リースス・レーニス

殺人

少年達は声を荒らげて、ティーラに銃口を向けた。
「銃…ですか…」
ティーラは目を細めて銃口をジッと見つめると、次の瞬間には疾風迅雷の如く少年を攻めていた。ティーラは目にも止まらぬ速さで少年の背後にまわり、後ろから少年の喉元にナイフを突きつけた。
「っは…」
ナイフを突きつけられた少年は、空気ような声しかだすことができなかった。
「…イスナ！」
銃を構えてる少年達は顔を真っ青にして、ナイフを突きつけられた少年の名前を叫んだ。頬には冷や汗が伝っていて、瞳には焦りの色が表れていた。
「イスナを離して下さい！」
そう叫んだのは、少年達の先頭にいるメガネの少年だった。メガネの少年は顔を真っ赤にさせ、鬼のような形相でティーラを睨みつけた。
しかし、ティーラはそんな少年の姿を見ても顔色ひとつ変えず、淡々と自分の要求を説明した。
「銃を降ろし…こちらに渡してくれれば、今すぐにでも解放しますよ。」
ティーラは顎を突き出し、見下すような視線をメガネの少年に向けた。ティーラの瞳は、その場を凍てつかせるほど冷淡で、目を合わせてしまえば、動けなくなるほどの威圧感があった。
しかし少年達は銃を降ろす様子はなく、額に汗を滲ませながら銃口をティーラに向けている。
少年達の態度を見たティーラは、短いため息をつき、ゆっくりと目を閉じて、こう言った。
「あくまで撃つつもり…ですか。…構いませんよ。」
言葉を発したその直後。ティーラは目をカッと見開き、不気味な笑みを浮かべて、イスナの喉元に突きつけていたナイフをクッと自分の方に引いた。ナイフはイスナの首の肉にくい込み、今にも赤い雫が滴り落ちそうだった。
「っあ…はっ…」
イスナは顔を真っ青にさせて、涙を浮かべていた。ナイフを押し付けられてまともに声をあげられないイスナは、苦しそうに嗚咽を漏らしていた。
「さぁ…貴方達次第ですよ。僕を撃てば自動的に彼は殺されます。経験上、人が銃を撃つ瞬間というのは…分かってしまうものなんです。僕だけ殺して彼を助ける事は、不可能だと思った方がいいですよ。」
ティーラは悪魔のように、愉快に残酷に微笑んだ。人質を取って微笑むその姿は、まるで捕食対象を甚振るシャチのようだった。
彼らの決定打を下す人間がいないこの場で、誰もが狼狽える中、とある1人の少女が静かに口を開いた。