先パイッ!「ビーエル」って何ですかっ?

AnnA

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第11話 嵯峨先輩の過去④

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翌朝、今度こそ朝一の新幹線に乗ってると思ってた父親がリビングに居て母親と2人でソファーに座り、各々スマホでニュースとかを見ていた様だけど、俺がリビングに入ると2人が少し緊張したのが分かった。

俺が2人が居るのが予想外という顔をしてたんだろうか、父親はぎこちない笑顔で

「あ…っ おはようっ この後どうしても会社に戻らないとなんだけど、久しぶりだから一緒に朝飯食べようと思って…!」

と、たぶん用意していたであろうセリフを言った。

俺は別に朝飯を食べるのが一人でも二人でも変わらないから…あ、今から3人分作るとなると時間が…間に合うけど…と思い

「おはよ。あー 簡単なのしか作らないけど?」と言うと、母親はこっちを向いていたけど目線は下になり

父親は慌てて「あっ いいからっ!昨日パンとか色々買って来たからっ皆で食べようと思って!なっ?」と、ぎこちなくも明るい表情は崩さず母親に話を振った。

母親はコクンと頷いて「ええ…パンとか…何か好きなものがあると…良いけど…」と絞り出す様に言った。

俺はと言うと、パンなら楽だからラッキーと思っただけ。

一緒に食べるって言ったって、同じ場所で 同じ時間に食べるだけだ。

カフェやファミレスで 店内に居る人と空間共有するのと変わらない。

「あ、じゃ パンで」そう言って自分の飲み物を準備してテーブルに着いた。

父母は既にコーヒーを飲んでる様だし、飲みたきゃ自分でするだろ。

俺ら3人が それぞれ一人暮らしと ほぼ同じだから。

昨日買ったパンが入った袋がテーブルにあったので「どれ食べていいの?」と聞くと

父親は「あっ何でも好きなの食べていいよっ好きなの…それ全部でもいいよっ?」と言うし

母親は神妙な面持ちで こっち見て小さく2回頷いて…ずっと見てるし 何なんだろう?

「いや、こんなに食べられ無いよ。2人が食べたいのあったら 先取って?俺は何でもいいから」

そう言うと父母は一瞬 間があったけど、さっきよりもホッとした様子に見えた。

それから3人で 一緒にパンを食べ始めた。父親は「そのパンが好きか?」とか「いつもどのくらい食べてるか」とか聞いてきた。

謎だ。母親は 俺が食べてるパンを見てるけど、俺が質問に対して「別に好きなわけじゃないけど」と返すと見るの止めるし…

一体何?と思ったけど、どうでもいい事だから そのままスルーして朝食を済ませ「じゃ準備して学校行くから」とその場を離れた。

今思えば、今更ながら関係構築しようと思ってたかもしれないし、あんな風な態度で父母の事もあんな言い方したから、俺が2人の事を恨んでるとか不満に思ってるとか考えてて 俺が2人に対して攻撃性が有るか無いかをチェックしてたかもしれないし。

真相は謎だ。でも俺にとっては どうでもいい事だからスルーしていた。

学校では教師達が俺の無実を証明し動画を削除するように 全校に通達したし、急遽保健の授業を組み込んで 予定外の性教育してるしだ。

正直言ってあんま意味無いと思う。

遊ぶ奴は遊ぶし、品行方正な人は 品行方正だ。

性格や考え方、行動まで 授業ごときで変わるはず無い。

まぁ、気になってた人は 病院で検査受けたかもな。

それが多方面に 配慮に配慮を重ねた結果だったんだろう。「あのクソ女達と寝た奴病院行け」とは言えないか。

中3の秋でもうすぐ受験シーズンだから学校側も大変そうだった。

ちなみにクソ女達は不登校になった。この先どうするか知らねぇし どうでもいい。俺に関わらないのであれば、と思ってたのに…。

クソ女達はスマホを親から取り上げられる前に、最後の足掻きとして 俺を含め自分をコケにしたと思ってる人間達の情報を拡散させた。

俺に関しては全て嘘。俺がお前らなんかに手ェ出すハズねェだろっ!!教師達が保護者に連絡を取り削除依頼をしたが 拡散してしまったら、もう無駄だ。

俺を含め複数人がネットで晒され炎上した。例のクソ女達の本命達もだ。

そいつらは高校生だったから 停学とか退学とかの処分もあるし大変だっただろうな。

ご丁寧に全員顔付きで晒しやがって…動画もあったから声もだ。

イラついたけど、内申点には響かないし、受験予定の高校にも 誤情報であると連絡してくれると言うので それで我慢した。

クソ女達の保護者が謝りにも来た。あの時の俺を見て、訴えられたら大変と思ったのかもしれない。

俺の受験先に事情を説明しますから!とまで言ったので、これ以上は諦めるしかしょうがない。

チクショー…。完璧に潰せたと思ったのに…!あんなクソ女達に負けるとは…!

