シキズキ先輩とは、魔術紋を消すために旅立って以来、会っていない。もしかして、魔術紋の解術が上手くいかなかったのだろうか。
「そうか、知らないのか。僕から伝えるのもどうかと思うが、急ぐことでもある。アユフィーラ、覚悟して聞け」
真剣な目をしたイザーク先輩は、言葉を選びながら私に伝えた。
「シキズキは、魔術師をやめて、このサザン帝国に来る。アユフィーラ、お前が赤の日に登録したことを聞いて、アイツも赤の日に登録した。もうすぐ、帝都に来る」
「―――!!!―――」
言葉にならない衝撃が、アユフィーラを襲った。今、イザーク先輩は何と言ったのか?彼が、シキズキ先輩が魔術師を止める?そんなことが、可能なのだろうか?そして、赤の日に登録するとは…
「ほ、本当なのですか?」
「いや~、すごいな、お前は。国際コンペで、最優秀賞を取ってくるとは。驚いたよ」
「スレイヤールでの研究環境と、開発チームがとても協力的でした。そのおかげです」
「いやいや、デズモンドの実力だよ。今後はここでも、役立ててくれるといいのだが…」
「団長、環境も大切です。もう少し、活発な議論ができる環境が、開発力に繋がります」
「っは、お前の言う通りだな。俺も気を付けるよ…」
そう言うと、ロドリゲス団長はおもむろに手元にある紙を見た。
「しかし、本当に赤の日に登録するとは…その、家の方は大丈夫なのか?」
私が、赤の日に登録したことは、既に魔術師団に報告が上がっていた。
「はい、父も既に、覚悟しています。跡取り娘ですから、まぁ。いいのではないかと」
そもそも、帝国が私にとんでもない命令を出したから、こんなことになっている。赤の日は、ペナルティーなのだ。
「その、デズモンドにとって、帝国の命令はつらかったか。少し、報告は受けているが…」
きっと、ドース部長のことだろう。あれだけ派手に公開告白して、恋人宣言したからには、帝国に伝わってもおかしくはない。
「いろいろありましたが、大丈夫です。私は、赤の日に出ますので。いい、区切りです」
「はぁ~、お前もイイ女になったのになぁ~」
「団長、それはセクハラですよ。気を付けてくださいね」
その後は二人でははは、と笑いながら面談を終えた。まだしばらくは、休暇が続く。私は、もう一度ここで働けるといいのだけど、と願いつつ、その場を離れた。
*****
私の所に前触れもなく突然訪問してきた人によって、私の束の間の休息が終わることになった。
「アユフィーラ・デズモンド、話がある」
それは、小川で別れたきりになっていた、イザーク先輩だった。
「イザーク先輩、どうされたのですか?私に話とは…」
慌てている様子のイザーク先輩を応接室に案内すると、部屋に入ったとたん、先輩が聞いてきた。
「アユフィーラ、お前はなんてボケた目をしているんだ。あれからシキズキと話をしたのか?」
「いいえ、何も。彼とはもう、終わっていますから、何も話すことはありません」
はっきりと伝える。彼への思いを断ち切るためにも、赤の日に登録したのだ。
「では、アイツの状態とか、何も知らないのだな」
ため息をつきながら、イザーク先輩は私を呆れた目でみた。
「‥‥‥状態とは?何かあったのですか?」
シキズキ先輩とは、魔術紋を消すために旅立って以来、会っていない。もしかして、魔術紋の解術が上手くいかなかったのだろうか。
「そうか、知らないのか。僕から伝えるのもどうかと思うが、急ぐことでもある。アユフィーラ、覚悟して聞け」
真剣な目をしたイザーク先輩は、言葉を選びながら私に伝えた。
「シキズキは、魔術師をやめて、このサザン帝国に来る。アユフィーラ、お前が赤の日に登録したことを聞いて、アイツも赤の日に登録した。もうすぐ、帝都に来る」
「―――!!!―――」
言葉にならない衝撃が、アユフィーラを襲った。今、イザーク先輩は何と言ったのか?彼が、シキズキ先輩が魔術師を止める?そんなことが、可能なのだろうか?そして、赤の日に登録するとは…
「ほ、本当なのですか?」
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