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39.私のままで
しおりを挟む私は、微かに震えるエミリオンの背中に、腕を回して抱き締め返した。
はっとした顔のエミリオンは、私を見つめる。
「手続きが済んだら、私の気持ちをお話し出来ると言いましたよね。
今、お伝えしてもいいですか?」
「も、もちろんだ。聞かせて?」
ソファに座り、私はエミリオンの手を包み込むように握った。
「私は、自分の親にも、ブランフォード侯爵家のお義母様にもレオリック様にも、いつも誰かに認めてもらいたかったのかもしれません。
頑張っていれば、きっと認めてもらえる。
自分の居場所が見つかる。
そう思ってきたのかもしれません。
でも、エミリオン様に駄目妻製造機になると言われて気付いたんです。
ずっと頑張り続けなくてもいいんだって。
物心ついて、初めてそう思いました。
その時、心が凄く楽になって、甘えてみたくなりました。
私は、私のままエミリオン様と向き合いたい。
だから…四つも年上で二度目の結婚ですが、エミリオン様のお傍で甘えていいですか?」
「ああ、歳も過去も関係ない。俺がヴェリティを望み、双子達の親にもなりたいと望んだんだ。
これから、どんどん甘えてくれ。その方が俺も嬉しい。
そして、俺も時には甘えさせてくれ。
良い日もあれば良くない日もある。
でも、どんな時も、お互いに寄り添って生きていけたらいいんじゃないかな。」
エミリオンは、私の頬を撫でる。
「私…エミリオン様と一緒に居るとドキドキします。
胸が苦しかったり、熱くなったり、何だか忙しいのです。
この気持ちが恋とか愛なんでしょうか…」
「それは、ヴェリティの心が決めることだよ。
俺が今、そうだと言ったら、きっとヴェリティはそう思い込むだろうし、俺にも都合が良いけど…
そうやってヴェリティの心を手に入れたくないんだ。」
「やっぱりエミリオン様はお優しいのね。」
「優しい振りをしてるだけかもよ?
頭の中では不埒なことばかり考えている…」
私はエミリオンに大切に愛されているのだなと実感する。
正式に妻となったのだから、何をしてもいい筈なのに、私の気持ちを尊重してくれる。
そんなエミリオンに、私が出来ること。
エミリオンの両頬に手を添えて、そっと口付けてみた。
「ーーーっ!?ヴェ、ヴェリティ?」
「何か、したくなったので。嫌ですか?」
「い、嫌な訳、ない!寧ろ、もう一度!!」
焦るエミリオンに、私の想いを伝えたい。
「恥ずかしいので、目を閉じていただいても?」
エミリオンは素直に目を閉じて、私を待つ。
私はエミリオンを跨いで座り、肩に手を乗せ、口付けた。
「ヴェリティ…」
私の名を呟く唇に、そっと舌を差し込むと、エミリオンの体がぴくんと跳ね、下腹に硬いものを感じる。
「ヴェリティ、これ以上は…」
エミリオンの手が私の肩を押し返そうとするので、私はその手を握り、深い口付けで舌を絡ませる。
「あぁ、ヴェリティ…ああぁ…」
くちゅくちゅと水音に混じるエミリオンの吐息を、角度を変えて塞ぐ。
(エミリオン様、可愛い…私に反応してくれている…)
長い口付けの唇が離れると、エミリオンは頬を赤らめて微笑んだ。
「ヴェリティ…君が…こんなに積極的な人だなんて、知らなかったよ?」
「私も…です。でも、エミリオン様だからしてみたかったの。」
「可愛い、ヴェリティ、愛してる。」
エミリオンは私の腰に腕を回し、お互いの額をくっ付ける。
「ヴェリティ、結婚式はまだだけど、今夜抱いていい?ヴェリティに触れたい。」
首元まで赤く染めて照れるエミリオンを、もう私も愛おしいと思い始めていた。
「はい、私もエミリオン様に触りたいです。」
「あああああっー、夜まで待てるかな!?嬉しくて、走り出しそうだ!」
エミリオンは、私をぎゅっと抱き締めて、子どものように燥ぐ。
「落ち着いて?エミリオン様。」
「そ、そうだな。落ち着け、落ち着け、俺!」
「ふふふっ、何ですの、それ!?」
「えっ!?おかしいか?あれ!?慌て過ぎだな、俺…あはははっ!!」
二人で笑い合っていた時、突然ノックと同時に扉が開き、グレイシアが叫んだ。
「おっ、おっ、お兄様!ヴェリティ様!」
「「えっ!?」」
「いつの間にか、お膝抱っこするまでに仲良くなられて!
十一年も片想いを散々拗らせてきたくせに、お兄様ったら、やるじゃないの!
いやー、ほんとっ、お兄様頑張りました!!
今夜は、無事に初夜となりそうですわね!
ええ、結婚式など後でよろしいのよ、もう正式な夫婦なんですから。
お母様に言って、準備させますわっ!!
ヴェリティ様もお兄様も、ぴっかぴかに磨き上げてもらいましょうね!
陛下との晩餐会は、食事が済んだら適当に抜けちゃいましょ。
あんなもん、最後まで付き合う必要なんてないわ。
皇帝陛下とはいえ、どうせ途中から呑んだくれのオヤジになるんだから、まともに相手をするだけ無駄ですわ!
そうだっ、双子ちゃん達は、今夜は私と寝ればいいんだわ。
ここから一番遠い部屋で、女子だけのパーティをやらなきゃ!
だから、お兄様とヴェリティ様は心置きなく愛を囁き、確かめ合ってくださいね!!
私、本日はR-18と言いたいけど、私まだ十七歳なので、R-15指定で頑張りますわ!
あっ、お兄様、ヴェリティ様が好き過ぎても、吸い痕は控え目にしてくださらないと、双子ちゃん達の教育上良くありませんわ。
見えない場所ならオッケー!そこだけお気を付けなさって!!
もうすぐ晩餐ですからね?今は、おイタはここまでよ、お兄様!
てか、私、何しに来たんだっけ!?
まぁいいわ、また後で会いましょう!!」
ばたんっっっ
扉は閉まり、私とエミリオンは言葉らしい言葉も発せられないまま、グレイシアは一気に捲し立て、自己完結して出て行った。
「な、何だったんだ、あれは!?今のは本当にグレイシアか?」
「グレイシア様…でしたわ…」
「あ、あいつは…初夜とか吸い痕とか…け、け、経験豊富なのか…?俺より!?」
「さ、さあ………?」
「あーるじゅうはちとか、あーるじゅうご指定って、何なんだ…」
「えっと…今の言い方だと…たぶん大人向け…?」
「大人…あいつが!?どこが?」
「私に言われましても…?」
その後、執事のベンジャミンが晩餐会の準備が出来たと呼びに来るまで、私とエミリオンは困惑したまま、大人しくソファに座っていた。
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