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第31話 2人の夏休み⑧
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俺がマイペースに家で過ごしている頃、喫茶店に残してきた連中は 店を変えて会議②をしていたなんて、全く知らなかった。
「嵯峨があんなに喋るとか…思ってなかったなぁ…」
「ホントにそれ!」
「嵯峨先輩いつも喋らないけど、よく見てますねぇ」
「ホントなぁ~!ビックリした!」
「ビックリしたって…先輩達でもですか?」
「うん!嵯峨いつも ほぼ何も言わないし」
「酒が入っても?」
「…俺ら飲みに行ったりとかしないんだよ…5限目終わりとか グループワークで夕飯の時間だったりとかで 一緒に飯行くくらいで」
「酒とか、俺ら嵯峨の誕生日も知らないから二十歳になったかどうかも知らねえし…」
「えっ⁈一年からずっと一緒なんですよねっ?」
「そうなんだけど…全く自分の話しないから…さ?」
「うんうん。ま、俺らも あんまプライベートとか話さないし…けど…嵯峨に関しては 本当に謎というか…」
「ミステリアス…だなアイツ…。神奈川出身とは、初めの時に聞いたけど…」
「ふ~ん?」
「嵯峨君…神奈川なの…?」
「三ヶ尻先輩も神奈川ですか?」
「ううん…!都会生まれでいいなぁって…!」
「先輩、俺ら 一応 東京生まれです~ パッとしないですけど~」
「あっ!そんなこと無いって!その…有名漫画の聖地に行った事あるから、近くて羨ましいな…的な…」
「あ~神奈川はねぇ~」
「…嵯峨君は…スパッと言うというか…もっともだなって…思った…」
「白か黒か…的な感じですけど…一番ナオくんも 私達も見てるなって…思って」
「全体像よく見てるよね…」
「一番 ナオ君のこと考えてたのは 嵯峨君だね…」
「うん。正直驚きだけど…昼しか関わって無いから」
「あいつなぁ、めちゃくちゃ頭が良い…つーか、頭の出来が違うんだよなぁ~」
「そうそう!課題とかグループワークでしか知らないけど、何で この大学来た?もっと上に行けただろ⁈っていつも思う」
「そうなんですかっ?受験失敗したとかっ?」
「分かんねぇんだけどな~。でも、失敗する様な ギリギリの頭の良さじゃ無い…と思う」
「謎っすね~嵯峨先輩…え、素顔は…見た事とかは…?」
「無い。初めて会った時からアレ。話し方も」
「まあ…隠してるって事は 痣とか傷とか…色々見せたく無い理由あるんだろうし?聞いたりはして無いけど」
「そうですよねぇ~。でも、見えてる範囲ではメチャクチャ整ってませんッ⁈スタイルも超良いし 指先まで抜かり無くキレイじゃないですかっ?」
「それなぁ~ッ!だから見たくなるんだけど~~!」
「あそこまでキレイだと、漫画みたいな美形とか思っちゃうんですけどっ!」
「~~~~~っつ!それ以上言わないでぇ~~~っつ!漫研の中では妄想大爆発なんだからぁ~~~っつ!!」
「ここでッ!オタク全開トークしちゃいそうだからぁ~~~っつ!!」
「…あ…漫研は、やっぱ そう思ってたんですか…」
「嵯峨君が入学して来た時から 部をあげて追っかけしてたわッ!!」
「へ…っ…?」
「嵯峨君には内緒ねッ⁈妄想しかして無いからッ!!直接 手を触れたりも無いからねッ⁈」
「……はぁ…嵯峨も知らない方が…嬉しいと思うので…」
「……そう…ですね…言いませんから…」
と、初っ端から かなり大脱線したものの……少し今後とかを話し合えた。
知らぬが仏とは、この事である。
俺はいつも通り過ごし、あの一件から2日後。今日は バイトを神戸さんと一緒の時間に終わって
夏休み終盤という事で、背中いっぱい使って 大きな絵を描くそうだ。
長くなりそうだな…と思いながらバイトをし、あと15分程で 終わりと思っていたら、何とアイツが一人で 店にやって来た。
しょんぼりして、張り詰めた…思い詰めた…の方が近いか?
