標本少年

風雅ゆゆ

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長編

1、転校初日

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残暑の太陽がじりじりと肌を焼く9月頭。
都内某所にある公立男子校の門前で、白河京(キョウ)は大きく溜め息をついた。
親の都合で急な転校を余儀なくされたこの少年は、2週間で荷物をまとめさせられ、友人達との別れを惜しむ間もなく新しい土地に移ってきた。
それだけでも最悪だというのに、更にここは男子校とくる。京が元いた高校は共学だった。健康な青少年に花無しの高校生活は生殺しにひとしい。

「あ~…はぁ。う~…」

い~やらう~やら言いながら、京は渋々と校門をくぐる。これからのむさくるしい高校生活を思うと溜め息しかでなかった。

校長室で担任の紹介と簡単な学校説明を受けた京は、新しい自分の担任と共にクラスへ向かう。

「じゃあ白河君にはホームルームのとき簡単に自己紹介してもらうから。気楽にね。」

「自己紹介…ですか、」

忘れてたー!!!!

慌てて色々な紹介パターンを思い巡らせる。
第一印象はかなり重要だ。
前の学校ではどちらかというとボケ担当ムードメーカー的な存在だったが、新しい学校ではいきなりそうもいかない。まして自分は二学期という半端な時期に転校してきたのだ。
自己紹介次第で友達作りも困難を究めてしまうかもしれない。

「お笑い路線でいくか…大人し系でいくか…はたまた…いや…」

と言ってるうちにクラスについてしまった。
担任は早々と転校生について生徒達に話し始めている。

―あぁああ!まだ台詞考えてないのに!―

結局自己紹介は平凡に名前を言うだけで終わってしまった。印象は…微妙だろう。
むしろクラスメイトの記憶に残れたかも定かではない。
担任は京にクラスの一番後ろに席を設けてくれた。自己紹介でスカした京はかなりローテンションで自分の席に座る。
隣をちらっとみると、やけに真面目腐った顔の生徒が座っている。黒ぶち眼鏡の生徒が我輩がクラス委員ですよとあからさまに自己主張してるようだ。
怖そうだけどお隣だし…と思い、京は恐る恐る挨拶する。

「よぉ、俺白河京っていうんだ、お前は?」

さりげなく。爽やかに。京は挨拶したつもりだった。
しかしその生徒は眉を少ししかめただけで無言のままだ。
京を一瞥すると、黒板の方に向き直ってしまった。

…なんだよこいつ。愛想わりー…

出だしから転びっぱなしの京は肩を落とし、自分の行く末を不安に思いながら授業を受けた。

時間は淡々と過ぎ、授業の合間の10分休憩では山下という少年と何とか昼飯友達にかこつけることができた。
京は中庭で数人の生徒達と購買のパンにかぶりついた。
山下はゆったりした雰囲気をまとった少年だが意外にもバスケ部次期部長候補なのだという。山下の友人達とも話すうちに徐々に彼等との空気にも慣れはじめ、安心した京は思い出したように顔を上げた。

「なあ山下、あの・・・俺の隣に座ってる眼鏡の奴いるだろ?アイツ何て名前?」

山下は一瞬目を大きく見開くと、京から目線をはずした。

「・・・あ、ああ。佐々木のことか?アイツはうちのクラスの学級委員だよ。生徒会副会長もしてるんだ。」

京は「やっぱりな、」と心で呟きながらあんぱんをほおばった。
山下はしばらく自分のパンを見つめていたが、やがて顔を上げ思い口を開いた。

「・・・白河、アイツは・・・」

<2年白河ー2年白河ー至急職員室へ来るようにー>

山下の台詞をかき消すように、突然担任からの呼び出しが放送された。
京はあんぱんをいとおしそうに握り締めながら嘆いた。

「あー!飯まだ終ってないのに…俺いかなきゃ!山下ごめん!あとで話し聞くね!」

「あ・・・ああ、転入生は色々面倒だよな。職員室は北棟の二階だよ」

京は山下の助言のおかげで容易く職員室にたどり着くことができた。
担任から何枚か転入生用資料を受け取り、山下たちの元へ戻ろうと廊下を小走りでかけていく。
中庭に続く渡り廊下を通ってる最中、校舎の影から声が聞こえてきた。
何やら言い合いをしているようだ。
京は音をたてないよう声のする方に近付いていった。
そこには黒縁眼鏡の佐々木という生徒と、見たことない顔の少年がいた。

「痛い目にあいたくないって言うからしかたなく金で示談にしてやったんだろ?」

佐々木が鋭い口調でいいはなつ。

・・・・・・何?

「ご…ごめん…残りは必ず…」

見知らぬ生徒はうつ向いて青ざめている。

……これは明らかにカツアゲ現場では?

