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喋れない行き遅れ令嬢
「先輩、またミスの指摘ですか? いい加減にしてください! 私が若くてかわいいからって、無駄に難しい仕事ばかり押し付けられてもう限界です。局長のお気に入りかなんだか知りませんが、先輩は簡単そうなお仕事ばかりのようなので私と交換してください!」
「……」
王国内事務室での仕事中、いきなり後輩のラーラに詰め寄られているのは私、セシル = マクラグレンです。
ラーラは一体何を言っているのでしょうか。
そもそも、今回のミスの指摘というものは、たまたま後輩のラーラの机上にむき出しで置かれていた資料に記載の金額の桁数がずれているという、ぱっと見ただけでもすぐにわかる重大なミスで、今修正しなければ後々困るから先輩としての優しさで伝えただけですのに。
「何も言わないということは、つまりは了承ということですね。では、この仕事は先輩にまかせます。先輩の簡単なお仕事は私やりますから。後輩に難しい仕事を押し付けるだなんておかしかったのよ」
「……」
なんということでしょう。言葉を失うとはまさにこのことを言うのですね。
「……」
そんなふざけたことを言っていないで仕事に戻りなさい、と伝えようにも私の口から言葉として発声することはありません。
私は5年前を境に喋ることができなくなっているのです。理由は伏せていますが、職場の皆さんは私が喋れないことをご存知のはずですのに。
「先輩の仕事って、受付に来た方にニコニコしていれば良いのでしょう? よく席を外しているようですし……休憩が多すぎるのよ。給料泥棒ですわ!」
私の仕事は各所のスケジュール調整、申請された書類のチェック、複雑な計算、重要物の管理です。なので、今後の業務を円滑にするためには人間関係構築も重要ですし、管理のための保管庫チェックのために席を外すことはあります。あくまでも業務であり、決して休憩しているわけではありません。
しかし、ラーラには私が何をしているか、なんて全くわかっていなかったのですね。
ラーラには重要ではあるけれども、書類を転記するだけの配属後すぐ、予備知識なしでもできる簡単なお仕事を任せていたつもりでしたがそれすらも出来ないなんて。
「あっ、もうすぐ騎士団長クレイグ様がお見えになる時間よね。ということで、今日から私が担当になりますね。27歳の年増の行き遅れ令嬢よりも私のようなかわいらしい女性が担当したほうが相手も喜ぶと思いますし」
はぁ?
私、仕事に関しては誇りをもってしていますし、あくまで仕事なのですからしっかり仕事をしてもらえるかどうかが重要なのでは? 何より、年増の行き遅れ令嬢とかって言いましたけれど、ラーラももう22歳で婚約が決まっていないことからしても、あなたも十分行き遅れ令嬢になってましてよ。
はっきり、ガツンと目を覚まして差し上げたいのですけれど、喋れませんので、冷たい目でお返事をいたしましょう。
「そこ、にぎやかだねぇ、どうしたんだい?」
会話に入ってきたのは、ウォーレス室長、私たちの属する事務チームの長です。ナイスミドルと言えば聞こえが良いのかもしれませんが、はっきり言ってしまえば、中年の女好き男性です。どうして室長まで上り詰めたのかはわかりませんが、そういう政治的なところはお強いのでしょう。
「え~ん、室長~セシル先輩が冷たくしてきますぅ。本当のことを言っただけなのにぃ。あ、先輩がどうしても私とお仕事交換したいっていうので交換することにしましたぁ。私、ずっと先輩に仕事押し付けられて来たんですが、やっと改心したみたいで良かったですぅ」
ラーラお得意の男性への媚売りが始まりましたわね。それにしても、こんなにわかりやすく媚を売られて喜ぶ男性はいるのかしら。
「セシル、君はもう少し後輩を大切にしなさい。愛想が悪くて可愛げがないから結婚できないんじゃないのかね? 後妻でよければ紹介するよ」
ここにいたわ。ウォーレス室長はラーラの肩に手を回して、セクハラにならないのかしら?顔もデレデレと鼻を伸ばして、みっともない。他の部署から男女の正しい距離感を持つようにと何回もクレームが来ているのに全く反省しないのは上司がこれだからなのね、納得だわ。
そこまで言うのでしたら、ラーラがどれほど私の仕事ができるのか見て差し上げます。
果たして一日持つかしら?