今にも泣き出しそうな…「知らない土地で親と逸れた子供の図」そのものだ。
この前みたいに飛びついて来ないけど…あの連中が何か言ったか…?
明らかに…俺に用がありそう…というか、それしか無いだろうから…
仕方ない…今は「お客」だから…
「どうした?いつもの奴らは?」
「今日は…一人です…内緒で来たので…」
「内緒…?何で?」
「言ったら…皆…一緒行くって…言うから…どこでも…」
「! …そっか…」
「はい…」
「あ~、朝日君だ~ いらっしゃ~い♪嵯峨君に会いに来たの~?♡」
「ホンマや~?朝日君こんにちは~⭐︎もうええの~?熱中症やったん?」
「あっ!店長さん!あ、これッ!先パイッ、この前はッ すみませんでした!仕事中に!皆さんで 良かったら食べて下さいッ!」
「えっ?」
そう言って、アイツは持っていた紙袋を俺に差し出した。
「えっ?いや、こんな事しなくていいから…」
「そうだょ~朝日君~!」
「え、わざわざ買うて来たん~?」
「あ、いえ…その、お土産じゃ無いですけど…。この前 家族がこっち来てて 「いつも お世話になっとる人に配れ」って…」
「あ~…なるほどね~?それで 嵯峨君用っていうか、うちのスタッフにまで~?いいの~?貰っちゃって…」
「はい!大した物じゃ無いですけど、ド定番のお菓子なんですけど」
「あ~!おじさん これ知ってる~!昔ねツーリングで 九州行った時、買った事ある~!ありがとね~美味しいよね~♪」
「え~?紙袋見ただけで分かるんですか~?店長~」
「え…これ本当に貰っていいの?」
「はい!どうぞ!」
「ありがと…悪いな…なんか…バイト先とかサークルには もう配った?」
「はい」
「じゃ、遠慮なく…」
「あはは~嵯峨君の方が しっかりしてたなぁ~!おじさん懐かしくて飛びついちゃったよ~♪包装紙とか箱とか昔のままなの~?」
「はい!変わらずです!」
「ホント~ あ、じゃあ神戸君とか好きかもよ~?」
「え?何かデザイン面白いんです~っ?」
「それは見てのお楽しみだねぇ~♪もう、バイト終わるし、嵯峨君 折角 頂いたから、休憩室に入って朝日君に お茶出してあげて~?」
「えっ!」
「店長でも…まだ15分あるので…」
「いいから いいから~懐かしいお菓子頂いて嬉し~し、この前は体調悪くて、嵯峨君と話せ無かったでしょ~?」
「あ…店長さん…!でも…バイト中なので…」
「店長も ええって言うてはるし、嵯峨君と話してき~?その後 噂の包装紙とか見させてもらいます~♪もちろんお菓子も頂きます~♪…それにぃ~ゴメンやけどぉ、今日は これから嵯峨君と約束してんねん♡せやから、この後 嵯峨君独占させてもらいます~♡」
「あ…そうなんですか…」
「…神戸さん…言い方…」
「はっはっはっはっ!神戸君~」
「ふふふっ♪僕ら…実は裸の付き合いやねん♡」
「……」
「あ~温泉ですか~?」
「へっ?」
「あ、こっちは温泉じゃ無くて銭湯か…沸かし湯の」
…さすがだな。この言い方で 瞬時に温泉とか銭湯とか出るか…コイツは…保健の教育した先生が良いのか…純粋培養出来る島の環境と家族の影響か…
島育ちって分かってるけど…隣にハイジとペーターとかが住んでたんじゃないだろうか?
