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はじまり3
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音の満ち欠け(第三回)
初めての親元を離れての大学生活は学生寮での毎日だった。
4階建ての古い鉄筋建ての北溟寮は市の中心部から外れたリンゴ畑に囲まれた緑ヶ丘にあった。
個性的な学生たちがたむろするこの場所は新生活を始める自分には新鮮そのものだ。
学生の部屋である8畳程度のタイル張の洋間にはドアを開けると左右に作り付けのベッドがあった。
どの部屋も二人部屋で最初は先輩と同居する形でのスタート。
自分は斎藤さんと言う農学部3年生の人がルームメイトとなった。
中国人のような長い口髭を蓄えて気さくに話すその風貌はさながら仙人のようでもあってすぐに仲良くなった。
しかしこの斎藤先輩は民生と言った左派運動に身を投じていた人でもあり、ほとんど寮にいることはない。
三里塚闘争などにも良く出かけていたのだ。
それでもその柔和な笑顔はとても魅力的で、相手と話す時は必ず「お主」と呼ぶのが特徴だった。
あたかも映画「七人の侍」のキャラクターのようでもあった。
そんな寮生活の始まりには「新入生歓迎」なる大宴会が待ち受けていた。
先輩たちから聞かされたその「呑み会」は世にもおぞましい男子寮伝統の地獄のエンドレスパーティーだったのだ。
それは東北のバンカラ気風の残る独特な宴会で、通称「出身」と呼ばれた自己紹介一気飲み。
各階ごとの談話室と呼ばれた20畳ほどの部屋で、川の字なって並ぶテーブルの一番上座に一人ずつ登壇してラーメン丼に並々注がれた「弘前城」と言う銘柄の日本酒を一気に飲み干す。
テーブルに座って呑む列席者はやいのやいのヤジと応援で盛り上がると言う。
その自己紹介のやり方がまた堂に入っていた。
登壇一番、「しゅっし~ん!」
あらん限りの声を振り絞って口上を述べる合図。
それに応える列席者の「よ~し!」の大合唱。
同様の大声で自分の出身地を高らかに叫ぶ。そして「よーし!」のレスポンス。
定型化したこの流れで「所属」「名前」を潰れそうな大声で叫び、最後に「それではいただきます!」と挨拶して一息に一滴も残さず酒を飲み干さねばならない。
それを全員の寮生が滞りなく行い、一巡したところで再度二巡目に入り、潰れるまでくりかえすと言う。
この話を先輩に聞かされた時には卒倒しそうになった。
それがいよいよ明日に迫っていた。
初めての親元を離れての大学生活は学生寮での毎日だった。
4階建ての古い鉄筋建ての北溟寮は市の中心部から外れたリンゴ畑に囲まれた緑ヶ丘にあった。
個性的な学生たちがたむろするこの場所は新生活を始める自分には新鮮そのものだ。
学生の部屋である8畳程度のタイル張の洋間にはドアを開けると左右に作り付けのベッドがあった。
どの部屋も二人部屋で最初は先輩と同居する形でのスタート。
自分は斎藤さんと言う農学部3年生の人がルームメイトとなった。
中国人のような長い口髭を蓄えて気さくに話すその風貌はさながら仙人のようでもあってすぐに仲良くなった。
しかしこの斎藤先輩は民生と言った左派運動に身を投じていた人でもあり、ほとんど寮にいることはない。
三里塚闘争などにも良く出かけていたのだ。
それでもその柔和な笑顔はとても魅力的で、相手と話す時は必ず「お主」と呼ぶのが特徴だった。
あたかも映画「七人の侍」のキャラクターのようでもあった。
そんな寮生活の始まりには「新入生歓迎」なる大宴会が待ち受けていた。
先輩たちから聞かされたその「呑み会」は世にもおぞましい男子寮伝統の地獄のエンドレスパーティーだったのだ。
それは東北のバンカラ気風の残る独特な宴会で、通称「出身」と呼ばれた自己紹介一気飲み。
各階ごとの談話室と呼ばれた20畳ほどの部屋で、川の字なって並ぶテーブルの一番上座に一人ずつ登壇してラーメン丼に並々注がれた「弘前城」と言う銘柄の日本酒を一気に飲み干す。
テーブルに座って呑む列席者はやいのやいのヤジと応援で盛り上がると言う。
その自己紹介のやり方がまた堂に入っていた。
登壇一番、「しゅっし~ん!」
あらん限りの声を振り絞って口上を述べる合図。
それに応える列席者の「よ~し!」の大合唱。
同様の大声で自分の出身地を高らかに叫ぶ。そして「よーし!」のレスポンス。
定型化したこの流れで「所属」「名前」を潰れそうな大声で叫び、最後に「それではいただきます!」と挨拶して一息に一滴も残さず酒を飲み干さねばならない。
それを全員の寮生が滞りなく行い、一巡したところで再度二巡目に入り、潰れるまでくりかえすと言う。
この話を先輩に聞かされた時には卒倒しそうになった。
それがいよいよ明日に迫っていた。
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