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第1怪:戦艦亀
怪獣捜索
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刹亜ら三人は部屋を出て、先に決めた通路を一つ一つ確認していく。
おおよそ調べ終わったところで、宗吾が御園生に尋ねた。
「ところで御園生さん。自由時間は鏑木さんと一緒に部屋から出てたみたいだけど、何の話をしてたの?」
三村が殺されてから沈鬱な表情を浮かべていた御園生。元々怪獣化の影響で精神が不安定だったこともあり、仲間の死は彼女のメンタルに強く響いたのだろう。
しかし今はチームの命を預かる立場になったこともあり、比較的冷静さを取り戻しているように見えた。
「大した話はしてないですよ。僕が怪獣化後もしっかり理性を保てているか、今どんな状態か確認されただけです」
「それって、わざわざ部屋から出て話す内容か?」
刹亜が疑わし気に聞く。御園生は「さあ」と他人事のように答えた。
「鏑木さんには何か意図があったのかもしれません。彼自身ここまでの行軍でかなり疲弊していたようなので、単に部屋から出て落ち着きたかったのかも。その護衛というか、言い訳に僕を誘ったのかもしれませんね」
「因みに、その間はずっと二人一緒だったんですよね。どちらかが一時的に単独行動したりとかは一切なく」
「ないですね。あればとっくに話してます」
彼女の端的な言葉に嘘の気配はない。
何か考え事をする宗吾を横目で見ていると、急に御園生が立ち止まった。
「怪獣です。二人は下がってください」
戦艦亀の体内に入って何度目の遭遇か。どうやら住み着いているらしい二足狐が二体、正面から姿を見せていた。
御園生は覚悟を決めるように深く呼吸をすると、「篝猫」と呟き、体を怪獣化させた。
背中に青白い炎の玉が灯る。
数秒の睨み合いの後、二体の二足狐が同時に突っ込んでくる。御園生はそのスピードをしっかり捉え、素早く青い炎の玉を射出した。
炎の玉の速さは二足狐よりも遅く、目前まで引き付けてからそれぞれ左右に飛んでかわされる。だが、二足狐が横に飛ぶのと同時に炎の玉が炸裂。炎の矢となって二足狐を貫いた。
矢の刺さったところはすぐに灰化し黒っぽい穴を作る。全身に穴をあけられた二足狐は、悲鳴一つ上げることなくその場で息絶えた。
「……ふう。もう、大丈夫です」
先の怪獣化でコツをつかんだからか、それとも怪獣化の時間が短かったからか、後遺症なく元の姿に戻る。その鮮やかな手際に、刹亜は思わず拍手していた。
「凄いなお前。完全にその力コントロールしてんじゃねえか」
「こんなのまだまだです。弱い怪獣は倒せても、大怪獣を倒すにはまるで力不足。もっと、もっと強くならないと」
「相変わらず生真面目だな。そこまで頑張る必要あんのかねえ」
「……折原さん?」
今ようやく、御園生は折原のことを認識したように名前を呼んだ。
よくよく考えてみれば、刹亜と御園生が直接話すのは面接の日以来初。刹亜の方は宗吾から聞いて思い出していたが、彼女が忘れていても何もおかしくない。
そのことに思い至った刹亜は忍び笑いを漏らした。
「ああ。久しぶりだな。今更だけど無事に隊員になれておめでとう。どうだ特務隊は」
「まだ、分かりません。でも、ここに入ったおかげで僕は怪獣と戦う力を得られました」
「だな。今日がっつり見せてもらったよ」
「……あの、前の質問に答えてもらってもいいですか」
「あ? なんか質問受けてたか?」
「特務隊を腐った組織だというあなたが、どうして特務隊に入隊したのかです」
「ああそんなことか。そりゃあ……って、宗吾は何してんだ?」