こりゃ漫研も渋るのが分かるかも…R18は、なぁ…。
「はははっ 朝日君の地元なら、そうだもんね~♪温泉とか よく行くんでしょ~?」
「はい。皆 車に風呂のセット置いてます」
「えっ?ホンマ?温泉そんな行くん?」
「どっか行った帰りに入ったりです。普通の銭湯も温泉とかなので」
「え?マジ?」
「ホンマっ?」
「はい、地元じゃ普通です。市によりますけど」
「そうなんだよね~おじさんも 九州じゃ温泉三昧したよ~!あ、ゴメンね~ベラベラ話しちゃって~」
そう言って、店長も神戸さんも「早く話を聞いてあげな?」って表情なので…仕方ない…。
「じゃ、スタッフルームこっちだから…」
「あ…いいんですか…?すみません…」
本当に…どうしてこんな事になったのか…全く来るとか予想して無かった…。
けど…コイツは…連れ2人とか…あの時のメンバーが忠告したから、ここに来た…?
詫び入れに?いや…でもさっき、内緒で来た的な事 言ってたしな…?
俺はスタッフルームのドアを開け、冷房をつけた。使用時以外は節電中だからな。
貰った菓子を紙袋ごとテーブルに置き、一応 来客用に準備している 飲み物が冷蔵庫に数本ある。
夏の時期は冷たいのだけだけど…カフェオレ無いんだよな…コーヒーは無糖と微糖しか。あとは お茶系の無糖だけど。
「コーヒーは微糖でも苦い?お茶にする?」
「あ…大丈夫です…もう帰るんで…」
「…水分は摂ってた方がいいぞ。この前みたいに熱中症みたいになるから…ペットボトルだから 持って帰ったらいいし。…熱あった…というか家 帰って体温計った?」
「いえ…でも先パイに言われた通り スポーツドリンク飲んで、クーラー入れて寝てたら治りました。ありがとうございました…」
「…いや…あの後、九州の気温見たけど…本当に九州と沖縄の方が涼しかったから驚いた。クーラーも要らないくらいなんてさ」
「!!先パイッ…調べてくれたんですかッ⁈」
「あー…まぁ…気になったから…真夏にクーラー要らないとかさ、信じられないから…東京では。北海道とかなら分かるけど…南の方だからな」
「風が吹けば、家の中は 昼間で27度くらいです。夜は24、25度くらい…東京来て 一日クーラー生活に慣れんというか 疲れが取れないというか、怠いしキツくて…しかも外は風も無いし、サウナみたいで…どうかなりそうで…!」
「そっか…そんなに涼しいのか…。それは、そんな環境から来たんじゃ、東京に順応出来ないよな、初めての夏では」
「はい…。家族も、どうかなりそうって…窓は開けられんし、そもそもアパートの窓 開けた所で 見えるのは道路と近所の家だけだし…。島じゃ無い友達も 東京の暑さは信じられないって…」
面倒事に首を突っ込みたく無いし、ここで飲み物渡して、神戸さんと約束あるから…で さっさと帰したいのは、やまやまだけど…明らかにおかしい。
方言どうした?ほぼ出てなくないか?
どこか言葉を選んでいる様な…やっぱ この前のメンバーから何か言われた…?
やっぱ…この菓子は詫び入れ?
本人は…もう いっぱい いっぱいで…泣きそうな感じだし…思い詰めてる感じが…。海水浴の件か…?
「そっか…。あの、今日は 一人なのは…さっき皆に内緒で来た的な事…言ってたけど…何かあったのか…?」
「あっ…えっと…っつ…先パ~イィ…!」
「へ…っ?」
アイツは…いつも通り…いや、いつもとは比べられないくらい威力を落として飛びついて…じゃ無いな…子供みたいにしがみついて来て…俺の胸に顔を埋めてる…オイ…ッ!
でもやっぱ これでハッキリした。
この前の喫茶店に居た連中からは 何も忠告無しというか…一切コンタクト無し…だな?
俺が大きく鼻から息を吐くと、溜息と思ったのか…実際、鼻から溜息吐いた…のと同じだけど…。
アイツは今までに無い反応…ピクッと…いや、ビクッに近いかな?
…やっぱ…海での帰りに言われた事 気にしてんのか…?
