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16.双子達の決起集会
しおりを挟む「ねぇ、リディア、うちって結構特殊な家だと思っていたけど、他所はお父様が愛人を囲うのは普通みたいよ?」
「そうね、何か嫌だけど、よくある話みたいだわ。」
エミリオン先生の個展に行ってから、私とリオラは我が家の事情について話すことが増えた。
執事のファーガソンも侍女長のクレシアも、何も教えてくれない。
もちろん、私達の専属侍女のコリンヌも護衛騎士のジオルグもだ。
皆、お母様を慕っているので、私達の耳に入らないよう、ブランフォード侯爵家の使用人達の隅々にまで、箝口令が敷かれているのだろう。
しかし、私やリオラは、侯爵邸内や離れの異変に直ぐ気付いていた。
当たり前だ、あんなに家族と過ごしていた父が、急に離れで寝泊まりするようになったのだ。
九歳であろうと、女の子の勘を見縊らないで欲しいものだ。
「でもさ、とっても仲が良かったお父様が、突然他の方を連れて来たなんて、未だに信じられないわ。実際にその人を見た訳じゃないし。でも、一回だけお母様が泣いてたわよね?ファーガソンとクレシアの前で。私達には気付かせないようにしたみたいだけど、目が潤んでたし、本当に大丈夫かしら…」
「そこは心配よね。リオラが言う通り、お母様は私達の前では、絶対に泣かないもんね。だから、私達がしっかりしなくちゃ!コリンヌに借りた恋愛小説にもあったじゃない。夫に愛人が出来て、妻と子を捨てるやつ!!」
「えっ、やだぁ…私達、お父様に捨てられちゃうのかな…えぇぇ…」
リオラは悲しげに俯くが、私はリオラの手をぎゅっと握る。
「私もリオラも女の子だから、お父様の大切な方が、もし男の子を産んだら、捨てられちゃうかもしれないじゃない?侯爵家は男の子か、私達の旦那様になる人しか継げないんだもの。」
「えぇーーー!?やだやだやだ、私、ここから追い出されるの、やだっ!!」
極力控えめな声で話しているが、リオラは小さく叫ぶ。
「落ち着いて、リオラ。男の人の気持ちなんて、ころころ変わるかもしれないじゃない?お父様だって男の人なのよ。だから、何が起きてもいいように、今から準備するの。たくさん勉強して、絵も剣も勉強も、どこに行っても役に立つようにするの!」
「そうね…お父様も変わってしまったもんね。食事も別なことが多いし、何を話していいか、分からなくなっちゃったし。何だか、お父様じゃないみたい…」
「私達ですらそう思うんだから、お母様はもっとおつらいと思うの!だから、私もリオラも、お母様を助けられる人になろう?二人で頑張れば、絶対なれるよ!!」
「リディアは頭が良いし、考え方が大人なんだね。私もお母様のお役に立てるかなぁ…」
リオラは自信なさげに呟くが、私は誰よりもリオラを知っている。
「リオラの底抜けに明るいところ、私は凄く好きよ?リオラが居るから、私も頑張れるんだよ!それに、私達の良いところが、同じじゃなくて良かったと思うよ?だって、やれることが二倍になるじゃない!得意なことが二つずつあれば四倍だよ!!」
「そっかぁ!リディアの真似をして二番目になるより、私は、私の得意なことを頑張ればいいのね?」
「そうそう!リオラの剣術はジオルグが誉めていたし、私は執務を頑張って覚えるわ。」
私とリオラは、握った手をぶんぶん振って励まし合う。
人は、私達をたかが九歳の女の子だと思っても、私達はブランフォード侯爵令嬢なのだ。
伯爵令嬢だったお母様は、ご自身が苦労なされた分、私達の教育には熱心である。
それは、亡くなった私達のお祖母様が、嫁であるお母様にしてくださったように、嫌々身に付けさせられるのではなく、楽しんで学びなさいという方針だ。
それには、エミリオン先生の絵画の指導も、もちろん含まれる。
エヴァンス公爵令息であるエミリオン先生は、所作がその辺の令嬢よりも美しい。
しかも、会話がスマートで面白い。
たまに話が逸れるけど、私達の為になる知識を話してくれる。
私達が頼りにし、大好きな先生だ。
「ねぇ、リディア。エミリオン先生って、絶対お母様が好きよね?」
個展に行った時、私もリオラも気付いてしまった。
「薔薇の絵もそうだけど、あの顔の表情だけの絵もお母様だったよね。目元の薄い黒子まで描いてあったわ。きっとお母様を凄く大切に想っていらっしゃるような気がするわ。」
リオラがこくこく頷く。
「もし、お父様に捨てられたら、私とリオラとお母様は、エミリオン先生に拾ってもらおうか!」
「えっ!?エミリオン先生がお父様になるってこと!?」
「うーん…それはお母様の気持ちとか分からないけど、エミリオン先生なら、お母様や私達の為にいろいろ考えたり、見捨てない気がするの。」
「そうねぇ…今は分からないけど…その時考えよう?私は、リディアみたいに先のこと、よく分かんないーーーっ!」
「今は、私達に出来ることを頑張ろうね!」
「うん、頑張る!お母様には、いつも笑っていて欲しいもんね!!」
私とリオラは、力を合わせてお母様を支えていく決意をした。
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