【完結】嫌われ悪女は俺の最愛 〜グレイシアとサイファの恋物語〜

紬あおい

文字の大きさ
9 / 22

8.再会

しおりを挟む

「グレイシア、来たぞ!」

先触れも出さず、エヴァンス公爵家の前でグレイシアを待っていた俺。
馬車の窓にグレイシアを見つけて、思わず飛び出す。

「ーーっ!?サイファ!」

急停止した馬車から、転がるようにグレイシアが出てきた。

「ちょっ、何してんの!?」

「だからー、グレイシアを奪いにきた!」

グレイシアは、馬車に俺を押し込み、馭者に指示を出す。

「悪いけど、また訓練所に戻って!」

「畏まりました。」

ゆっくりと動き出す馬車で、グレイシアは困惑げに俺の顔を見ている。

「一年待ったけど、グレイシアが嫁いでくれないからさ。待ちきれずに、会いに来た!」

「せ、せめて手紙とか書いてくれたら、ちゃんと出迎えたのに…」

「グレイシアからは、エミリオン殿の恋は叶わないかもしれないって手紙だけだっただろう?
不安だし、諦めた方がいいのかと思ったけど、どうしてもグレイシアだけは諦めたくなくて。」

グレイシアの手を握ると、少し震えていた。
でも、その震えは、グレイシアがまだ俺を嫌いになったのではないと思えた。

「ねぇ、グレイシア。グレイシアの気持ちは変わらないんだろう?
俺、デルーミア国王ではなく、父上としての陛下に、一年だけ時間をもらったんだ。
だから、グレイシアもちゃんと考えてくれないか?」

「分かりました。お兄様はまだ独身のままで、婚約者すら居ないけど…」

「人生、何が起こるか分からないだろ?明日にはエミリオン殿の初恋の人が振り向くかもしれないし!」

グレイシアは、そんな俺を見て吹き出した。

「あはははっ、サイファったらどんだけポジティブなのよ!あはははははっ!!」

「そんなところ、好きだろ?」

「うん!好き!!」

素直に返すグレイシアが愛おしくて、俺はグレイシアの腕を引っ張り口付けた。

「一年、放置した罰だ。」

「ごめんなさい…お兄様を社交界の馬鹿令嬢から守るのと、もし私がエヴァンス公爵家を継がなきゃならないならって可能性も考えて、いろいろ勉強したり、大変だったの…」

「分かってる。グレイシアが覚悟を決めてデルーミアから去ったことも。
だから、俺はそれを覆したい。何もしなければ、このままだからな。
これでも俺は運がいい奴なんだ。」

「何なの、その自信は!?ふふふ。」

グレイシアは呆れた顔で笑うが、それから数日後には、運命の女神は俺に微笑んだ。

グレイシアに連れられ、訓練所兼ゲストハウスに滞在することになった俺は、エミリオン殿がヴェリティ様を公爵家に連れてきたことを知った。

「ほら、俺って、やっぱり運がいいだろう?」

「本当に!サイファ、実は何か裏から手を回したの!?」

目を丸くするグレイシアが可愛くて萌えたが、流石にそこまではしていない。

「はははっ、そんな馬鹿な!運がいいだけさ。」

「お兄様が上手くやれば、私達、本当に結婚出来るね!
お父様やお母様がヴェリティ様と話すらしいから、私はヴェリティ様がお兄様に相応しいか、試してみる!!」

義姉予定のヴェリティ様を試す悪女を演じることが楽しいのか、微笑むグレイシア。
そのへんてこな悪女顔が妙に可愛くて、押し倒しそうになった俺が、見事に蹴飛ばされたのは二人だけの秘密だ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

十歳の花嫁

アキナヌカ
恋愛
アルフは王太子だった、二十五歳の彼は花嫁を探していた。最初は私の姉が花嫁になると思っていたのに、彼が選んだのは十歳の私だった。彼の私に対する執着はおかしかった。

私の意地悪な旦那様

柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。 ――《嗜虐趣味》って、なんですの? ※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話 ※ムーンライトノベルズからの転載です

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

最強魔術師の歪んだ初恋

黒瀬るい
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。 けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい

隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫 ◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。 ◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。 ◼︎超高速展開、サクッと読めます。

認知しろとは言ってない〜ヤンデレ化した元カレに溺愛されちゃいました〜

鳴宮鶉子
恋愛
認知しろとは言ってない〜ヤンデレ化した元カレに溺愛されちゃいました〜

処理中です...