大いに気にして欲しいし、今後一切しないで欲しいが…どうしたもんか…コレ…。
「嵯峨があんなに喋るとか…思ってなかったなぁ…」
「ホントにそれ!」
「嵯峨先輩いつも喋らないけど、よく見てますねぇ」
「ホントなぁ~!ビックリした!」
「ビックリしたって…先輩達でもですか?」
「うん!嵯峨いつも ほぼ何も言わないし」
「酒が入っても?」
「…俺ら飲みに行ったりとかしないんだよ…5限目終わりとか グループワークで夕飯の時間だったりとかで 一緒に飯行くくらいで」
「酒とか、俺ら嵯峨の誕生日も知らないから二十歳になったかどうかも知らねえし…」
「えっ⁈一年からずっと一緒なんですよねっ?」
「そうなんだけど…全く自分の話しないから…さ?」
「うんうん。ま、俺らも あんまプライベートとか話さないし…けど…嵯峨に関しては 本当に謎というか…」
「ミステリアス…だなアイツ…。神奈川出身とは、初めの時に聞いたけど…」
「ふ~ん?」
「嵯峨君…神奈川なの…?」
「三ヶ尻先輩も神奈川ですか?」
「ううん…!都会生まれでいいなぁって…!」
「先輩、俺ら 一応 東京生まれです~ パッとしないですけど~」
「あっ!そんなこと無いって!その…有名漫画の聖地に行った事あるから、近くて羨ましいな…的な…」
「あ~神奈川はねぇ~」
「…嵯峨君は…スパッと言うというか…もっともだなって…思った…」
「白か黒か…的な感じですけど…一番ナオくんも 私達も見てるなって…思って」
「全体像よく見てるよね…」
「一番 ナオ君のこと考えてたのは 嵯峨君だね…」
「うん。正直驚きだけど…昼しか関わって無いから」
「あいつなぁ、めちゃくちゃ頭が良い…つーか、頭の出来が違うんだよなぁ~」
「そうそう!課題とかグループワークでしか知らないけど、何で この大学来た?もっと上に行けただろ⁈っていつも思う」
「そうなんですかっ?受験失敗したとかっ?」
「分かんねぇんだけどな~。でも、失敗する様な ギリギリの頭の良さじゃ無い…と思う」
「謎っすね~嵯峨先輩…え、素顔は…見た事とかは…?」
「無い。初めて会った時からアレ。話し方も」
「まあ…隠してるって事は 痣とか傷とか…色々見せたく無い理由あるんだろうし?聞いたりはして無いけど」
「そうですよねぇ~。でも、見えてる範囲ではメチャクチャ整ってませんッ⁈スタイルも超良いし 指先まで抜かり無くキレイじゃないですかっ?」
「それなぁ~ッ!だから見たくなるんだけど~~!」
「あそこまでキレイだと、漫画みたいな美形とか思っちゃうんですけどっ!」
「~~~~~っつ!それ以上言わないでぇ~~~っつ!漫研の中では妄想大爆発なんだからぁ~~~っつ!!」
「ここでッ!オタク全開トークしちゃいそうだからぁ~~~っつ!!」
「…あ…漫研は、やっぱ そう思ってたんですか…」
「嵯峨君が入学して来た時から 部をあげて追っかけしてたわッ!!」
「へ…っ…?」
「嵯峨君には内緒ねッ⁈妄想しかして無いからッ!!直接 手を触れたりも無いからねッ⁈」
「……はぁ…嵯峨も知らない方が…嬉しいと思うので…」
「……そう…ですね…言いませんから…」
と、初っ端から かなり大脱線したものの……少し今後とかを話し合えた。
知らぬが仏とは、この事である。
俺はいつも通り過ごし、あの一件から2日後。今日は バイトを神戸さんと一緒の時間に終わって
夏休み終盤という事で、背中いっぱい使って 大きな絵を描くそうだ。
長くなりそうだな…と思いながらバイトをし、あと15分程で 終わりと思っていたら、何とアイツが一人で 店にやって来た。
しょんぼりして、張り詰めた…思い詰めた…の方が近いか?
