最後の勇者のレゾンデートル〜スキルなし判定された俺が隠しユニークスキル「ゲノムコントロール」で闇社会の覇王となるまで〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第2章・勇者召喚の秘密編

第78話 王と王女の最後③

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 これは最初から、この世界の王族すべてを滅ぼそうとしている、エンリツィオ一家みんなの復讐に、俺も加わりたいのだと言い出した時に、──俺から2人と約束していた、俺の覚悟を示す、最後の役目だった。

 俺は隠密と消音行動と空間転移を使い、ドラゴンを攻撃している人たちの中に混じって静かにその時を待った。

 ドラゴンは一瞬大きく光ったかと思うと、その姿を保っていられなくなり、その身を縮めて、アプリティオの王様の姿へと戻った。
 ──俺はその喉元に刃を突き立てた。

 右目と鼻を潰されて、腹から背中から、大量の血を流していたアプリティオの王様は、ゴフッ!と口から血を吐いて、どこか分からない場所を左目で見つめながら絶命した。

 殺すなら、人間に戻ってからにすると決めて、それを2人に宣言していた。……ドラゴンのままじゃ、罪悪感が薄れるから。

 人の命を奪うのだと、復讐の為に王族の命を奪うというのはこういうことだと、俺自身に実感させる為に。

 ──加害者を許してやれって言葉は、被害者のみが言える言葉だ。自分の為に、自分をこれ以上苦しめて、犯罪被害にしばられないよう、自分に言い聞かせる為の言葉。

 本人以外は誰一人、それを口にする権利はない。言った時点でソイツは被害者に石を投げた加害者になる。

 だから、俺は被害者に何かを言うことは出来ない。やがて被害者が加害者へと変わった時、新たな悲しみの連鎖を生んでしまったことを、ただ、他の方法を選ぶ道がなかったことを悲しく思うだけ。

 命を奪うまでの復讐なんて、誰より被害者本人を苦しめる、くだらないことだと、ずっと思って生きてきた。

 殺すことで、被害者と加害者が、強い絆で結ばれて、それでも生涯忘れることの出来ない苦しみに、とらわれるだけだと思うから。

 生きて苦しめて、加害者が、どれだけ被害者が苦しんだのかを理解して、加害者たちに心からの後悔の涙を流させてこそ、初めて被害者は救われるものだと思ってた。

 けど、新たな被害者を生み続ける王族たちは、いったいそれを理解出来るまでに、どれだけの時間がかかるのだろう?

 ジルベスタやドメール王子が生まれる遥か昔から勇者召喚は続いていて、むしろもっと効率的に被害者を生み出す為に、大量勇者召喚の方法は生まれた。

 誰かが止めるまで終わらない。だったら、それをするべきで、止める為に復讐する権利があるのは、被害者の俺たちだけだ。

 勇者召喚の実態が、ただの金儲けの侵略戦争であることを国民が知ったら、反対する人も現れるかも知れない。

 けど、召喚されて来た勇者たちがどうなったのか、この世界の人たちは、考えようともしてこなかった。

 魔族の国に定期的に勇者が送り込まれて、それでもずっと魔王が倒されないのは、勇者たちが魔族にかなわなかったからだ。
 ──全員命を落としているからだ。

 ちょっと考えたら、そんなことはすぐに分かる筈で、だけど自国民の血が流れないことで、その被害に目をつむっている。

 魔王は倒さなくちゃならないものだから。
 ──ただ、その一言だけで。

 その時点でこの世界の人たちは、すべからく裁かれなくてはならない、王族たちと同じ罪を背負っているのだ。

 自分たちの代わりに血を流し、戦っている異世界人たちの死に、目を向けず当たり前のこととしていることで。

 俺たちはそれに反旗を翻した。これはその戦いの、始まりの第一歩に過ぎないのだ。勇者が自由を勝ち取る為の、復讐の物語の。

 光が消えてドラゴンの姿が消失したあと、その場に横たわるアプリティオの王様の亡骸に、警備員や兵士たちは、初めてそこで、自分たちが攻撃していたものが、なんであったのかを知った。

「……父上。」
 人々の間をかき分けながら、ドメール王子がアプリティオの王様に近付くと、義理の父親の苦悶を浮かべたまま開いたまぶたを、眉間にシワを寄せながら、そっと閉じた。
 
「ヤクリディア……。」
 ドメール王子が、地面に手をついてしゃがんでいる、ヤクリディア王女の前に、片膝をついてしゃがみ込む。

 ヤクリディア王女は、まだ往生際が悪く、ドメール王子に水魔法を放とうとし、その腕をドメール王子に掴まれ、水魔法はあさっての方向へと飛んでいって被弾した。

「俺を殺すのに失敗し、また、これだけの甚大な被害を国にもたらした。
 お前は必ず死刑だ。
 ……それは分かるな?」

 ヤクリディア王女が憎々しげにドメール王子を睨む。

「……国王は、その権限で、死刑囚をいつ殺すのか、決めることが出来る。

 裁判を待たずとも、死刑が確定の罪を背負った人間に対しても、その権限は発動する。
 俺は名前だけは国王代理だが、既に国王の身だ。裁判を待つはずの国王も死んだ。

 今この瞬間から、アプリティオの国王の座は、正式に俺のものとなった。」

 舌打ちしながら、ヤクリディア王女がそっぽを向いた。ドメール王子は、それを切なげに見ながら、

「お前には信じらんねえかも知れねえが、俺は俺なりに、妹のお前を──愛していたんだぜ?

 せめてもの情けだ。
 俺がお前の死刑を執行する。
 母親のいねえお前が可哀想だと、俺はちょっと、お前を甘やかし過ぎたみたいだ。

 育て方を間違っちまって、ごめんな。
 今度また、兄妹に生まれ変わることがあったら、……もう少し、懐いてくれや。」

「──なに、」
「──合成魔法、エアリアルバレット。」

 エアリアルスラッシュと合成されたアースバレットが、無数の弾丸となって、切り刻むようにヤクリディア王女の体を貫いた。

 ヤクリディア王女は体中から血を吹き出し、前のめりにグラリと倒れた。それを地面に付く前に、ドメール王子が抱きとめる。

「ヤクリディア……!!
 馬鹿な……馬鹿な女だ……!」

 ドメール王子は声を震わせながら、目に涙をためてヤクリディア王女の亡骸を強く抱き締めた。

 彼女は最後に何を言おうとしたのだろう。きっとまた何か暴言を吐くつもりだったのだろうけど、それを、妹を愛していたドメール王子が、聞かずに済んだことだけが、彼にとっての唯一の救いに思えた。

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