人魚姫症候群(にんぎょひめシンドローム)〜夢を諦めた僕と失った君

ゆゆ太郎

文字の大きさ
2 / 4

2話 君と出会った

しおりを挟む
あれから僕は中学生活を無事に終え、公立の高校へと進学した。

学校は徒歩でも通える距離なのもあって大分使い慣れてしまった松葉杖を片手に毎日登校している。 

リハビリの成果もあり少し歩く程度の距離であれば松葉杖がなくとも大丈夫にもなった。それでも、未だに激しい運動をすることはできない僕は体育の授業だけはいつも見学である。

 そうして入学して2ヶ月、新しい空間ではそれなりの新しい友達も何人かできた。

そのほとんどは、松葉杖も使っているのを理由に話しかけてきた奴らである。

それは小学生の頃足を骨折したクラスのお調子者が松葉杖で登校してきた日に、皆して群がっていた時のことを思い出させる。
そんな高校生活における試験を除いた最初のイベントは体育祭であった。

「体育祭の実行委員会を決めます」
 そう発言したのは、このクラスをまとめる委員長である加納恵かのう めぐみ
 自ら学級委員に立候補した彼女はとても真面目でそれは容姿にも現れている。

 一切の乱れもしわもない制服姿に三つ編みとなった黒髪、オマケにメガネまでかけている容姿は正に絵に書いたような真面目委員長の姿そのものである。

 アニメやマンガではモテないタイプかもしれないが少なくともかなりの美人であり、
クラスの男子も何人かは好意を抱いている。

  ──そうして体育祭の実行委員会、そして各々がでる種目が淡々と決まっていくが僕にとってそれは関係のないことで。
 唯一出来ることは応援合戦での声出し程度。
 1年前であれば色々な種目に積極的に手を挙げていたのだろうか。

 それから数日が経ち、、、

「はぁ~」
「ん?どうしたんだよ優太ゆうた
「練習辛いんだよぉ……僕、体力ないのに長距離走の選手だよ?」
「まぁ優太が寝ぼけて手を挙げたのが悪いけどね」

 お昼休みに友人と会話を交わす。
 ため息をついてる細身の身長160でマッシュヘアーをしている安藤優太あんとうゆうたと、その真逆で筋肉マッチョで身長180のウルフヘアーをしている矢野大樹やのたいきの2人は特に仲の良い僕の友達だ。 

 「そんなに体力ないなら辞退すればよかったじゃえか」
「あ……いやぁそれはちょっと」
「察しなよ。加納さんだよ、加納さん」
「ん?加納がどうかしたのか?おーいか───」

「ちょっとちょっと!」 
「……もご なんだよ優太」
「今のは大樹が悪い。あのね」
(ごにょごにょ)

「え!?マジ?おま……え!?」
「なんで言っちゃうのかなぁ……」
「ごめんごめん。だってこうしないと大樹が先になんかやらかすだろ?」
「優太おまえ、アイツのどこに惚れたんだよ!てかなんで涼はそれ知ってんの?」
「声大きいよバカ!それは僕が相談したからで」
 「なんで俺には言ってくれねぇんだ」
「それは大樹だからだろ」
「はぁ?わけわかんねぇ」

 ははは……この2人といると自分の悩みも馬鹿らしくなって気が楽になるんだよな…… 

「……つまり、加藤にいい所見せたいってことか?」 
「そうなんだよ、長距離走は他の人もやりたがってないみたいだし。ここで僕が活躍できたらって思ってね」
「んなら涼なんかアドバイスしてやればいいじゃねぇか」 
「え、まぁ体力作りするのにオススメの動画紹介するくらいならできるけど」 
「ほんと!?涼、感謝感謝だよ!」
「俺もこいつからアドバイスされたお陰で筋肉が前より輝いてるからな!」
「いや、僕はやり方を教えただけで凄いのは大樹自身だよ」
「知識があるのは凄いことだよ!涼もなんかスポーツやってたの?」
「……水泳を少しだけね」
「そうなんだね!」
「あ、おすすめの動画送っといたから後で見といて」
「ありがとね涼」
「俺のプロテインも1パックやるぞ?」
「それは気持ちだけ受け取っておくよ」
「あはは……」

 ◇

 「今日で立花さんのリハビリも終わりでいいでしょう。よくここまで頑張りましたね。ただし定期的な健診が終わるわけではないので、激しい運動は控えるようにしてくださいね」 
「はい、先生ありがとうございます」
  
 去年から度々通院して行っていたリハビリも今日で終わりを告げた。
 そして松葉杖がなくとも余程の距離でなければ問題がなくなった。運動に関しては相変わらずなのだが……

 そういえばスマホにLINEが来ていた。
 確認すると母さんからで、買い物から帰ってきたら駐車場が空いていなかったようでここから少し離れた場所に停めたらしい。

 そうして久しぶりの松葉杖無しのそれなりの距離を有した移動をする。
 こうして、ゆっくりと歩いていると普段は見向きもしないものに心を惹かれるものだ。
 用水路に流れる水だったり吹き心地のいい風。もう1、2ヶ月早ければ桜だって見れたかもしれない。

 そんなことを考えながら歩いていると小さな喫茶店を通りかかった辺りで歌声のようなものが微かに聞こえた。

 それは、何処かで聴いた記憶のある懐かしい曲。
 自分の記憶では男性が歌っていたが、
中からは聞こえてくるのは女性の柔らかい声で─── その声に誘われたかのように自然と僕は喫茶店へ入った。
 
    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

処理中です...