リースス・レーニス

大神ヒラメ

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「でも…ペディは納得するかしら?」
サラは不安そうな顔をして、そう言った。
「…どういう事ですか?」
ティーラは不思議そうな顔をしてサラを見つめた。
サラは「上手く言えないけれど…」と言うと、もどかしそうに口を開いた。
「今ここにいるあたし、イスナ、アルバはマフィアへの加入に賛成してるけど、ペディが賛成するとは限らないって事。ペディは責任感が強いから、1度約束したら絶対に守り抜くの。たとえ騙されていたとしても…」
サラはペディの状況を説明すると、手をこめかみに当て、眉間に皺を寄せた。
「騙される…依頼者の男にですか?」
ティーラは顎に手を当て、神妙な顔をした。
サラの様子を見たアルバは、代わりに千羅の質問に淡々と答えた。
「そうです。もう話してしまいますが、ペディさんは借金を抱えています。それも1人で。」
「あたし達はあの男に都合よく使われて、挙句に逃げ道を奪われているの。お金は目に見えるけど、労働は目に見えないから…責任感の強いペディは、自分の労働が足りてないと思い込んでるの。そんな事ないのに…!」
サラは髪をグシャッとかきあげて、苦しそうな表情をしてそう言った。
ティーラは二人の話をただ黙って聞いていた。そして、話を聞き終わる頃には、ティーラの瞳の光はすっかり消えてしまっていた。
「共通の目盛りが無い場合、そしてそれが物でない場合、依頼者の男の匙加減になってきますからね。貴方達が奴隷になってしまうのにも、納得がいきます。そういうの、この世界ではよくある事なんですけどね。」
ティーラは含みのある言い方をして、乾いた笑いを零した。
「おそらく、貴方の言う共通の目盛りが、僕たちには無いんでしょう。そして、仲間思いの彼の事です。僕達を捨てて1人で逃げる事が出来ないんだと思います。僕達の存在が…彼の荷物になっているんです。」
アルバは血が出そうなほど強く唇を噛み締め、悔しそうな顔をした。ティーラはただ一言「…なるほど。」と頷き、考え込んでしまった。
しばらく沈黙が続き、ティーラを除く3人は居心地悪そうに下を向いていた。
すると突然、イスナがバッと顔を上げた。その音に驚いた3人は一斉にイスナの方へと目を向けた。
「なぁ…ペディさんに会わせてくれないか?ペディさんの意見を聞いてからじゃねぇと、俺らも前に進めねぇじゃん?」
イスナはいたずらっ子のように微笑み「どうよ?」とティーラに意見を求めた。
ティーラは納得げに頷くと、席を立って扉の方を指さした。
「そろそろ向こうの話し合いも終わってる頃でしょうし、彼らの元へ案内しましょう。」
ティーラがそう言うと、3人はガタッと椅子から立ち上がり、カルガモの子供のようにティーラの後ろをついて行った。
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