琥珀の夜鷹_ep1. 星降りの守り人

朝河 れい

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EP1_2章

2章_3 イントレド守将 ファリス・コーエン

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 マルスは兵区においても顔がきくらしく、
門兵も懐かしい顔が来たと、
身内対応で通してくれた。


「ここが将軍の執務室だ。無礼のないようにしろよ。」

ついさっき人に無礼を働いた口が良く言う、
と喉まで出かかったが、カムランは黙って頷いた。

マルスがドアをノックすると、
中から入るように返事があった。

失礼します、と入っていくマルスに続く。

執務室には、
肩辺りまでブロンドの髪がかかった男が座っていた。
柔和な表情の中に芯を感じる、
なんとなく信頼できそうな雰囲気のある男だ。


「公都レフコーシャからはるばる、よく来てくれた。
トライゼン卿に、リード卿だね。
レフコーシャから報告を受けているよ。

私はこのイントレドの守将、
ファリス・コーエンだ。星石鉱の件では世話になる。」

将軍は椅子から立ち上がり、二人に向かって一礼をした。


「本来ならこちらも人を割くべきなのだが、
何分人手不足でね。こちらでも調べはしたが、
赴任して二年の私ではこの地の細部まで目を光らせるのには、
正直言って難儀しているところだった。

今回は申し訳ないが調査をお願いする。
滞在中の部屋と食事については城内で提供できるから、
君たちは調査に専念してほしい。」


イントレドの軍を統括する立場にありながら、
コーエン将軍は実に物腰やわらかく、穏やかな人物だった。


「コーエン将軍、確かに承りました。しかしひとつお願いがあります。」

なんの真似だと言いたげなマルスをよそに、
カムランは言葉を続けた。

「城内施設のご提供の申し出は大変ありがたいことですが、
今回の調査にはおそらく向きません。
城内から星石鉱まで行くには多少時間がかかります。
事はまず星石鉱から起きているはずですから、
今回は星石鉱の宿営地をお借りしたいのです。」


カムランの申し出に、コーエン将軍は少し眉をひそめた。


「それで良いというのであれば、
宿営地を手配するが、いいのかい?
あそこは、言ってしまえば鉱夫達の詰め所だ。
公都暮らしには少しばかり厳しいんじゃないかな。」

コーエン将軍はマルスにちらっと視線を送った。

「私も異論はありません。
多少の不便よりも、手早く解決したい一心であります。」

言っていることと、マルス本人の表情は随分違うようだったが、
コーエン将軍はその意気を買った。

「よろしい。精気ある若者に期待しようじゃないか。
野営地に部屋を用意させるから、そこを拠点に活動してほしい。

食事も野営地の配給になってしまうが、
そこは目を瞑ってくれ。」


事は決まったな、と言って手をパン、パンと鳴らし、
コーエン将軍は二人を送り出ず。
今日くらいは城の客間を使いなさいという将軍の言葉に甘えて、
二人は客間に荷を解いた。
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