「……」
王国内事務室での仕事中、いきなり後輩のラーラに詰め寄られているのは私、セシル = マクラグレンです。
ラーラは一体何を言っているのでしょうか。
そもそも、今回のミスの指摘というものは、たまたま後輩のラーラの机上にむき出しで置かれていた資料に記載の金額の桁数がずれているという、ぱっと見ただけでもすぐにわかる重大なミスで、今修正しなければ後々困るから先輩としての優しさで伝えただけですのに。
「何も言わないということは、つまりは了承ということですね。では、この仕事は先輩にまかせます。先輩の簡単なお仕事は私やりますから。後輩に難しい仕事を押し付けるだなんておかしかったのよ」
「……」
なんということでしょう。言葉を失うとはまさにこのことを言うのですね。
「……」
そんなふざけたことを言っていないで仕事に戻りなさい、と伝えようにも私の口から言葉として発声することはありません。
私は5年前を境に喋ることができなくなっているのです。理由は伏せていますが、職場の皆さんは私が喋れないことをご存知のはずですのに。
「先輩の仕事って、受付に来た方にニコニコしていれば良いのでしょう? よく席を外しているようですし……休憩が多すぎるのよ。給料泥棒ですわ!」
私の仕事は各所のスケジュール調整、申請された書類のチェック、複雑な計算、重要物の管理です。なので、今後の業務を円滑にするためには人間関係構築も重要ですし、管理のための保管庫チェックのために席を外すことはあります。あくまでも業務であり、決して休憩しているわけではありません。
しかし、ラーラには私が何をしているか、なんて全くわかっていなかったのですね。
ラーラには重要ではあるけれども、書類を転記するだけの配属後すぐ、予備知識なしでもできる簡単なお仕事を任せていたつもりでしたがそれすらも出来ないなんて。
「あっ、もうすぐ騎士団長クレイグ様がお見えになる時間よね。ということで、今日から私が担当になりますね。27歳の年増の行き遅れ令嬢よりも私のようなかわいらしい女性が担当したほうが相手も喜ぶと思いますし」
はぁ?
私、仕事に関しては誇りをもってしていますし、あくまで仕事なのですからしっかり仕事をしてもらえるかどうかが重要なのでは? 何より、年増の行き遅れ令嬢とかって言いましたけれど、ラーラももう22歳で婚約が決まっていないことからしても、あなたも十分行き遅れ令嬢になってましてよ。
はっきり、ガツンと目を覚まして差し上げたいのですけれど、喋れませんので、冷たい目でお返事をいたしましょう。
「そこ、にぎやかだねぇ、どうしたんだい?」
会話に入ってきたのは、ウォーレス室長、私たちの属する事務チームの長です。ナイスミドルと言えば聞こえが良いのかもしれませんが、はっきり言ってしまえば、中年の女好き男性です。どうして室長まで上り詰めたのかはわかりませんが、そういう政治的なところはお強いのでしょう。
「え~ん、室長~セシル先輩が冷たくしてきますぅ。本当のことを言っただけなのにぃ。あ、先輩がどうしても私とお仕事交換したいっていうので交換することにしましたぁ。私、ずっと先輩に仕事押し付けられて来たんですが、やっと改心したみたいで良かったですぅ」
ラーラお得意の男性への媚売りが始まりましたわね。それにしても、こんなにわかりやすく媚を売られて喜ぶ男性はいるのかしら。
「セシル、君はもう少し後輩を大切にしなさい。愛想が悪くて可愛げがないから結婚できないんじゃないのかね? 後妻でよければ紹介するよ」
ここにいたわ。ウォーレス室長はラーラの肩に手を回して、セクハラにならないのかしら?顔もデレデレと鼻を伸ばして、みっともない。他の部署から男女の正しい距離感を持つようにと何回もクレームが来ているのに全く反省しないのは上司がこれだからなのね、納得だわ。
そこまで言うのでしたら、ラーラがどれほど私の仕事ができるのか見て差し上げます。
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