先パイッ!「ビーエル」って何ですかっ?

AnnA

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第4話 集合場所

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次の日からアイツは学内の注目を集め始めた。ついでにセット扱いの俺も。クソ迷惑。

アイツは学内の移動中とかに会えば、笑顔で手を振り見えない尻尾を振り、一言声をかけて、自分で「友達」と言いつつも一応「先輩・後輩」と思っているんだろう去り際にペコッと頭を下げる。

そして昼時に会うと俺の所に来て話しかけて来るのがルーティンになった。

アイツの話は面白いし俺とのBL展開が見たいしで、アイツの仲良しグループもいつも一緒に俺の所に来る。

俺の連れ2人もアイツの事が気に入ってて「あ~来た来た♫」と楽しみにしてる始末。そして学内の全員がそんな感じだ。

俺の唯一の味方…では無いが、例の講義時間が長引く教授の日はアイツが昼時来るのが遅いからサッと食べて会わないように出来る。それが俺の唯一の抵抗だ。

ハァ…もうかなり沢山の友達がいるんだから俺の事は放っといてくれ…!!という願いは叶わず…。

日々の流れは次の通りだ。笑顔でやって来て…とかの件は省略して、話しの内容だけにする。

ちなみにアイツと周囲の人間達(俺の連れ含む)が話すので、俺は ほぼ話さず、モブその1くらいの感じだ。俺に対して話しかけられたら返す程度だ。

(別の日)

「先パ~イ、背ぇ何cmですかっ?」

「…182…」

「え~~っすげぇっ良いなぁ~っ!牛乳って効果ありますかねっ?先パイは飲みましたっ?」

「…いや…特には…」

「そっかぁ~あんま関係ねぇんかなぁ…」

「ナオくんはそのままの身長で良いって~」

「いいやっ!あとちょっと!あともう少しありゃ~堂々と170cmって言えるんやもん!あと1cmあれば文句なし170cm超えるの!」

「あ~そりゃあ、重要だ~♫」

「うんうん、そりゃぁ重要重要♪」

「やろっ⁈しっかり170cm超えたら地元の後輩にドヤァって言えるけん!」

「ど~ゆう事?」

「俺さぁ、卒業する時 後輩達に制服とつなぎやるっち言ったら、「先輩のサイズ小さいけん要らん」っち言ってからさぁ~っ!」

「つなぎって?」

「ん?あー工業科…機械科やったけん作業用の…実習服?っち言ったら分かる?」

「あ~はいはい!分かる分かる!」

「そっか~工業科って言ってたね~」

「うん!」

「牛乳飲まないより、飲んでた方が効果あると思うよ~」

「やっぱそうかなっ?」

「うんうん♪」

「じゃ~飲も~っと思うんやけどさ?なんか、こっちの牛乳薄くねぇ?」

「薄い?味が?」

「うん」

「ナオくん九州出身だから、そう感じるのかもね~九州の牛乳濃そうだもん」


アイツが九州出身と知って、この容姿に納得したのも束の間。

「それ分かる~っ!」と外野から北海道出身者がやって来て、アイツと意気投合し

一瞬で地元の一般的な牛乳(牧場とかのじゃ無くてスーパーにある値段も普通のやつ)飲み比べ大会が決まった。

各自いつも実家で飲んでた又はスーパーに常時ある定番の商品を取り寄せる。

アイツはネット通販をしないので、友人が取り寄せてくれるそうだ。

すぐに開催日時が決まり、集合場所は俺の所。

…俺は待ち合わせの目印じゃ無えっ!!と心の中で叫びつつ、強制参加決定だ。

そして、参加人数が膨れ上がり、結局スーパーの試飲程度の量だったけど

感想は「濃!」だ。

俺が今まで飲んでたのは、牛乳風味の白い水だったのかも知れない。

またしてもアイツから驚きと納得と共感させられた。

ちなみに、この企画が面白いと、ご当地自慢対決的なのが始まって、安価で皆が盛り上がるイベントとして定着した。

新年度に学年や学部を問わず親睦を深めるのにピッタリとは思うが…。

アイツは皆の中心、アイドル、マスコット、看板犬といったポジションを確立していき、俺はセット売りの相方、待ち合わせの目印。

もう、いい加減解放されたい。最近なんて、ハチ公ってこんな気分なのかな…とかバカみたいな事をふと思う始末。

それに俺がハチ公レベルとか烏滸がまし過ぎるな。

(別の日)

