優劣

平村藤子

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01.全ての始まり

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 2001年、5月24日の午前4時13分、その赤子は生まれた。富豪の篠宮家の長女、篠宮紗月。両親は父母ともにAA型のランク5の血筋で、突然変異でも起こらない限りAA型で必ず優性にしかならない。先祖代々そうだった。はずなのに。7日後の検査を断ってしまったのが、“全ての始まり”になってしまったのである。


 年に1度まわってくる検査をすべて断っていた。それでも進学をする一年前の検査は必ず受けなければならない。父親も母親も兄も優性ランク5なのだ。紗月も優性ランク5に違いない。篠宮家を知ってる人は皆、そう思っていた。でも、そうはいかなかった。6年前検査を受けず、6年目に初めて知らされた事実。劣性ランク5だったのである。


 紗月は親に縁を切られ、孤児院に入れられた。父親だった人は孤児院の人に「コイツと縁を切った。引き取ってくれ。」とだけ言って、紗月と数十万だけを置いていった。孤児院の職員も篠宮家の事は知っていたため、まさか劣性だとは思わず、勝手に紗月を優性扱いをした。学校も優性校へ通わせた。誰も彼女が劣性だと知らずに。


 優性校とは、優性しか通えない学校。普通の市立小学校は優性も劣性も通える。あまりにも劣性が酷い場合には劣性校へ通うことがおすすめされる。紗月は、篠宮家の子だったから、という理由で優性ランク5扱いで進学先は優性校であった。


 でも不思議なもので。優性の中で育つと、不思議と優性みたく育っていくのである。職員から見ても劣性には見えなかったという。


 紗月の欠けている部分は、コミュニケーション能力が人より低いこと。そして相手に対して心を許すのに異常に時間がかかること。あまり喋らない物静かな子はクラスにも何人かいたため、足りない部分と見られなかったらしい。


 孤児院に入ってから名字も変えた。自分を捨てた篠宮という家が憎くてたまらなかったから。小さい頃に絵本で読んだ不思議の国のアリスが好きでそのことを孤児院の職員に伝えると、「じゃあ、今日からあなたの名字は有栖川ね。今日からあなたは、有栖川紗月よ。」と。クラスのほとんどの人は名字からとって、“アリス”と呼んでいた。下の名前を知っている人はほとんどいなかったらしい。

 中学校に進学した。また優性校。はじめてクラスが一緒になった人とか、転校生ですらも紗月に構うことは無かった。


 バレーボール部にはいった。どうやらセンスはあったらしくすぐに上達し、2年の中体連が終わってからは主将を務めたらしい。地区選抜にも選ばれた。あまり喋れなかったけど、人より努力して、みんなの見えないところでもたくさん努力して。最優秀選手賞を受賞したこともある。最後の中体連は地区大会で準決勝まで進んだが惜しくも敗退。多分一番泣いてたかな。


 3年生だもの。そりゃ受験が待ち受けてるわけで。紗月はずっと考えていた。篠宮家に思い知らせてやろうと…。
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