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第3話 未知との遭遇
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次のバイトの日、在庫を確認しつつ 自分も興味が湧いたので 読みたい本を考えていた。
俺のバイト先の本屋は 専門書というか通好みというか、大手とは違い、広く浅くトレンドとかの 一般受けするようなタイプの本がメインじゃ無い。
より深く知識を広げ掘り下げ 自分で考え、糧にするタイプの人向けと言うか…
実際、小説家とか漫画家とか医学、物理学、考古学、文化人類学…色々なタイプのお客さんが多い。
だから、アイツが知りたい事を網羅する本はあった。俺が選んだ数冊を読めば きっと知りたかった事が書いてあるハズだ。
しかし、写真付きというのもあり、分厚さもあり、この数冊で数万円飛ぶ。アイツの財布事情は知らないけど、一般的な大学生の出せる額じゃない。
それに アイツの様子とか熱意みたいなのを目の当たりにして…
俺のチョイスでは 不十分というか、少し方向性が違う気もするし…とか考えていると、気付いたら 自宅でアイツの本を パソコンで調べていた。
それと、その本が置いてあって、そのジャンルが豊富に揃えてある図書館も。
やっぱり数冊で数万円は無理だろうし、図書館の方が好きなのを選べる。
ずっと本屋の無い環境だったアイツには図書館で金額を気にせず、好きなのを自由に選ぶ楽しさがある方が良いと思った。
ついでに俺も数万円は無理だから図書館にする。
数日後、また昼時のカフェテリアでアイツが「先パ~イッ!!」と例のごとくやって来た。
仲良しグループのメンバーも一緒に。更に人数が増えてるし…。
ま、でも今日で最後だ。
「これ、一応ピックアップしたんだけど」
そう言ってパソコンで作った資料…と言うほどじゃ無いけど、見つけやすいように本のタイトルとか著者とか出版社の情報をまとめたのと、図書館の情報、Wi-Fi無いって言ってたからシンプルな地図とか載せたやつを手渡した。
「え?…これ…?」
「うちの本屋にもあったけど、凄く値段が高いから。図書館にも同じ本あるし、うちに無い本も沢山あるから。自分で自由に好きなの選んで、手元に欲しい、買いたいって思ったのがあれば 買ったら良いと思って。東京は安全なフリーWi-Fiとかそこら辺にあるから、ネット注文も出来るし」
「…………!!」
これで後は「人違い」だと言えば終了と思っていたら…え?待て?泣いて…いや、男だからな堪えた。
けど、瞳は潤んで口をキュッと結んでる。え?どした⁇
「せ…先パイ…これ作ってくれたんすか…?」
「え?ああ、まぁ大したのじゃ無いけど」
「そんな!スゴイですよっ!!こんなの!作ってくれるとか思って無かったしっ!!」
「あ…いや、本屋の業務っつーか…別にその…」
「店長さんに怒られませんでしたかっ⁈」
「店長?いや別に…?何で 店長が怒るの?」
「だってっ!先パイは 本を売るのが仕事でしょっ⁈こんな自分の店以外で 利益も無ぇのに…!」
「ああ、まぁそうだけど、好きでも無いのを高額で売りつけるような事はしないから。特にうちは。俺もそんなのしたく無ぇし。だから気にしないで?それに、この事は 店長も他のスタッフも知らないから大丈夫だよ」
「う~~~!あ~~もぉ~~~っ!先パイめっちゃ良い人~~~っ!!超優し~~~っ!!大好きっす!!友達になれてよ良かったァ~~~~っ!!」
「⁉︎」
そう言って アイツは俺に飛びついて ぎゅーっと抱きしめた。
男に抱きしめ…いや「ハグ」という表現を使おう。
そっちの方が正しい。アイツの場合は。
「えっ ちょっ…離し…」
「先パイっ!!」
「んっ⁈」
「俺!本買う時は 絶っ対ぇ先パイの所で買うけんっ!!」
「…え?いや、そんな…いいって…」
「い~~っやッ!!絶対ぇ買う!!東京は どげぇか知らんけどっ!こげぇ親切に良ぉしてもろうとってから、他で買うやら出来ん!!俺も男やけん!この親切に義理も筋も通さんような、分からんような、ケツの穴の小せぇ男じゃ無ぇけんなっ!!OK⁈」
「あ…お…っけぇ…」
「うん!!先パイ ありがと~ございまぁ~っす!!めちゃくちゃ嬉しいわぁ!」
「いえ…あ…こちらこそ…ありがとうございます…???」
アイツは「ひひひっ♪」と子供みたいに無邪気に笑ってハグをやめた。
俺は呆然。連れ2人も「…」だ。
島という特殊環境で育つと こんなもんなのか?いや、仲が良ければ ハグは普通のコミュニケーションの一環か…?