今にも泣き出しそうな…「知らない土地で親と逸れた子供の図」そのものだ。
この前みたいに飛びついて来ないけど…あの連中が何か言ったか…?
明らかに…俺に用がありそう…というか、それしか無いだろうから…
仕方ない…今は「お客」だから…
「どうした?いつもの奴らは?」
「今日は…一人です…内緒で来たので…」
「内緒…?何で?」
「言ったら…皆…一緒行くって…言うから…どこでも…」
「! …そっか…」
「はい…」
「あ~、朝日君だ~ いらっしゃ~い♪嵯峨君に会いに来たの~?♡」
「ホンマや~?朝日君こんにちは~⭐︎もうええの~?熱中症やったん?」
「あっ!店長さん!あ、これッ!先パイッ、この前はッ すみませんでした!仕事中に!皆さんで 良かったら食べて下さいッ!」
「えっ?」
そう言って、アイツは持っていた紙袋を俺に差し出した。
「えっ?いや、こんな事しなくていいから…」
「そうだょ~朝日君~!」
「え、わざわざ買うて来たん~?」
「あ、いえ…その、お土産じゃ無いですけど…。この前 家族がこっち来てて 「いつも お世話になっとる人に配れ」って…」
「あ~…なるほどね~?それで 嵯峨君用っていうか、うちのスタッフにまで~?いいの~?貰っちゃって…」
「はい!大した物じゃ無いですけど、ド定番のお菓子なんですけど」
「あ~!おじさん これ知ってる~!昔ねツーリングで 九州行った時、買った事ある~!ありがとね~美味しいよね~♪」
「え~?紙袋見ただけで分かるんですか~?店長~」
「え…これ本当に貰っていいの?」
「はい!どうぞ!」
「ありがと…悪いな…なんか…バイト先とかサークルには もう配った?」
「はい」
「じゃ、遠慮なく…」
「あはは~嵯峨君の方が しっかりしてたなぁ~!おじさん懐かしくて飛びついちゃったよ~♪包装紙とか箱とか昔のままなの~?」
「はい!変わらずです!」
「ホント~ あ、じゃあ神戸君とか好きかもよ~?」
「え?何かデザイン面白いんです~っ?」
「それは見てのお楽しみだねぇ~♪もう、バイト終わるし、嵯峨君 折角 頂いたから、休憩室に入って朝日君に お茶出してあげて~?」
「えっ!」
「店長でも…まだ15分あるので…」
「いいから いいから~懐かしいお菓子頂いて嬉し~し、この前は体調悪くて、嵯峨君と話せ無かったでしょ~?」
「あ…店長さん…!でも…バイト中なので…」
「店長も ええって言うてはるし、嵯峨君と話してき~?その後 噂の包装紙とか見させてもらいます~♪もちろんお菓子も頂きます~♪…それにぃ~ゴメンやけどぉ、今日は これから嵯峨君と約束してんねん♡せやから、この後 嵯峨君独占させてもらいます~♡」
「あ…そうなんですか…」
「…神戸さん…言い方…」
「はっはっはっはっ!神戸君~」
「ふふふっ♪僕ら…実は裸の付き合いやねん♡」
「……」
「あ~温泉ですか~?」
「へっ?」
「あ、こっちは温泉じゃ無くて銭湯か…沸かし湯の」
…さすがだな。この言い方で 瞬時に温泉とか銭湯とか出るか…コイツは…保健の教育した先生が良いのか…純粋培養出来る島の環境と家族の影響か…
島育ちって分かってるけど…隣にハイジとペーターとかが住んでたんじゃないだろうか?