いつの間にか隣にいたはずの宗吾が二足狐の死体のそばに腰を下ろしていた。どこから持ってきたのか手には注射器があり、それで二足狐の血を吸いだしている。
二人は会話を止め宗吾のそばに近寄る。
宗吾は無言で血をためた注射器を床――もとい戦艦亀の肉壁に突き刺した。そして勢いよく血を注入する。
「うお」
肉壁に注入された直後、血は勢いよく反発し刹亜の顔に向け跳ね返ってきた。
それを見て再度思案し始める宗吾。
危うく血が口に入りかけた刹亜は抗議の視線を向けた。
「何やってんだお前。怪獣と怪獣の血が反発する話はさっき天木から受けただろ」
「……そうだね。でももしかしたらと思って」
「この肉壁の中に怪獣が潜んでる可能性でも考えたのか? そりゃ流石に無理があんだろ。つうかできても食い破るとか切り裂いて掘り進めるとかになるだろうし、めっちゃ痕跡残るんじゃねえか」
「でも血のない怪獣とか、幽体型の怪獣なら――」
「まあそう言う怪獣もいたとは思うが、もしそんなのいたらとっくに俺たち全滅してるだろ」
「……そう。そうなんだよね。そんな都合のいい怪獣がいたのだとすれば、やっぱり僕らを殺さない理由がない。三村さんを殺した怪獣は、彼しか殺せない理由があった。そう言う能力だった……」
「おーい。……ああ、こりゃ駄目だ。ちょっと放置して二人で捜索するか」
「いや、そう言うわけには」
「大丈夫だろ。俺たちの捜索範囲そろそろ終わりだし。一分せずにここに戻ってこれるから」
刹亜はそう言いつつ、白マフラーをさりげなく宗吾の肩に乗せる。
その行動に不審な視線を送る御園生を無視し、刹亜は奥へと歩き始める。
御園生は数瞬悩んだ末、刹亜の後を追いかけた。
二人は早歩きで通路を進む。
「あのマフラー、大事なものじゃないんですか?」
「ああ、めっちゃ大事だぜ。俺の守護神みたいなものだし」
「あんまり加護とか信じるタイプには見えないですけど……。そんな大切なものをどうして急に?」
「そりゃ少しの時間とはいえ一人にさせちまうからな。念のためだ」
「はあ……」
そんな話をしているうちに、捜索範囲を全て調べ終える。
見回した限りでは、どこにも怪獣は見当たらなかった。
二人は踵を返し、元来た道を戻り始める。
「さっきの二足狐以外、特に怪獣はいなかったな」
「そうですね。やっぱり北條の言うような怪獣なんていないんじゃないですか」
「ただそうすっと、俺たちの中に裏切り者がいることになんのか」
「それは……」
言葉に窮し、御園生は口を噤む。
刹亜もそれ以上話そうとはせず、二人は黙したまま宗吾の元に戻った。
幸いにも宗吾は無事だった。変わらず二足狐の隣にしゃがみ込んでおり、じっと肉壁を見つめている。
状況に対してやや危機感の欠ける姿に、刹亜は苦笑混じりのため息を吐いた。
「おーい宗吾。いつまでぼけっとしてんだ。そろそろシャキッとしねえと流石に死ぬぞ」
「……そうだね、急いで戻ろう。かなり不味い事態になってるかもしれない」
微妙にかみ合わない返答。
駄目だこりゃと両手を広げて見せる刹亜に、御園生も困惑した表情を返す。
一方の宗吾は白マフラーを刹亜に返すと、駆け足で部屋へと戻り始めた。
よく分からないながらも、刹亜と御園生も宗吾に続く。
帰り道は怪獣との遭遇は一切なく、部屋の前までたどり着いた。
部屋の前には一倉が銃を構えて立っていた。彼は宗吾らが戻ってきたことに気付くと、銃を下し焦った様子で駆け寄ってきた。
「お前ら無事だったのか!」
その一言から何か悪いことが起きたのが嫌でも伝わる。
一倉とは対照的に、異常なまでに冷静さを保っている宗吾が、「誰が殺されましたか」と尋ねた。
あまりにも直球な問いかけに一倉は驚いた表情を浮かべるも、すぐに首肯した。
「鏑木と、北條だ」
「成る程……。鏑木さんはあなたと水瀬さんと一緒に行動していたはずですよね。なぜ彼だけ殺されたんですか?」