スポーツ選手がするのと同じ感覚か…?
そんな事を考えていると、アイツの仲良しグループの奴らが口を開いた。
「ナオくんさぁ…かの…恋人とかいるの?」
「ん?おらんよ?」
「あ~そっか~…今は いないんだ~?」
「今っちゅうか、ずっとおらんよ?付き合った事 無いけん」
「へっ?あっ、そうなのっ?」
「うん。言わんやったっけ?島で小学生俺だけやったし、中学も全国生徒一番多い時で5人で、高校は工業科で男ばっかやったって」
「あ~そう言えば、そうだったねぇ~」
「うん。ちゅ~か、恋人っち…東京の人は「彼女」やなくて「恋人」っち言うん⁈わぁ~~っ 何かめっちゃ大人っぽ~~いっ!へへっ 俺も彼女出来たら「恋人」っち言おっかなぁ~~♫」
恋愛対象が男女どちらか 分から無いから「恋人」と表現した、仲良しの友人の配慮は アイツには全く分かって無いけど。
カフェテリアに居た全員には分かった。
そして、アイツの恋愛対象は女性であることも皆が分かった。
「そっか~、でも「彼女」って言い方も普通だから好きな方で良いと思うよ~」
「そうそう♪ふふっ」
「そうなん?あっ俺さぁ~東京来ることなって、ちょっと夢っちゅうかぁ、彼女出来たらさぁ~初めてのディスティーニアイランドは 彼女と一緒に行きたいな~っち思っとんのやけど~♪初めては友達と一緒の方が楽しいんかなぁ~?皆行ったことある~?俺まだ無いけんさ~?教えてな~?」
アイツの仲良しグループは一瞬沈黙した後、全員同じテンションで
「……!!~~~っ!かっわいいっ!♡♡」
「はぁ~~~♡♡かっわ!ヤッバ…!♡」
「ナオく~~ん♡出来る限り俺ら協力するから!!彼女と行きなっ⁈」
「うんうん!初めての彼女と、ホントに大好きな人と初めては大事に取っときなっ?ねっ?」
「そうそう!ディスティーニアイランドの効率良いプランとかは俺らに任せてっ!何回も行った事あるからっ!」
「うんうん!!大事な人に初めては取っとくんだよっ⁈OK⁈」
「うん!分かった!ありがとぉ~皆っ!へへへっ でも、まだ彼女もおらんけどぉ…俺、皆とも絶対一緒に行きたいけん!一緒行ってな~っ?」
「うんうん!!行く行く!もう年パス買ってでも行くから!」
「俺も俺も!♡♡」
「年パス⁉︎あっ!そっかぁ!ここ東京やけん、すぐ電車で行けるんやん!飛行機乗らんでもっ。すげぇ~!あっ ちゅうか、東京タワーとか、スカイツリーとか、浅草?毎日修学旅行や~ん!」
「うぅ…ピュアかわ…♡」
「ヤバかわ…!♡」
こうして、カフェテリアに居た全員(俺以外)が、「ナオくんの成長を見守る会」「ナオくん保護者会」「ナオくんファンクラブ」等々に自主加入(複数加入可)し
連れの長崎、宮崎も表情を見るに 父性的なのが湧いた様子で どれかに加入しそうだ。
ハァ…恐ろしいヤツ…。
さっさと離れようと本気で思い、「人違い」と早く言おうとしていると
「先パイは ディスティーニアイランド行った事ありますかっ?」
来た!千載一遇のタイミング!これで終了だ。
「いや、無いけど。あのさ?」
「はい?」
「俺、入学前に会った記憶無いし、人違いと思う。俺じゃ無いよ」
「あ~、先パイで間違い無いと思います。俺、目と耳良いんで。それに、あの時は先パイの位置からじゃ、俺は死角になってて見えなかったと思いますし。こっちの方見ても無かったし、俺の事 記憶に無いの当たり前っす♪」
「…へ?あ…そう…なの…?」
「はい♫」
まさかの展開だ。そもそも俺が気付くハズも無い状況だった…だと?
