リースス・レーニス

大神ヒラメ

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質疑応答

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イスナ、サラ、アルバの3人は、疑問に思った事をティーラに質問した。「マフィアの活動とは何か」「アナポダの理念に反していないか」など。ティーラは質問される度に懇切丁寧に回答していた。ティーラの回答は胡散臭さ満載だったが、ファミリーの加入はサラ達にとって悪い話ではなかった。イスナは目を輝かせながら「悪くねぇ話だな!」と、完全にティーラを信用していたが、他の2人は未だに首を縦に振らなかった。そのうちの1人であるアルバは、ピリついた雰囲気を纏いながらティーラに質問を投げかけた。
「次に、僕達をマフィアファミリーに勧誘した理由を教えてください。」
アルバの質問に、ティーラは待ってましたとばかりに目を細めて、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべた。
「そうですね…。端的に言えば、貴方達を救う為です。しかし『救う』というのは、あくまで我々のエゴです。最終的には貴方達の判断に任せます。」
ティーラは定型文のように、スラスラと言葉を並べた。まるで最初から最適解を知っていたかのように。
アルバはその答えを聞くと「そうですか。」と淡白な返事をして、そっぽを向いた。
ティーラはそんなアルバの姿を見て、考え込むような仕草をした。そして、スーツのポケットからスマホを取り出し、シャンスがグループチャットに送っておいたサイトのリンクをクリックした。
「我々はここに来る前、貴方達の事を調べさせてもらいました。未成年の貴方達が高価な銃を購入してる。その事実を知ったリーダーに、貴方達を保護…というかファミリーへ加入を言い渡されたという事です。」
3人はティーラのスマホ画面をじーっと凝視している。ティーラは画面をトントンと叩いて、サイトを見せながら説明した。
するとイスナは「そうだったのか…」と感慨深い表情を浮かべていた。
「実際話を聞いてみると、本当に苦労してるようですし、我がファミリーに加入する事で貴方達が救われれば…と思ったのですが…。」
ティーラは頬を掻きながら、悲しそうな顔をしてそう言った。まるで「僕は貴方達を救いたいんです…。」と、涙ながらに訴えているようだ。
イスナは目を腫らして「お前…良い奴だな…。」と涙声で言ったが、サラとアルバは怪訝そうな顔でティーラを睨みつけた。
サラは、フゥ…と深いため息をつくと、腕を組んだ。
「なるほど…悪くない話だと思うわ。でも、最後にこれだけ質問させて。あたし達をファミリーに加入させた後、どうするつもりなの?」
サラの凛とした目は、確かにティーラを捉えていた。その瞳に少女らしさは残っておらず、さながら狩人のようだった。
ティーラはサラの質問を聞くと、目を見開いた。しかし、すぐに表情を元に戻し、いつもの嘘っぽい表情になった。
「確かに…その点が重要になってきますよね。リーダーの意向は『保護』ですので、貴方達に住む場所と十分な食事を提供する。そして、その間はマフィアの構成員として働いてもらう…という事になりますね。勿論、給料は与えて差し上げます。いかがでしょう?」
「もし僕たちが…抜けたい、と言った場合、どうなるんでしょうか?」
アルバがそう問うと、ティーラは顎に手を当てながら口を開いた。
「…場合にもよります。もし裏切った場合は、容赦しません。うちのマッドサイエンティストのモルモットとなってもらいます。」
ティーラは「そんなことしたくないんですけどね。」と付け足して言うと、目を細めて不気味に微笑んだ。
ティーラの説明を聞いたサラは、ハッと短いため息をついて、顔を曇らせた。
「…あんたの説明だと、今と労働環境は変わらなそうね。あたし達を駒のように使い潰して、自由を奪って、奴隷のように扱う。給料が貰えても、あたし達の意思が尊重されないのは、奴隷と同じだと思うわ。あたし達は、ただの奴隷になる気はないの。」
サラは蛇のように、ティーラを睨みつけた。するとティーラは、クスッと微笑み「いい感性ですね…。」と静かに呟いた。
「あぁ…すみません。失礼しました。言葉が足りませんでしたね。『裏切る』というのは我々を敵に回すという事ですので、こちらも容赦はしません。しかし、『独立』した場合は、快く貴方達を見送りましょう。」
「裏切り…独立…?」
イスナは両手の人差し指をこめかみに当てながら、難しそうな顔をしてそう言った。サラとアルバも、少し不思議そうな顔をしている。
ティーラはそんな3人の表情を見て、フゥと短いため息をついた。
「…もう少し噛み砕いて説明しましょうか。先程、貴方達が言ってたように、貴方達は子供ゆえに活動を狭められている。我々はそんな貴方達の『独立』の手伝いをさせて頂きます。大人の力が不要になる…1人前になるまで、我々ファミリーの元で働き、経験を積んでもらいます。ファミリーは人員の確保ができる。貴方達は大人になる為の経験を積むことが出来る。双方にとって、好都合だと思うのですが…どうしますか?」
サラは少し考え込むと、こめかみに手を当てながら質問を口にした。
「その…独立した場合は、あたし達に何かペナルティは課せられないのかしら?」
サラの言葉を聞いたティーラは、少し俯いて、静かに口を開いた。
「課しませんよ。…貴方達が働いて得たお金、貴方達が努力して得た経験。それらは貴方達の一生の宝です。その宝をどう使おうが、貴方達の自由です。他人を縛る権利なんて、誰も持っていないんですから。勿論…我々も。」
そう言ったティーラの瞳は、どこか憂いを帯びていた。伏し目な彼の目は、今までの胡散臭い人間の目ではなかった。まるで別の人間が彼の中に生まれたように、今の彼の表情は人間味があった。
そんな彼の人間らしい顔を見た2人は、優しい笑みを浮かべて首を縦に振った。
「…今までの話を聞く限り、あたしが断る理由はないわ。イスナとアルバはどう?」
「僕も悪くないと思う。」
アルバはメガネをクイッと上に上げながら、優しく微笑んだ。
「さんせー!」
イスナはニカッと微笑みながら手を上げた。
そんな2人の様子を見たサラは、ゆっくりと目を閉じて、胸に手を当てた。
「大人でも、人それぞれ価値観が違うのね。あたしは貴方のような大人に会えて良かったわ。」
サラは立ち上がり、右手をティーラの方に差し出した。
「それはそれは…光栄です。」
ティーラはフフッと胡散臭い笑みを浮かべながら、サラと握手を交わした。
サラは席に座ろうとした時、少し考え込むような顔をした。
「あっ…でも…。」
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