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8.再会
しおりを挟む「グレイシア、来たぞ!」
先触れも出さず、エヴァンス公爵家の前でグレイシアを待っていた俺。
馬車の窓にグレイシアを見つけて、思わず飛び出す。
「ーーっ!?サイファ!」
急停止した馬車から、転がるようにグレイシアが出てきた。
「ちょっ、何してんの!?」
「だからー、グレイシアを奪いにきた!」
グレイシアは、馬車に俺を押し込み、馭者に指示を出す。
「悪いけど、また訓練所に戻って!」
「畏まりました。」
ゆっくりと動き出す馬車で、グレイシアは困惑げに俺の顔を見ている。
「一年待ったけど、グレイシアが嫁いでくれないからさ。待ちきれずに、会いに来た!」
「せ、せめて手紙とか書いてくれたら、ちゃんと出迎えたのに…」
「グレイシアからは、エミリオン殿の恋は叶わないかもしれないって手紙だけだっただろう?
不安だし、諦めた方がいいのかと思ったけど、どうしてもグレイシアだけは諦めたくなくて。」
グレイシアの手を握ると、少し震えていた。
でも、その震えは、グレイシアがまだ俺を嫌いになったのではないと思えた。
「ねぇ、グレイシア。グレイシアの気持ちは変わらないんだろう?
俺、デルーミア国王ではなく、父上としての陛下に、一年だけ時間をもらったんだ。
だから、グレイシアもちゃんと考えてくれないか?」
「分かりました。お兄様はまだ独身のままで、婚約者すら居ないけど…」
「人生、何が起こるか分からないだろ?明日にはエミリオン殿の初恋の人が振り向くかもしれないし!」
グレイシアは、そんな俺を見て吹き出した。
「あはははっ、サイファったらどんだけポジティブなのよ!あはははははっ!!」
「そんなところ、好きだろ?」
「うん!好き!!」
素直に返すグレイシアが愛おしくて、俺はグレイシアの腕を引っ張り口付けた。
「一年、放置した罰だ。」
「ごめんなさい…お兄様を社交界の馬鹿令嬢から守るのと、もし私がエヴァンス公爵家を継がなきゃならないならって可能性も考えて、いろいろ勉強したり、大変だったの…」
「分かってる。グレイシアが覚悟を決めてデルーミアから去ったことも。
だから、俺はそれを覆したい。何もしなければ、このままだからな。
これでも俺は運がいい奴なんだ。」
「何なの、その自信は!?ふふふ。」
グレイシアは呆れた顔で笑うが、それから数日後には、運命の女神は俺に微笑んだ。
グレイシアに連れられ、訓練所兼ゲストハウスに滞在することになった俺は、エミリオン殿がヴェリティ様を公爵家に連れてきたことを知った。
「ほら、俺って、やっぱり運がいいだろう?」
「本当に!サイファ、実は何か裏から手を回したの!?」
目を丸くするグレイシアが可愛くて萌えたが、流石にそこまではしていない。
「はははっ、そんな馬鹿な!運がいいだけさ。」
「お兄様が上手くやれば、私達、本当に結婚出来るね!
お父様やお母様がヴェリティ様と話すらしいから、私はヴェリティ様がお兄様に相応しいか、試してみる!!」
義姉予定のヴェリティ様を試す悪女を演じることが楽しいのか、微笑むグレイシア。
そのへんてこな悪女顔が妙に可愛くて、押し倒しそうになった俺が、見事に蹴飛ばされたのは二人だけの秘密だ。
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