俺がフリーズしていると、連れの2人が今日一番の有益な質問をしてくれた。
「あのさ?何で 嵯峨と友達になろうと思ったの?」
「ん? 直感です!」
「直…感….?」
「はいっ!初めて見た時に ビビビっと来ましたっ!!絶ッ対に良い人やけん 絶ッ対に友達なろうと思いましたっ!東京来て初めて友達になりてぇっち思った人やし、地元に居った時でも、こんなに「この人と友達なりたい」っち思った事 無かったかも!初めてレベルやわ、今考えると♫」
一同「…」となる中、アイツだけはニコニコ嬉しそうに俺を見てる。
俺はフリーズしてたけど、ハッと我に返り 若干腹立ち紛れに食い気味に
「いや、だからそれ、俺じゃ無いって」と言った。
アイツは 一瞬キョトンとしたけど、すぐにまた嬉しそうにニコニコして
「絶対あの人先パイと思ったけど、それならそれで全然良いです♪」
「え?」
「先パイとあの人が同じ人じゃ無いんなら、東京にはまだ 俺が「絶対友達なりたい」っち思った人が もう一人おるっち事やんっ?」
「……」
「そっちのがラッキーかも!あん時のお兄さんとも、いつかまた会えるかもやし、大学では先パイに会えて友達なれたし~♪」
「……」
「へへっ 先パイ!これ、作ってくれてありがとうございますっ!!大切にしますっ!図書館にも行くけど、買う時は絶対先パイの所で買うけんっ!」
「あ…ああ…」
「店に無いのでも注文とか出来ますかっ?」
「あ…うん…」
「よっしゃー!じゃ、今度図書館行ってみよ~っと♫」
そう言ってアイツは例のごとく、笑顔でブンブン手を振り、無いハズの尻尾まで振ってるのが全員に分かる感じで去って行った。
しかも、まだ声が聞こえる範囲でもう一言…仲良しの友人達と話しながら
「嵯峨先輩…だっけ?優しくって良かったね…?ナオちゃん」
「うん!!めっちゃ優しいよなぁ~っ?マジ好きやわ~っ!ホント同じ大学に先パイ居って良かった~♫」
「…うん。良かったねぇ~…」
俺は呆然と立ち尽くしていた。まさに未知との遭遇。そんな考え方もあるのか…?
つーか…直感って…一番否定しにくい…直感は間違いだと、俺はそんな人間じゃない、と。何なの?アイツ…
「嵯峨~ナオくんすげぇ子だなぁ~…」
「ナオくんお前が大好きだってよ?気に入られて良かったな嵯峨」
「…ハァ…人違いってば」
「いや、今聞いたろ?人違いでも先輩と友達なれて嬉しいってさ?」
「いや~マジでピュアでかわいいな。まぁ顔もカワイイけど…男だけど」
「何で俺?本屋の業務しかしてねぇんだけど」
「さあな~?」
「つか、昼飯~」
そうして、今日で完全終了するはずが延長戦へ。
更に一部始終を見ていた全員が思ったのは、きっと島の環境じゃ初恋もまだなんだろうし、あの子もしかしたら恋愛対象男でもイケるんじゃない⁇だった。
学内の腐女子、腐男子には俺らが初対面の時に既に俺らをネタにBLスイッチが入ってたようだが、昨今は一般にもドラマ等を通してカジュアルにBLが受け入れられてるし…
今日、学内のほぼ全員が俺とアイツのBLネタで盛り上がるスイッチが入った。
アイツの容姿は、カワイイ系。健康的な小麦肌に身長は170cmギリ無いくらい。
小顔で手足が長くスタイルが良い。
跳ねるように走って来るから、きっと子鹿かアマガエルみたいな細身だけどバネの良い筋肉が付いてるんだろう。
方言から、西日本出身かな?と思うけど、南の方の顔立ちというか、目鼻立ちがハッキリして整ってて、大きな瞳、黒目がキラキラしてて子供みたいだ。
要するに小柄でカワイイ系のアイドルのようなイケメンだ。田舎の素朴さに、あの性格。
既に女子の間では子犬系とかバンビみたいとか人気になりつつあるようだ。
一方、俺はと言うと先述の様に、学校一のモサいモブ男。
BLは読んだ事 無いが…一体どんな妄想してんだろうな…皆。あーウゼェ。
家に帰って冷静になって今日のことで思ったのは、連れ2人が「ナオくん」呼びを始めたのと、アイツが予測出来無いのと
「ケツの穴の小さい男」ってフレーズ実際に言ってるの初めて見たわ…だった。
俺のバイト先の本屋は 専門書というか通好みというか、大手とは違い、広く浅くトレンドとかの 一般受けするようなタイプの本がメインじゃ無い。