「必ず…ってさぁ。何ヶ月いいつづけてるんだ?いい加減信用ないよお前」

そういうと佐々木の手が見知らぬ生徒の頬を打つ。パシンと大きな音がした。
さらに今度はグーの手を上げる。
京は気が付くと声を張り上げていた。

「やめろよアホ!」

不意をつかれた佐々木は素早く顔をあげる。

「…転校生か…うぜぇな。何でココにいんだよ、」

「知るか!それより何でそいつ殴ってんだよ!やめろよ馬鹿!」

かすかに佐々木の眉が攣りあがる。

「関係ねーだろ……じゃあお前がこいつの肩代わりすんのか?」

凄い威圧感で睨まれた京は思わずすくんでしまった。
何も言えなくなった京を一瞥した佐々木はまた生徒にむき直り、手を振り上げた。

「や……やめろっていってるだろ!」

京は手にもっていた資料のファイルを我武者羅に投げつけた。
京の放ったファイルは佐々木の手に当たり、そこからジワリと血が滲んだ。
佐々木は鋭く京を睨みつける。

「…お前…これから毎日楽しい高校生活をおくらせてやるよ」 

佐々木は口をほとんど動かさないでそう言うと、足早で校舎に入っていった。

……こ、殺されるかと思った。

佐々木がいなくなってから、緊張の糸がきれ、京の背中にどっと汗が流れてくる。
京は見知らぬ生徒に向き直り微笑みかけたが、彼はかたかた震えながら後退りしている。
不思議に思った京は、生徒の肩に手をかけた。

「どうしたんだよ?大丈夫か?」

生徒は京の手を振り払い。じりじりと後退していく。

「ば、ばかだなお前……自分で何したか分かって……?俺、知らねぇから!」

それだけ言うと、生徒は身を翻して走っていってしまった。 

「なんだよ、助けてやったのに失礼な奴!」

プリプリしながら京は山下達の元へ戻った。

食べかけだったパンを急いで頬張り、教室に戻ると、隣が何故か空席なのに気が付いた。まもなく授業が始まってしまうというのに佐々木の姿が見当たらない。
京は前の席の生徒に訪ねるが、

「あー……佐々木は多分……早退じゃん?」

と、気の無い返事しか返ってこない。
さっきのことがあったので、京は佐々木と顔を合わせずにすんだことを幸運に思った。



放課後、山下達とは駅が違うので京が一人で帰り道を歩いていると、突然後ろから手首を掴まれた。

「…っな…なにするんだよ!」

振り向くと佐々木が憤った表情で立っていた。
彼は乱暴に京の手を引っ張り、側にあった公園に連れてきた。
たいして広くないその公園には、ブランコと小さな滑り台、数えるほどのベンチしかない。
辺りはもう暗く、公衆トイレの灯かり以外公園内には街灯がみあたらなかった。

「っ!いてぇよ!はなせ!」 

京が悪態をつくと、佐々木は京の体を強くトイレの壁に叩き付けた。
手には何かチューブのような物をもっている。
尻餅をついた京が立ち上がると同時に、佐々木は京の両手を自分のベルトで拘束した。

「お・・・おい!いきなりなにすんだよ!はなせ!」

「…っるせぇな…二度とそんな威勢のいい口きけなくしてやるよ、」

佐々木は無表情で自分のハンカチを無理矢理京の口におしこみ、彼のズボンを剥く。
京はいきなりのことに数秒間放心してしまった。しかしすぐに我をとりもどし、くぐもり声で叫びながら足をバタつかせた。
佐々木は暴れる京の腹を殴り、痛みで大人しくなった京の下半身を露にする。

「最初だから優しくしてやるよ、有り難く思えチビ、」

言ってることとは裏腹に、佐々木は手荒く京の足を開き、先ほどのチューブの中身を蕾に無理矢理練り込む。
指は乱暴に京の中をかきまわし、京は痛みに叫んだ。
佐々木はおもむろに自分自身をとりだすと、いきなり京の体を奥まで貫いた。
巨大なペニスが狭い体内をグリグリ擦る。
京は今まで経験したことのない痛みに悲鳴をあげるが、ハンカチがつまっているので声が出せない。
硬くなった佐々木の性器は何度も京をつきあげ、京の体はそれにあわせて大きく身体を反らせる。

「キツ…っ…他の奴等が悦びそうだよな…」

京は躯の中で爆発が起こるのを感じた。
痛みで意識がなくなりかける。
佐々木が性器を引き抜くと、アナルからは何かのクリームと精液がゴポっと音をたてて溢れ出した。

「最近ヤってなかったから濃いな…」

早口でそう言うと、佐々木は硬さを取り戻してきた自分自身でまた京の蕾をこじあけ、彼を突き上げ始めた。
京はうつ伏せになっているので佐々木の顔は見えない。
佐々木の性器が、自分のある箇所を擦る度、京は体が機敏に反応してしまうことに気付く。

男にレイプされているのに・・・。

何度も佐々木が出し入れを繰り返すたびグチャクチャという音がトイレに響く。
床には先程体内に放たれた精液が垂れ流しになっている。
結局三回中に射精されたのち、京は解放された。
佐々木は自分の衣服の乱れを直すと、京を放置したままさっさと帰ってしまった。


そのあと京は自分がどうやって家に帰ったか記憶がなかった。
次の日は学校に行きたくなかったが、休む理由がみつからず、結局親に促されいかなければならなくなってしまったのだった。

<続く>
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