苦々し気に顔を歪めながら、一倉は「分からん」と呟いた。
「俺、水瀬、鏑木の順に動いていたんだ。捜索を開始してから数分したとき、何か倒れる音がして振り返ったら――鏑木が眉間に小さな穴を開け、壁にもたれて死んでいた……。油断は、していなかったはずなんだ。神経を研ぎ澄まし、どんな音も聞き逃すまいとしていたのに……」
「犯人は優れた聴覚を持つあなたの耳をやり過ごし、悲鳴を上げさせる間もなく一瞬で殺したと」
「ああ……。俺自身信じられないが」
「それで北條さんについては?」
一倉の後悔になどまるで興味がないと言った様子で宗吾は続きを促す。一倉はその態度にむっとするも、大人しく北條の最期について語りだした。
「北條に関しては、俺はその場にいなかったからな。あくまで心木から聞いた話だ。捜索を始めてからほどなく複数の二足狐に襲われたらしい。北條は勇んで二足狐に挑み、角を曲がって心木の視界からいなくなった。心木は戦闘に巻き込まれないよう待機していたが、いつまで経っても北條が戻ってこない。自分を置いて先に行ったのかと角を曲がり様子を見たところ――床に突っ伏して死んでいる北條の姿があったらしい」
「死因は何だったんですか?」
「三村や鏑木と同じだ。頭に小さな穴が開いていた。それ以外は特に外傷はない。これは心木に案内させて俺自身確かめに行ったから間違いはない」
殺害方法は全員同じ。近くに人がいてもお構いなしで、無音で殺しては去っていく。そしてどういうわけか、まとめて殺すのではなく一部の人間だけが殺される。
やはり人がやったとも怪獣がやったとも思えない不可思議な犯行。北條が言っていた殺すのにエネルギーをためる必要のある怪獣という説も、別々の場所で二人が殺されたために実質否定されてしまった。
四人は通路に立ったまましばらく沈黙していたが、ふと宗吾は顔を上げると、真剣な面持ちで扉を開け部屋の中に入っていった。
これまでの彼とはかなり異なる雰囲気に、一倉が「何があったんだ」という目で刹亜と御園生を見てくる。
勿論何が起きたのか理解していない二人は、黙って首を横に振った。
おおよそ調べ終わったところで、宗吾が御園生に尋ねた。
「ところで御園生さん。自由時間は鏑木さんと一緒に部屋から出てたみたいだけど、何の話をしてたの?」
三村が殺されてから沈鬱な表情を浮かべていた御園生。元々怪獣化の影響で精神が不安定だったこともあり、仲間の死は彼女のメンタルに強く響いたのだろう。
しかし今はチームの命を預かる立場になったこともあり、比較的冷静さを取り戻しているように見えた。
「大した話はしてないですよ。僕が怪獣化後もしっかり理性を保てているか、今どんな状態か確認されただけです」
「それって、わざわざ部屋から出て話す内容か?」
刹亜が疑わし気に聞く。御園生は「さあ」と他人事のように答えた。
「鏑木さんには何か意図があったのかもしれません。彼自身ここまでの行軍でかなり疲弊していたようなので、単に部屋から出て落ち着きたかったのかも。その護衛というか、言い訳に僕を誘ったのかもしれませんね」
「因みに、その間はずっと二人一緒だったんですよね。どちらかが一時的に単独行動したりとかは一切なく」
「ないですね。あればとっくに話してます」
彼女の端的な言葉に嘘の気配はない。
何か考え事をする宗吾を横目で見ていると、急に御園生が立ち止まった。
「怪獣です。二人は下がってください」
戦艦亀の体内に入って何度目の遭遇か。どうやら住み着いているらしい二足狐が二体、正面から姿を見せていた。
御園生は覚悟を決めるように深く呼吸をすると、「篝猫」と呟き、体を怪獣化させた。
背中に青白い炎の玉が灯る。
数秒の睨み合いの後、二体の二足狐が同時に突っ込んでくる。御園生はそのスピードをしっかり捉え、素早く青い炎の玉を射出した。