より深く知識を広げ掘り下げ 自分で考え、糧にするタイプの人向けと言うか…
実際、小説家とか漫画家とか医学、物理学、考古学、文化人類学…色々なタイプのお客さんが多い。
だから、アイツが知りたい事を網羅する本はあった。俺が選んだ数冊を読めば きっと知りたかった事が書いてあるハズだ。
しかし、写真付きというのもあり、分厚さもあり、この数冊で数万円飛ぶ。アイツの財布事情は知らないけど、一般的な大学生の出せる額じゃない。
それに アイツの様子とか熱意みたいなのを目の当たりにして…
俺のチョイスでは 不十分というか、少し方向性が違う気もするし…とか考えていると、気付いたら 自宅でアイツの本を パソコンで調べていた。
それと、その本が置いてあって、そのジャンルが豊富に揃えてある図書館も。
やっぱり数冊で数万円は無理だろうし、図書館の方が好きなのを選べる。
ずっと本屋の無い環境だったアイツには図書館で金額を気にせず、好きなのを自由に選ぶ楽しさがある方が良いと思った。
ついでに俺も数万円は無理だから図書館にする。
数日後、また昼時のカフェテリアでアイツが「先パ~イッ!!」と例のごとくやって来た。
仲良しグループのメンバーも一緒に。更に人数が増えてるし…。
ま、でも今日で最後だ。
「これ、一応ピックアップしたんだけど」
そう言ってパソコンで作った資料…と言うほどじゃ無いけど、見つけやすいように本のタイトルとか著者とか出版社の情報をまとめたのと、図書館の情報、Wi-Fi無いって言ってたからシンプルな地図とか載せたやつを手渡した。
「え?…これ…?」
「うちの本屋にもあったけど、凄く値段が高いから。図書館にも同じ本あるし、うちに無い本も沢山あるから。自分で自由に好きなの選んで、手元に欲しい、買いたいって思ったのがあれば 買ったら良いと思って。東京は安全なフリーWi-Fiとかそこら辺にあるから、ネット注文も出来るし」
「…………!!」
これで後は「人違い」だと言えば終了と思っていたら…え?待て?泣いて…いや、男だからな堪えた。
けど、瞳は潤んで口をキュッと結んでる。え?どした⁇
「せ…先パイ…これ作ってくれたんすか…?」
「え?ああ、まぁ大したのじゃ無いけど」
「そんな!スゴイですよっ!!こんなの!作ってくれるとか思って無かったしっ!!」
「あ…いや、本屋の業務っつーか…別にその…」
「店長さんに怒られませんでしたかっ⁈」
「店長?いや別に…?何で 店長が怒るの?」
「だってっ!先パイは 本を売るのが仕事でしょっ⁈こんな自分の店以外で 利益も無ぇのに…!」
「ああ、まぁそうだけど、好きでも無いのを高額で売りつけるような事はしないから。特にうちは。俺もそんなのしたく無ぇし。だから気にしないで?それに、この事は 店長も他のスタッフも知らないから大丈夫だよ」
「う~~~!あ~~もぉ~~~っ!先パイめっちゃ良い人~~~っ!!超優し~~~っ!!大好きっす!!友達になれてよ良かったァ~~~~っ!!」
「⁉︎」
そう言って アイツは俺に飛びついて ぎゅーっと抱きしめた。
男に抱きしめ…いや「ハグ」という表現を使おう。
そっちの方が正しい。アイツの場合は。
「えっ ちょっ…離し…」
「先パイっ!!」
「んっ⁈」
「俺!本買う時は 絶っ対ぇ先パイの所で買うけんっ!!」
「…え?いや、そんな…いいって…」
「い~~っやッ!!絶対ぇ買う!!東京は どげぇか知らんけどっ!こげぇ親切に良ぉしてもろうとってから、他で買うやら出来ん!!俺も男やけん!この親切に義理も筋も通さんような、分からんような、ケツの穴の小せぇ男じゃ無ぇけんなっ!!OK⁈」
「あ…お…っけぇ…」
「うん!!先パイ ありがと~ございまぁ~っす!!めちゃくちゃ嬉しいわぁ!」
「いえ…あ…こちらこそ…ありがとうございます…???」
アイツは「ひひひっ♪」と子供みたいに無邪気に笑ってハグをやめた。
俺は呆然。連れ2人も「…」だ。
島という特殊環境で育つと こんなもんなのか?いや、仲が良ければ ハグは普通のコミュニケーションの一環か…?