こりゃ漫研も渋るのが分かるかも…R18は、なぁ…。
「はははっ 朝日君の地元なら、そうだもんね~♪温泉とか よく行くんでしょ~?」
「はい。皆 車に風呂のセット置いてます」
「えっ?ホンマ?温泉そんな行くん?」
「どっか行った帰りに入ったりです。普通の銭湯も温泉とかなので」
「え?マジ?」
「ホンマっ?」
「はい、地元じゃ普通です。市によりますけど」
「そうなんだよね~おじさんも 九州じゃ温泉三昧したよ~!あ、ゴメンね~ベラベラ話しちゃって~」
そう言って、店長も神戸さんも「早く話を聞いてあげな?」って表情なので…仕方ない…。
「じゃ、スタッフルームこっちだから…」
「あ…いいんですか…?すみません…」
本当に…どうしてこんな事になったのか…全く来るとか予想して無かった…。
けど…コイツは…連れ2人とか…あの時のメンバーが忠告したから、ここに来た…?
詫び入れに?いや…でもさっき、内緒で来た的な事 言ってたしな…?
俺はスタッフルームのドアを開け、冷房をつけた。使用時以外は節電中だからな。
貰った菓子を紙袋ごとテーブルに置き、一応 来客用に準備している 飲み物が冷蔵庫に数本ある。
夏の時期は冷たいのだけだけど…カフェオレ無いんだよな…コーヒーは無糖と微糖しか。あとは お茶系の無糖だけど。
「コーヒーは微糖でも苦い?お茶にする?」
「あ…大丈夫です…もう帰るんで…」
「…水分は摂ってた方がいいぞ。この前みたいに熱中症みたいになるから…ペットボトルだから 持って帰ったらいいし。…熱あった…というか家 帰って体温計った?」
「いえ…でも先パイに言われた通り スポーツドリンク飲んで、クーラー入れて寝てたら治りました。ありがとうございました…」
「…いや…あの後、九州の気温見たけど…本当に九州と沖縄の方が涼しかったから驚いた。クーラーも要らないくらいなんてさ」
「!!先パイッ…調べてくれたんですかッ⁈」
「あー…まぁ…気になったから…真夏にクーラー要らないとかさ、信じられないから…東京では。北海道とかなら分かるけど…南の方だからな」
「風が吹けば、家の中は 昼間で27度くらいです。夜は24、25度くらい…東京来て 一日クーラー生活に慣れんというか 疲れが取れないというか、怠いしキツくて…しかも外は風も無いし、サウナみたいで…どうかなりそうで…!」
「そっか…そんなに涼しいのか…。それは、そんな環境から来たんじゃ、東京に順応出来ないよな、初めての夏では」
「はい…。家族も、どうかなりそうって…窓は開けられんし、そもそもアパートの窓 開けた所で 見えるのは道路と近所の家だけだし…。島じゃ無い友達も 東京の暑さは信じられないって…」
面倒事に首を突っ込みたく無いし、ここで飲み物渡して、神戸さんと約束あるから…で さっさと帰したいのは、やまやまだけど…明らかにおかしい。
方言どうした?ほぼ出てなくないか?
どこか言葉を選んでいる様な…やっぱ この前のメンバーから何か言われた…?
やっぱ…この菓子は詫び入れ?
本人は…もう いっぱい いっぱいで…泣きそうな感じだし…思い詰めてる感じが…。海水浴の件か…?
「そっか…。あの、今日は 一人なのは…さっき皆に内緒で来た的な事…言ってたけど…何かあったのか…?」
「あっ…えっと…っつ…先パ~イィ…!」
「へ…っ?」
アイツは…いつも通り…いや、いつもとは比べられないくらい威力を落として飛びついて…じゃ無いな…子供みたいにしがみついて来て…俺の胸に顔を埋めてる…オイ…ッ!
でもやっぱ これでハッキリした。
この前の喫茶店に居た連中からは 何も忠告無しというか…一切コンタクト無し…だな?
俺が大きく鼻から息を吐くと、溜息と思ったのか…実際、鼻から溜息吐いた…のと同じだけど…。
アイツは今までに無い反応…ピクッと…いや、ビクッに近いかな?
…やっぱ…海での帰りに言われた事 気にしてんのか…?
大いに気にして欲しいし、今後一切しないで欲しいが…どうしたもんか…コレ…。
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