炎の玉の速さは二足狐よりも遅く、目前まで引き付けてからそれぞれ左右に飛んでかわされる。だが、二足狐が横に飛ぶのと同時に炎の玉が炸裂。炎の矢となって二足狐を貫いた。
矢の刺さったところはすぐに灰化し黒っぽい穴を作る。全身に穴をあけられた二足狐は、悲鳴一つ上げることなくその場で息絶えた。
「……ふう。もう、大丈夫です」
先の怪獣化でコツをつかんだからか、それとも怪獣化の時間が短かったからか、後遺症なく元の姿に戻る。その鮮やかな手際に、刹亜は思わず拍手していた。
「凄いなお前。完全にその力コントロールしてんじゃねえか」
「こんなのまだまだです。弱い怪獣は倒せても、大怪獣を倒すにはまるで力不足。もっと、もっと強くならないと」
「相変わらず生真面目だな。そこまで頑張る必要あんのかねえ」
「……折原さん?」
今ようやく、御園生は折原のことを認識したように名前を呼んだ。
よくよく考えてみれば、刹亜と御園生が直接話すのは面接の日以来初。刹亜の方は宗吾から聞いて思い出していたが、彼女が忘れていても何もおかしくない。
そのことに思い至った刹亜は忍び笑いを漏らした。
「ああ。久しぶりだな。今更だけど無事に隊員になれておめでとう。どうだ特務隊は」
「まだ、分かりません。でも、ここに入ったおかげで僕は怪獣と戦う力を得られました」
「だな。今日がっつり見せてもらったよ」
「……あの、前の質問に答えてもらってもいいですか」
「あ? なんか質問受けてたか?」
「特務隊を腐った組織だというあなたが、どうして特務隊に入隊したのかです」
「ああそんなことか。そりゃあ……って、宗吾は何してんだ?」
いつの間にか隣にいたはずの宗吾が二足狐の死体のそばに腰を下ろしていた。どこから持ってきたのか手には注射器があり、それで二足狐の血を吸いだしている。
二人は会話を止め宗吾のそばに近寄る。
宗吾は無言で血をためた注射器を床――もとい戦艦亀の肉壁に突き刺した。そして勢いよく血を注入する。
「うお」
肉壁に注入された直後、血は勢いよく反発し刹亜の顔に向け跳ね返ってきた。
それを見て再度思案し始める宗吾。
危うく血が口に入りかけた刹亜は抗議の視線を向けた。
「何やってんだお前。怪獣と怪獣の血が反発する話はさっき天木から受けただろ」
「……そうだね。でももしかしたらと思って」
「この肉壁の中に怪獣が潜んでる可能性でも考えたのか? そりゃ流石に無理があんだろ。つうかできても食い破るとか切り裂いて掘り進めるとかになるだろうし、めっちゃ痕跡残るんじゃねえか」
「でも血のない怪獣とか、幽体型の怪獣なら――」
「まあそう言う怪獣もいたとは思うが、もしそんなのいたらとっくに俺たち全滅してるだろ」
「……そう。そうなんだよね。そんな都合のいい怪獣がいたのだとすれば、やっぱり僕らを殺さない理由がない。三村さんを殺した怪獣は、彼しか殺せない理由があった。そう言う能力だった……」
「おーい。……ああ、こりゃ駄目だ。ちょっと放置して二人で捜索するか」
「いや、そう言うわけには」
「大丈夫だろ。俺たちの捜索範囲そろそろ終わりだし。一分せずにここに戻ってこれるから」
刹亜はそう言いつつ、白マフラーをさりげなく宗吾の肩に乗せる。
その行動に不審な視線を送る御園生を無視し、刹亜は奥へと歩き始める。
御園生は数瞬悩んだ末、刹亜の後を追いかけた。
二人は早歩きで通路を進む。
「あのマフラー、大事なものじゃないんですか?」
「ああ、めっちゃ大事だぜ。俺の守護神みたいなものだし」
「あんまり加護とか信じるタイプには見えないですけど……。そんな大切なものをどうして急に?」
「そりゃ少しの時間とはいえ一人にさせちまうからな。念のためだ」
「はあ……」
そんな話をしているうちに、捜索範囲を全て調べ終える。