スポーツ選手がするのと同じ感覚か…?
そんな事を考えていると、アイツの仲良しグループの奴らが口を開いた。
「ナオくんさぁ…かの…恋人とかいるの?」
「ん?おらんよ?」
「あ~そっか~…今は いないんだ~?」
「今っちゅうか、ずっとおらんよ?付き合った事 無いけん」
「へっ?あっ、そうなのっ?」
「うん。言わんやったっけ?島で小学生俺だけやったし、中学も全国生徒一番多い時で5人で、高校は工業科で男ばっかやったって」
「あ~そう言えば、そうだったねぇ~」
「うん。ちゅ~か、恋人っち…東京の人は「彼女」やなくて「恋人」っち言うん⁈わぁ~~っ 何かめっちゃ大人っぽ~~いっ!へへっ 俺も彼女出来たら「恋人」っち言おっかなぁ~~♫」
恋愛対象が男女どちらか 分から無いから「恋人」と表現した、仲良しの友人の配慮は アイツには全く分かって無いけど。
カフェテリアに居た全員には分かった。
そして、アイツの恋愛対象は女性であることも皆が分かった。
「そっか~、でも「彼女」って言い方も普通だから好きな方で良いと思うよ~」
「そうそう♪ふふっ」
「そうなん?あっ俺さぁ~東京来ることなって、ちょっと夢っちゅうかぁ、彼女出来たらさぁ~初めてのディスティーニアイランドは 彼女と一緒に行きたいな~っち思っとんのやけど~♪初めては友達と一緒の方が楽しいんかなぁ~?皆行ったことある~?俺まだ無いけんさ~?教えてな~?」
アイツの仲良しグループは一瞬沈黙した後、全員同じテンションで
「……!!~~~っ!かっわいいっ!♡♡」
「はぁ~~~♡♡かっわ!ヤッバ…!♡」
「ナオく~~ん♡出来る限り俺ら協力するから!!彼女と行きなっ⁈」
「うんうん!初めての彼女と、ホントに大好きな人と初めては大事に取っときなっ?ねっ?」
「そうそう!ディスティーニアイランドの効率良いプランとかは俺らに任せてっ!何回も行った事あるからっ!」
「うんうん!!大事な人に初めては取っとくんだよっ⁈OK⁈」
「うん!分かった!ありがとぉ~皆っ!へへへっ でも、まだ彼女もおらんけどぉ…俺、皆とも絶対一緒に行きたいけん!一緒行ってな~っ?」
「うんうん!!行く行く!もう年パス買ってでも行くから!」
「俺も俺も!♡♡」
「年パス⁉︎あっ!そっかぁ!ここ東京やけん、すぐ電車で行けるんやん!飛行機乗らんでもっ。すげぇ~!あっ ちゅうか、東京タワーとか、スカイツリーとか、浅草?毎日修学旅行や~ん!」
「うぅ…ピュアかわ…♡」
「ヤバかわ…!♡」
こうして、カフェテリアに居た全員(俺以外)が、「ナオくんの成長を見守る会」「ナオくん保護者会」「ナオくんファンクラブ」等々に自主加入(複数加入可)し
連れの長崎、宮崎も表情を見るに 父性的なのが湧いた様子で どれかに加入しそうだ。
ハァ…恐ろしいヤツ…。
さっさと離れようと本気で思い、「人違い」と早く言おうとしていると
「先パイは ディスティーニアイランド行った事ありますかっ?」
来た!千載一遇のタイミング!これで終了だ。
「いや、無いけど。あのさ?」
「はい?」
「俺、入学前に会った記憶無いし、人違いと思う。俺じゃ無いよ」
「あ~、先パイで間違い無いと思います。俺、目と耳良いんで。それに、あの時は先パイの位置からじゃ、俺は死角になってて見えなかったと思いますし。こっちの方見ても無かったし、俺の事 記憶に無いの当たり前っす♪」
「…へ?あ…そう…なの…?」
「はい♫」
まさかの展開だ。そもそも俺が気付くハズも無い状況だった…だと?