「ふふっ ナオちゃんのあの話まだ笑い止まらねぇ~っ」

「講義前に聞いたからな~っ」

「え?東京来る事になった話?」

「そうそう!」

「え~?そげぇ面白かった?」

「おっ何々?俺らにも教えて~!なっ嵯峨 聞きたいよなっ?」

「……」

「ふふっ すっごい面白かったんで~ ナオくん先輩達にも話して~?」

「え~?そぉ?ばーちゃん達が 乗り込んで来た所くらいからで良い~?」

「何それっ⁈どーゆー事っ⁈」

「ふふふっ!うんっ そこからで良いよ~ くふふっ」

「あー、俺就職しようと思っとったのに、いきなり先生から呼ばれて~。「今学校にお前の祖父母って言いよん人が来たけん、ちょっと本当にそうか確認して」っち言われて~。ホントにうちのじーちゃん達がさぁ、結婚式の服着て来とって~。対応してくれとった先生に、俺を東京に行かせてくれっち真剣頼みよって」

「えっ?結婚式の帰りに学校来たの?おじいさん達…」

「いいえ?」

「ふふっ 先輩そう思いますよねっ⁈」

「うん…そりゃ、そうでしょ?結婚式の服着てたら…」

「いや~東京とか、都会は違うやろうけど~。田舎やと、どっか行く時のよそ行きとか一張羅なんか結婚式か葬式の服しか無えけんさ~?特に ばーちゃん達は学校行事とかも行かんし、デパートとかも行かんけん」

「ふふっ えっ?そっそれで結婚式の服着てたのっ?」

「そうです~。そんな面白いかなぁ?うちのばあちゃんとか近所の ばーちゃん達なんか、対岸の港町にコンビニが出来た時にも一張羅着て、パーマ屋で髪をセットして行ったレベルやし~」

「ふぁっ⁈マジかっ⁉︎ ふっふふふふふふ………!!」

「マジです。まーそれは置いといてぇ、じーちゃん達が「就職せんで男なら東京行って故郷に錦を飾れ」っち言って~。就職コースからいきなり進学コースやし。しかも大学進学は俺だけ!」

「マジか⁈え?他の人は全員就職っ?」

「そうですよ~。工業科なんか普通そうです。進学っつても専門学校ですよ~」

「そっか~俺、普通科だったからなぁ」

「ふふっ それでナオくん島の人達からお見送りされたんだよね~っ?」

「そうそう!皆が船で大漁旗振って送ってくれてさぁ~。もぉ、そこまでされたら、俺も男やけん?東京でいっちょ頑張って来るか~っち思ってさ~」

「~~~~っ…ふっ……うんうん!そうだよねぇ~!ナオくん偉いよ!」

「え~?ホントに~?」

「うんうん、偉い偉い。よし、頑張ってるナオくんにジュースでも奢ってあげよっかな~♪」

「え~っホントですか~?良いんですか~っ?」

「うん、もちろん♪ なっ?嵯峨」

「……何が良いんだ?…ジュース」

「えっ?先パイが 奢ってくれるんですかっ⁈」

「ああ…」

「え~~っ!やったぁ~~っ!!」

「……何が良い?」

「え~…っとぉ…ん~…あっ!コーヒー牛乳が良いです!」

「ん。分かった」

「よかったねぇ~♡ナオちゃん♡」

「嵯峨先輩から奢ってもらえて♡♡」

「うん!!」

「よ~し、じゃ、講義中 笑いに耐えた皆には 俺らがジュース奢るわ」

「いいんですか~っ?あざす!長崎先輩!宮崎先輩!」

「いいよ~ジュースだけどな~。つーかよく講義中耐えたな~っ?」

「いや~、マジで修行でしたねーっ!」


そんな感じで、連れ2人が いつの間にか先輩ポジションになっていた。

コイツと一刻も早く縁を切りたいと言うのに。

ああ…よそ行きに一張羅…実際に言ってるヤツ初めて見た…つか、またしてもコイツだけど。

ああ~~~っ!めちゃクソ腹立つ。コイツに。

そんなにペラペラ喋んなよ!お前の話には価値があるんだから!

