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30.深まる絆と夫婦の時間 *
しおりを挟む湯浴みの後、急激な空腹に襲われ、ディートがパン粥を作ってくれた。
数日間、何も食べていなかったので、薄味で胃に優しいお粥にしてくれた。
「ディート、おかわり!これ、美味しいわ!!」
「ぷっ、君って人は!あははっ!!たくさんお食べ。まだまだあるからな。」
私の食べっぷりに、嬉しさを隠せないディートは、すぐにおかわりを持って来てくれた。
完食すると、更にディートは喜んで、頭を撫でてくれた。
「安心したよ。それだけ食欲があれば、もう大丈夫だな。」
「明日には、普通食をモリモリ食べられるわ!体も、もう大丈夫よ。どうやって治ったかは不思議だけど…」
ディートは、ちょっと考えてから話してくれた。
「フィリアが危険な状態だと、ピルクスが教えに来てくれたんだ。そして、妖精の治癒の力で君を治してくれた…」
「えっ!?ピルクスちゃんが?なら、クッキーとマフィンを焼いてお礼に行かなきゃ!!」
「いゃ、しばらくピルクスには会えない。そう言っていたから…」
「そっかぁ…じゃあ仕方ないね…妖精さんもいろいろあるのねぇ…スイーツ作りの腕を上げて、待つことにしましょ!」
「ああ、それがいい。」
ディートは笑って私を抱き寄せた。
少し肩が震えている気がしたのは、笑っていたからだろうか。
ディートの胸の中があたたかくて、深く考えることなく、私は穏やかな気持ちになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ディートの胸に顔を埋め、ずっとすりすりしていたら、 ディートがもじもじしていた。
「フィリア…そこ…」
「ん?何?」
「ち、乳首をすりすり…してる…」
どうやら、ディートは一人で悶々としていたらしい。
それならばと、夜着を寛げて乳首を舌でつんつんする。
「ぁあ…ちょ、ちょっ、待て!き、君は、ケガを、した、ばかり、じゃ、ないか…」
既に喘いでるディートに、何の説得力も感じない。
寧ろ久しぶりの触れ合いに、体は昂っているようで、下半身に圧迫するものを感じる。
「もう傷は治っているわ。ベッドに行きませんか?」
言い終わらないうちに、私はベッドに横たわっていた。
「ふふふっ、ディートったら言ってることと、やってることが違うー!」
「だって、フィリアが煽るから!俺が我慢出来ないのを知ってるクセに…」
ディートのこういうところも大好きだ。
他人には見せないところを、私には見せてくれる。
だから、愛おしい。
抱き締めようとする腕をすり抜けて、私はディートの唆り立つ肉棒を咥える。
阿吽の呼吸で、ディートは私の陰唇にしゃぶり付く。
「んんんっ…」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
くぐもった声だけが部屋に響く。
お互いのぺちゃぺちゃ、ちゅくちゅくという淫音に、体は更に昂る。
「んぐっっ…んんんっ!」
「ぁ…出る…くっっ!」
久しぶりだからか、あっという間に二人で果てた。
「なぁ、フィリア?幸せだな…」
ディートが私を抱き寄せながら、急に話す。
その笑顔の裏には、無事で良かったという想いが込められていることを、私は知っている。
「うん。幸せね。子どもが出来て、家族が増えたら、どんどん幸せが増えていくね。ディートは、子どもは好き?」
「子どもか…俺とフィリアの子なら、絶対愛せると思う。子どもが産まれたら、嬉し泣きしてしまうかもな。だったら、今から子作りだぞ。早く我が子に逢いたい!」
ディートは、少しだけ遠い目をして微笑んだ。
それは、まだ見ぬ子に向けた笑顔のように。
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