俺がフリーズしていると、連れの2人が今日一番の有益な質問をしてくれた。
「あのさ?何で 嵯峨と友達になろうと思ったの?」
「ん? 直感です!」
「直…感….?」
「はいっ!初めて見た時に ビビビっと来ましたっ!!絶ッ対に良い人やけん 絶ッ対に友達なろうと思いましたっ!東京来て初めて友達になりてぇっち思った人やし、地元に居った時でも、こんなに「この人と友達なりたい」っち思った事 無かったかも!初めてレベルやわ、今考えると♫」
一同「…」となる中、アイツだけはニコニコ嬉しそうに俺を見てる。
俺はフリーズしてたけど、ハッと我に返り 若干腹立ち紛れに食い気味に
「いや、だからそれ、俺じゃ無いって」と言った。
アイツは 一瞬キョトンとしたけど、すぐにまた嬉しそうにニコニコして
「絶対あの人先パイと思ったけど、それならそれで全然良いです♪」
「え?」
「先パイとあの人が同じ人じゃ無いんなら、東京にはまだ 俺が「絶対友達なりたい」っち思った人が もう一人おるっち事やんっ?」
「……」
「そっちのがラッキーかも!あん時のお兄さんとも、いつかまた会えるかもやし、大学では先パイに会えて友達なれたし~♪」
「……」
「へへっ 先パイ!これ、作ってくれてありがとうございますっ!!大切にしますっ!図書館にも行くけど、買う時は絶対先パイの所で買うけんっ!」
「あ…ああ…」
「店に無いのでも注文とか出来ますかっ?」
「あ…うん…」
「よっしゃー!じゃ、今度図書館行ってみよ~っと♫」
そう言ってアイツは例のごとく、笑顔でブンブン手を振り、無いハズの尻尾まで振ってるのが全員に分かる感じで去って行った。
しかも、まだ声が聞こえる範囲でもう一言…仲良しの友人達と話しながら
「嵯峨先輩…だっけ?優しくって良かったね…?ナオちゃん」
「うん!!めっちゃ優しいよなぁ~っ?マジ好きやわ~っ!ホント同じ大学に先パイ居って良かった~♫」
「…うん。良かったねぇ~…」
俺は呆然と立ち尽くしていた。まさに未知との遭遇。そんな考え方もあるのか…?
つーか…直感って…一番否定しにくい…直感は間違いだと、俺はそんな人間じゃない、と。何なの?アイツ…
「嵯峨~ナオくんすげぇ子だなぁ~…」
「ナオくんお前が大好きだってよ?気に入られて良かったな嵯峨」
「…ハァ…人違いってば」
「いや、今聞いたろ?人違いでも先輩と友達なれて嬉しいってさ?」
「いや~マジでピュアでかわいいな。まぁ顔もカワイイけど…男だけど」
「何で俺?本屋の業務しかしてねぇんだけど」
「さあな~?」
「つか、昼飯~」
そうして、今日で完全終了するはずが延長戦へ。
更に一部始終を見ていた全員が思ったのは、きっと島の環境じゃ初恋もまだなんだろうし、あの子もしかしたら恋愛対象男でもイケるんじゃない⁇だった。
学内の腐女子、腐男子には俺らが初対面の時に既に俺らをネタにBLスイッチが入ってたようだが、昨今は一般にもドラマ等を通してカジュアルにBLが受け入れられてるし…
今日、学内のほぼ全員が俺とアイツのBLネタで盛り上がるスイッチが入った。
アイツの容姿は、カワイイ系。健康的な小麦肌に身長は170cmギリ無いくらい。
小顔で手足が長くスタイルが良い。
跳ねるように走って来るから、きっと子鹿かアマガエルみたいな細身だけどバネの良い筋肉が付いてるんだろう。
方言から、西日本出身かな?と思うけど、南の方の顔立ちというか、目鼻立ちがハッキリして整ってて、大きな瞳、黒目がキラキラしてて子供みたいだ。
要するに小柄でカワイイ系のアイドルのようなイケメンだ。田舎の素朴さに、あの性格。
既に女子の間では子犬系とかバンビみたいとか人気になりつつあるようだ。
一方、俺はと言うと先述の様に、学校一のモサいモブ男。
BLは読んだ事 無いが…一体どんな妄想してんだろうな…皆。あーウゼェ。
家に帰って冷静になって今日のことで思ったのは、連れ2人が「ナオくん」呼びを始めたのと、アイツが予測出来無いのと
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