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4.グレイシアとの出会い ②
しおりを挟む謝罪をする学生達から離れて、俺はグレイシアと庭のベンチに座った。
ぴったり隣に座ると、グレイシアは顔を赤くして、少し離れようとしていた。
「何故、距離を?」
「だって、サイファ殿下は私を助けてくれようとしただけでしょう?」
「はっ!?」
グレイシアは、皆の前での求婚をあの場を収める為の演技と勘違いしていた。
俺の一世一代の告白を演技とは聞き捨てならない。
「本気なんだけど?」
「へっ!?」
「だから、真面目に求婚したんだってば!グレイシアは『喜んで!』って承諾したからな?」
「あ……」
「俺のこと、好きになれそうにない?」
グレイシアは、赤い顔のまま、俺をじっと見た。
「お顔が好き…」
「顔か…まあ、顔からでもいい。絶対本気で惚れさせるから!」
「はい…」
「そう言えば、父上達は仲が良いのに、何で俺達は今日が初見なんだろうか…
グレイシアが名乗らなければ、エヴァンス公爵令嬢が留学しているとだけしか知らなかった…」
「私、お兄様を超えようと、これでも勉強ばかりしていて、あまり外の世界を知らなかったからかしら…
まあ、それに限界を感じで、単身乗り込んで来ちゃったのだけど。ふふふ。」
「そんなに思い詰める程、プレッシャーだったのか?」
グレイシアは、少し悲しそうな顔をした。
「皆、私を可愛い可愛いって、家族は甘やかしてくれたけど、他人の目は厳しくて…
お兄様は十歳で皇立学園の特別試験に断トツ一位で合格したけど、私はそれさえも受けられなかったわ。
一度目を通せば頭に入るお兄様と違って、私は夜通し勉強してやっと理解出来るボンクラなの。
それが悔しくて、でも、お兄様はいつも優しくて。
どう足掻いても、人としても敵わない。
だから、お兄様を追いかけるのはやめたわ。」
家族愛にも恵まれ、どうしたらこんなふうに育つのだろう。
今でも充分才能溢れる人なのにと、俺は思った。
「グレイシア、今のままでいい。俺は、そんなグレイシアがもっと好きになった。」
グレイシアは、はっとして俺を見た。
「今のままでいい…?」
「そう、今のままでいい。現状から逃げてきたようで、未だに努力し続けているグレイシア。
さっきのデルーミア語は完璧だったよ。
確かにエミリオン殿は天才かもしれないけど、たまたま家族に稀な存在が居ただけで、多くの人は努力しなければならない。
その努力をし続けることも才能じゃないか。
それが出来ない人もたくさん居るのだから。」
「そっかぁ…努力し続ける、か。でも、出来ればお兄様みたいに大した努力もしない天才が良かったわ!」
そして、ふと何かに気付き、グレイシアはげらげら笑い出した。
「あはははっ、やだっ、あはははははっ!!」
「何!?どうした?」
「あったわ!天才エミリオンお兄様が唯一出来ないこと!!」
「ん!?」
「 れ ん あ い !!」
「恋愛!?」
「そう、恋よ!」
俺は、目の前に咲き誇るチューリップを見て、ふと思った。
花言葉は、黄色いチューリップは『望みのない恋』、白いチューリップは『失恋』だったなと。
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