【完結】嫌われ悪女は俺の最愛 〜グレイシアとサイファの恋物語〜

紬あおい

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5.グレイシアの気付き

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グレイシアはただ笑っているのではなかった。
その瞳には涙が滲み、表情は曇っていた。

「グレイシア…?」

「サイファ、私…お兄様について何も分かってなかったわ…」

俺はぽつりぽつりと話すグレイシアの言葉を待った。

「一目惚れなんて馬鹿らしいと思っていたの。
でも、一瞬で心が動くこともあるし、掴まれることもある。
私はサイファが私をちゃんと見てくれたから嬉しかったけど、お兄様はそうではないのね…
熱く滾る想いを抱えたまま、何の確証もなく、不毛な時間を過ごしているんだわ。
苦しいし、悲しいわよね、それは…
それなのに、私はお兄様に甘えて、拗ねて、家を出るように留学してしまったわ。
きっと優しいお兄様は心配しているし、お父様もお母様も…
私は何て我儘なんだろう。」

グレイシアの滲む涙は、いつしかはらはらと大粒の滴となり、頬を濡らしていた。
俺はグレイシアの肩を抱き、続くであろう言葉を待った。

「サイファ…私はお兄様を僻むばかりで、思い遣りがなかったわ…
お兄様に幸せになって欲しいのに。」

「ねぇ、グレイシア、その気持ちに今気付いただけでも良いことなんじゃないかな。
確かにグレイシアは家族に甘やかされてきたかもしれないけど、それは愛故の話だろう?
気付かずに過ごしていく人も多い中、今から正すことが出来るんだから、今までの時間は無駄じゃない。
それに、エミリオン殿はそんなグレイシアを妹として可愛く思っているだろうし、愛しているんだよ。
グレイシアを信じてデルーミアに留学させてくれたんじゃないかな。
エミリオン殿もエヴァンス公爵も夫人も。」

「そうかな…?」

「そうだと、俺は思うよ。でなきゃ公爵令嬢をほぼ単身で留学なんかさせないよ。
グレイシアの内面の強さを信じて、敢えて好きにさせてくれたとしか思えない。
グレイシアは、家族に信頼されているんだ。」

やっと顔を上げたグレイシアは、涙と鼻水でどえらいことになっていた。
でも、凛としたグレイシアの鼻水に俺は内心悶えた。

(すげぇ、可愛い!堪らないな!!)

「ほら、グレイシア、鼻水拭いて?」

ハンカチを差し出すと、拭いてくれとばかりに顔を向ける。

(拭けだと!?何て無自覚なんだ!可愛い、可愛い、可愛い!!)

頭の中では『デルーミア王子、人生初のお鼻ちーん』という言葉がぐるぐる回っていた。
その時、俺は思った。

(グレイシアの鼻水だろうが、尻拭いだろうが、俺は何でもする!)

今思えば、若干方向性を間違えたなと感じるが、惚れた女の尻には率先して敷かれてやるというのも悪くない。
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