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EP1_6章
6章_1 戦勝報告
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夜も深まる星明かりの下、
甲冑の騎士は、
メルヴィア軍を率いて星鏡台地北方の山岳地帯を越え、
メルヴィア領内へと帰還した。
メルヴィア南部に位置する副都クラースラヴァでは、
ラムサスが彼女の帰還を待っていた。
玉座の間に入る間際、
ロキシェル将軍は兜を深くかぶり、扉を開く。
「あれだけの軍勢を引き連れて行ったにしては、
随分と早い帰りだ。」
重い扉の開く音の後に、
より一層に重みのある声が響く。
「手短に報告します。ブラナス城塞、陥落成らず。
レフコーシャからのエンタール公国軍本隊、殲滅成らず。」
淡々と事実のみ報告するロキシェルの言葉に、
ラムサスは冷徹な表情で眉を寄せる。
ラムサスが口を開こうと静かに気を吐いた時、
それを制するようにロキシェル将軍は言葉を続けた。
「首級を上げることは阻まれましたが、
ブラナスにおいて大公エオメル・エンタールを敗死させました。
手の者に調べさせれば真偽はすぐ判りましょう。以上です。」
最後の報告に、ラムサスは声をあげて笑う。
「よくぞやった。これでまた馬鹿げた新王の儀を終えるまで、
主不在の軟い国に成り下がる。
あの男には倅はいないはずだ。終わったな。」
メルヴィア領内においても武名が轟いていた
大公エオメル・エンタールの戦死報告に、
ラムサスは喜びを隠さなかった。
「ロキシェル、貴様には領土をやろう。何処なりとも申してみよ。」
領土の報酬というのは、古参の将や、
大戦果をあげた者にのみ与えられる。
メルヴィア公国においては宝具や爵位に勝る誉れ高い報酬と考えられていた。
「では、南西の村、ナルヴァと星鏡台地の都、
レフコーシャを所望します。」
ロキシェル将軍の短い一言は、
皇帝をより悦に浸らせた。
「ナルヴァ?あのような寒村が欲しいと申すか。
好きにせよ。それに、レフコーシャとは面白いことを言う。
貴様の執念がそうさせるのか。
レフコーシャを欲するのであれば、
自ら刈り取って来い。兵員は好きに使え。」
「では、そのように。」
不敵な笑いを浮かべるラムサスに一礼を投げると、
ロキシェル将軍はひらりと背を向けて玉座の間を足早に歩き去っていく。
甲冑の騎士は、
メルヴィア軍を率いて星鏡台地北方の山岳地帯を越え、
メルヴィア領内へと帰還した。
メルヴィア南部に位置する副都クラースラヴァでは、
ラムサスが彼女の帰還を待っていた。
玉座の間に入る間際、
ロキシェル将軍は兜を深くかぶり、扉を開く。
「あれだけの軍勢を引き連れて行ったにしては、
随分と早い帰りだ。」
重い扉の開く音の後に、
より一層に重みのある声が響く。
「手短に報告します。ブラナス城塞、陥落成らず。
レフコーシャからのエンタール公国軍本隊、殲滅成らず。」
淡々と事実のみ報告するロキシェルの言葉に、
ラムサスは冷徹な表情で眉を寄せる。
ラムサスが口を開こうと静かに気を吐いた時、
それを制するようにロキシェル将軍は言葉を続けた。
「首級を上げることは阻まれましたが、
ブラナスにおいて大公エオメル・エンタールを敗死させました。
手の者に調べさせれば真偽はすぐ判りましょう。以上です。」
最後の報告に、ラムサスは声をあげて笑う。
「よくぞやった。これでまた馬鹿げた新王の儀を終えるまで、
主不在の軟い国に成り下がる。
あの男には倅はいないはずだ。終わったな。」
メルヴィア領内においても武名が轟いていた
大公エオメル・エンタールの戦死報告に、
ラムサスは喜びを隠さなかった。
「ロキシェル、貴様には領土をやろう。何処なりとも申してみよ。」
領土の報酬というのは、古参の将や、
大戦果をあげた者にのみ与えられる。
メルヴィア公国においては宝具や爵位に勝る誉れ高い報酬と考えられていた。
「では、南西の村、ナルヴァと星鏡台地の都、
レフコーシャを所望します。」
ロキシェル将軍の短い一言は、
皇帝をより悦に浸らせた。
「ナルヴァ?あのような寒村が欲しいと申すか。
好きにせよ。それに、レフコーシャとは面白いことを言う。
貴様の執念がそうさせるのか。
レフコーシャを欲するのであれば、
自ら刈り取って来い。兵員は好きに使え。」
「では、そのように。」
不敵な笑いを浮かべるラムサスに一礼を投げると、
ロキシェル将軍はひらりと背を向けて玉座の間を足早に歩き去っていく。
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