見回した限りでは、どこにも怪獣は見当たらなかった。
二人は踵を返し、元来た道を戻り始める。
「さっきの二足狐以外、特に怪獣はいなかったな」
「そうですね。やっぱり北條の言うような怪獣なんていないんじゃないですか」
「ただそうすっと、俺たちの中に裏切り者がいることになんのか」
「それは……」
言葉に窮し、御園生は口を噤む。
刹亜もそれ以上話そうとはせず、二人は黙したまま宗吾の元に戻った。
幸いにも宗吾は無事だった。変わらず二足狐の隣にしゃがみ込んでおり、じっと肉壁を見つめている。
状況に対してやや危機感の欠ける姿に、刹亜は苦笑混じりのため息を吐いた。
「おーい宗吾。いつまでぼけっとしてんだ。そろそろシャキッとしねえと流石に死ぬぞ」
「……そうだね、急いで戻ろう。かなり不味い事態になってるかもしれない」
微妙にかみ合わない返答。
駄目だこりゃと両手を広げて見せる刹亜に、御園生も困惑した表情を返す。
一方の宗吾は白マフラーを刹亜に返すと、駆け足で部屋へと戻り始めた。
よく分からないながらも、刹亜と御園生も宗吾に続く。
帰り道は怪獣との遭遇は一切なく、部屋の前までたどり着いた。
部屋の前には一倉が銃を構えて立っていた。彼は宗吾らが戻ってきたことに気付くと、銃を下し焦った様子で駆け寄ってきた。
「お前ら無事だったのか!」
その一言から何か悪いことが起きたのが嫌でも伝わる。
一倉とは対照的に、異常なまでに冷静さを保っている宗吾が、「誰が殺されましたか」と尋ねた。
あまりにも直球な問いかけに一倉は驚いた表情を浮かべるも、すぐに首肯した。
「鏑木と、北條だ」
「成る程……。鏑木さんはあなたと水瀬さんと一緒に行動していたはずですよね。なぜ彼だけ殺されたんですか?」
苦々し気に顔を歪めながら、一倉は「分からん」と呟いた。
「俺、水瀬、鏑木の順に動いていたんだ。捜索を開始してから数分したとき、何か倒れる音がして振り返ったら――鏑木が眉間に小さな穴を開け、壁にもたれて死んでいた……。油断は、していなかったはずなんだ。神経を研ぎ澄まし、どんな音も聞き逃すまいとしていたのに……」
「犯人は優れた聴覚を持つあなたの耳をやり過ごし、悲鳴を上げさせる間もなく一瞬で殺したと」
「ああ……。俺自身信じられないが」
「それで北條さんについては?」
一倉の後悔になどまるで興味がないと言った様子で宗吾は続きを促す。一倉はその態度にむっとするも、大人しく北條の最期について語りだした。
「北條に関しては、俺はその場にいなかったからな。あくまで心木から聞いた話だ。捜索を始めてからほどなく複数の二足狐に襲われたらしい。北條は勇んで二足狐に挑み、角を曲がって心木の視界からいなくなった。心木は戦闘に巻き込まれないよう待機していたが、いつまで経っても北條が戻ってこない。自分を置いて先に行ったのかと角を曲がり様子を見たところ――床に突っ伏して死んでいる北條の姿があったらしい」
「死因は何だったんですか?」
「三村や鏑木と同じだ。頭に小さな穴が開いていた。それ以外は特に外傷はない。これは心木に案内させて俺自身確かめに行ったから間違いはない」
殺害方法は全員同じ。近くに人がいてもお構いなしで、無音で殺しては去っていく。そしてどういうわけか、まとめて殺すのではなく一部の人間だけが殺される。
やはり人がやったとも怪獣がやったとも思えない不可思議な犯行。北條が言っていた殺すのにエネルギーをためる必要のある怪獣という説も、別々の場所で二人が殺されたために実質否定されてしまった。
四人は通路に立ったまましばらく沈黙していたが、ふと宗吾は顔を上げると、真剣な面持ちで扉を開け部屋の中に入っていった。
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