あのクソ女達が俺に対して流した嘘の情報は、小説のために手を出されて遊ばれたとか、妊娠させられて 責任を一切取らなかったクズとか、女癖が最悪とかそんな類のだけど

一番腹たったのが 俺がエロ小説書いてる変態だと言った事だ。

「官能小説」という言葉は 知らなかったんだろうが、そこだけは絶対に許しちゃおかねぇ…。と思うが、もう拡散されててどうしようも無い。

同じ学内の人間は、クソ女達の嘘であり俺は無実の被害者だと分かっているが エロ小説書いてるキモい人間というのは消えず。

周囲の反応を見ると エロとかに関係無く小説や漫画、創作をする人間はキモくて陰キャで距離を置きたい存在なのだという事が分かった。

へぇー?そうなのか面白い、初めての感覚だ。

今まで図書館や本屋にしか行くこと無かったし、唯一の家庭…お宅訪問的な事をしたのは祖父母宅だから、皆 本とか漫画が好きで それを創るのに携わってる人間にも好意的なんだと思っていたから、新しい発見だった。

別にそれならそれで問題無い、人間好みは様々だし考え方も様々だから面白いと思うし。

正直ネタのために、慣れない人間関係でストレスだったから リセットするのに丁度良かった。

頻繁にチェックを強要されるSNSも全て止められるし、創作の時間も増えるし、自分を嫌う人間と無理に一緒にいる必要も無い。

元の環境に戻れて良かった。自分の興味がある・知りたいと思った事以外は基本どうでもいい。情報も不要な物はシャットアウトしてるし。

しかし、周囲の人間達の考え方は違ったようで、学内の生徒、近隣の学校の生徒、SNSでは俺がエロ小説書いてる変態で、ド陰キャで、キモくて、関わると危ない人間になっていた。

そして、トップ集団と絡んでいたのに最底辺になった転落者と思われていたらしい。

俺は全くもって どうでも良かった。俺の価値観とは違うから。

…唯一つ、この結果になったのは自分がクソ女達への対応が不十分だったから、自分の詰めの甘さ的なのにムカついていただけだ。

後は 手の平返してくる連中と世間一般の考え方と反応をネタに使えるな、と他人事のように思ってた。

俺自身は それで何とも思って無いのに、これまた予想外は両親だった。

SNSをしているらしく、俺の事が炎上して拡散されているのを見て 各々思う所があったらしい。

後は実家の近所の人達もだ。近所の人達の気持ちなら分かる。近所に性犯罪しそうなヤバい変態が住んで居るのは 嫌だろうし怖かろう。

俺は近所の人とほぼ関わり無いから、俺が実際はどんな人間なのか知らないし、母親の事だって知らないし、父親なんて存在自体知らないレベルだろう。

両親の事も知らないから、ちゃんと世間一般の躾をしてるか?とか善悪の倫理観とか大丈夫か?とか分からないんだから、近所の人の恐怖は分かる。

そりゃそうだ。危害を加えられたら堪らないと考える方が正しい。

よくニュースで 事件が起きた時の知人へのインタビューの様に「あの子はそんな事する子じゃない」とか「よく挨拶して優しくて礼儀正しくて」とか そんな事を近所の人が言う程 関わって無いから。

そこは理解出来るとして…ホントにうちの両親はどうなってんだろう。

俺が100%無罪の被害者だって分かってて…コレだ。怯えまくってる。

世間の目が気になるのかな?仕事でマイナスイメージになるから?と考えたけど、俺の顔は どっちにも似てないし顔だけで息子と特定されないだろう。

しかも職場で俺の写真とか同僚に見せて無いだろうし、子供がいるという事しか職場の人達は知らないだろう。

だって、俺の写真は保育園の先生達が記録用に撮ったものが ほぼ全てだ。

一番最後にアルバムに入れた写真は小学校の入学式だと思う。父母は仕事一筋だし、レジャーにも行かないし。

だから職場で 俺の写真を見せる事なんて無いんだから、適当に赤の他人の振りして流しとけば分からないのに。

こんなに怯えるというか…気を遣うような…何なんだろう?

父親からは 定期的にメッセージが来るようになったけど、内容はほとんど赤の他人…というか俺の事 何も知らないからこんなもんか?

とりあえず受験だから、勉強はどうか?風邪引かないように、食べたい物とかないか?的な感じのを 毎回送って来る。

微妙な日本語…ビジネスと家族関係の中間の様な…同僚の子か遠い親戚の子にでもメッセージを送っている様な…

俺は文章を書く側なので、その微妙な日本語が気になってた。

母親の方は、近所の人達の反応に参ってるのかな?と思うけど ほぼ会わないだろうし…やっぱ俺に対して何かありそうだな?とは感じた。

でも どうでもいいしスルーしていた。
同じ家で 各々一人暮らししてるのと同じだし。お互い必要以上に干渉しない。

正月に父親が帰って来て、いつも以上に声をかけて来るけど、当たり障り無い事ばかり。

きっと 一番聞きたいであろう、学校はどうか?いじめはまだ続いてるのか?他校からも色々されてるらしいな?大丈夫か?と担任が報告している内容には触れて来ない。

まぁ、両親の反応を見るに 表面上保護者をしているだけだ。

それを聞いて、俺がいじめが辛いとか助けて欲しいとか言ったらどうしようか…立場上何とかしないと…?と思ってるのが薄々分かる気がした。

なるほどな?それが この態度の理由かな?と分かれば話が早い。どう言っとけば 元通り収まるか分かるから。

俺がそう予想して返事した内容で 正解だったのかは分からないけど、両親の表情は 幾分良くなった気がした。

そこまでしたら 俺も一人になりたいから受験勉強があると部屋に籠った。

別に勉強しなくても大丈夫なレベルだけど、当たり障り無く部屋に籠るのに この上ない言い訳だ。

正月休みの間中、両親は何か話している様子で珍しい事だ。いつもはそんなに話もしないのに。

その時もきっと 俺の今後を話していたんだと思う。
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