実際 今の話を聞いて飯を吹き出してるヤツが何人かいるし!

お前の生まれ育った環境も、体験も、人間関係も、工業科とかも…!

お前自身の容姿もキャラも!全て!特殊で、小説書く人間、漫画描く人間、創作する人間にとっては珍しくて、ネタになるし、知識として 知っといて損は無い。

いつか使えるかもしれない。もう頭の中にストーリーを考え始めてる。

俺だけにそれ話せよ!ペラペラ喋んな!良いネタを!!

……ホラ…もう…諦めたハズの小説家を…。

クソ…早く離れねぇと…毎日イライラする。読書に身が入らない。

他人の書いた話より、脳内で自分の考えたストーリーが流れてて止まらなくなってる。

これはマズイ。あの頃に逆戻りしたく無い。絶対に。

そして、更に俺らへのBL目線がクソ ウザい。またBL人口増えてる。

それに唯一気付いて無いの誰かって?
当の本人。アイツだけだ。

元凶のくせに…のびのび楽しくしやがって…クソ…。


(別の日)

今日は唯一の「安息日」とも言える。例の教授のおかげでアイツと昼の時間がズレる。と、思っていたのに。

俺は昼飯に行く前に同じ専攻の女子に呼び止められた。1人は同じ専攻。後から来た2人の女子は違う専攻で学年も違う?けど、話す前から内容が分かる気がした。

そして、その予感は的中。

あ~あ…とうとう来たか。ま、諦めがついて良かった…と思おう。惜しいとか思わずに。

声をかけて来た女子達は漫研サークルだ。うちの大学の漫研サークルは有名でプロも出してるし、在籍中のメンバーもセミプロというかSNSでフォロワー数も多く、ファンも多いし、コミケでも一目置かれる存在が多いらしい。

同じ情報系の学科だから皆の噂で知っている。

女子達の話を要約すると、アイツの存在が気になる、と。是非ともクラスメイトのよしみでアイツを紹介して欲しい、と。

俺に言えるのは「はい。分かりました」だけだ。

人違いから、棚ぼたのようにアイツが現れたけど、一番上手に活かせる才能と実力と実績ある人達にプレゼントするしかない無能のマヌケ。

そうこうしていると教授の講義が終わったのか

「あれっ⁈先パ~イっ?わぁ~っ今日は遅かったんですかぁ~っ?」

いつもの如く 飛び跳ねるようにやって来た。

これで、引き渡し完了。今日が最後の日になってせいせいする。

アイツらが漫研サークルと話してるので連れ2人と昼飯へ。これでやっと静かで何も無い日常が戻って来る…。

「びっくりした~嵯峨にモテ期来たのかと思った~!笑」

「俺も~!笑」

「ハァ…俺にモテ期が来るように見えるか?」

「ははっ 仲良くしようぜ~♡これからも♪」

「だなぁ~抜け駆けすんなよ~?」


「先パ~イ!ご飯~!」

「⁈⁈」

「あれ?ナオくん。もう話終わったの?」

「いいえ~皆が先パイ達と一緒に食べながら話したいって~」

「え?何で?」

「………」

「あ、嵯峨君達~ 一緒に良いかなぁ~?」

「ふふっ♡ナオくんと嵯峨君との大切な時間を潰したりしないから安心してね~?♡」

「ん?あ、ありがとうございま~す?」

「いいえ~♡♡」

「よかったな~ナオちゃん♪」

「うん!」

「はぁ~~~っっ♡♡♡尊いっっ♡♡♡」


思い出した……!!うちの漫研…BL界隈で超有名人ばっかとか言ってた…⁈まさか…っ⁉︎

気付いた時には、時 既に遅し。

今日で完全終了するハズが、アイツと共に学内の中心に…アイツのセットとしてだけど…。

何でこうなってしまったのか…。

人生本当に何があるか分からないし、上手くいかない事ばかりだ。
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