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40.晩餐会にて
しおりを挟む「では、これからジェスティン兄上とエルドランド、ぷらーすっ、エヴァンス公爵家一同の晩餐会を始めるぞー!
今夜は、エミリオンとヴェリティの結婚祝いと、リオラとリディアいらっしゃーいの会も兼ねているので、皆、無礼講だぁーー!!」
既に酔っ払っているのかと思える程のグラナードのテンションで、皆、好きに食事を始める。
そんな中、ファビオラ夫人は、ヴェリティと双子達にこっそり囁く。
「ここに来た時は、陛下も、ただの家族なの。
グラナードにとっては、いつまでも『兄上』なのよ。
陛下もそれをとても喜んでいるわ。」
「ここでは、ただのお兄ちゃんと弟なのですね?」
「陛下はいつもお偉い方だから、ここではのびのびしたいのですかね?とてもお顔が優しいですね。」
リオラやリディアは、高貴な陛下がにこにこと食事をしている姿に見惚れている。
そこへ、エルドランド殿下がケーキのお皿を持って来た。
「ほら、ケーキも食べな。エヴァンス公爵家のスイーツは、皇宮よりも美味いんだ。」
「「殿下、ありがとうございます!!」」
「今夜は無礼講だろ?エルって呼べよ。さっき仲良くなったじゃん?」
「エル…さま…?」
「うん、俺もリディアって呼ぶ!」
「何か、二人の世界…?」
「ば、ばかっ!リオラもエル様って呼べばいいじゃない!?」
「そ、そうだよ、リオラ。」
「ふーん…あっ、そう言えば、どうしてエル様は私とリディアの区別がつくの?エル様だけじゃなくて、エヴァンス公爵家の皆様も!」
ファビオラ夫人は、リオラの言うことを不思議そうに聞いていた。
「だって、よく似た双子だけど、あなた達は見ていれば分かるもの。」
「そうなんですか!?学園では、きっと私とリオラが入れ替わっても、先生すら気付かないと思います。」
「陛下もエルも、エヴァンス公爵家の皆も、人を観察する目は確かなのよ。
それは、見た目だけでなく、中身のことも。
だから、ヴェリティやリオラやリディアをすうっと受け入れられたのかもしれないわ。」
「エル様も、そうなの?」
「観察眼はよく分からないけど、リディアは落ち着いているようでも指先が忙しないし、リオラは顔に出るからなぁ…何となく見分けは付くな。」
「「そうなんだ!」」
そこに、グラナードが焼き菓子山盛りのお皿を持って登場だ。
「私も、もちろん見分けは付くぞ?リオラが実は肝が据わっていることも、リディアが意外と感情の起伏が激しいことも知ってるぞ?」
「「えーーーっ!?」」
「ふふふーん、私は派遣業もやってるし、兄上の傍に人も送り込んでるから、人を見る目には自信があるのさ。
だから、エミリオンの妻にヴェリティはぴったりだと思ってる。
エミリオンには、ヴェリティのやりたいことを自由にやらせる度量があるし、ヴェリティはやり遂げる努力をする筈だ。
それに、リオラとリディアの良き父親にもなるだろう。
エミリオンは、君達を守る為にはどんな手も使うし、望む未来の為に手を貸すさ。
それが皇帝だろうが、公爵だろうが容赦なく使ってな。」
双子達は、エミリオンとレオリックの決定的な違いに気付いた。
優しい父親だったレオリックに、自分の意見を求められたことがない。
毎年恒例の家族旅行も、決定事項が告げられ、たまたま双子達も喜んでいたのだ。
しかし、エミリオンはいつも目線を合わせて、双子達やヴェリティの意見を先ず聞く。
その後のフォローも忘れない。
絵の指導だけでなく、学園に入学してからも、その姿勢は変わらない。
目も手も掛けるのがエミリオンだった。
双子達は顔を見合わせ、こくりと頷き決意した。
「公爵様、私、今日からエミリオン先生をエミリオン父様って呼んでいいですか?」
「私も呼びたい!お母様やリオラと家族にしてもらったばかりだけど、エミリオン父様って呼びたいです。」
グラナードは微笑んで、双子達の頭を撫でる。
「私のことをお祖父様と呼んでくれるなら、エミリオンも父様って呼んでいいぞ!」
「「はいっ、お祖父様!!」」
「おおーっ、可愛い孫達だ。じぃじが抱っこしてやる!」
グラナードは、右腕にリオラ、左腕にリディアを乗せて、広間を歩き出した。
「えっ!?何ごとっっっ?」
反対側で話し込んでいたグレイシアの叫ぶ声に、一同振り向く。
「父上、危ないじゃないですか!この酔っ払い!!娘達が怪我をしたらどうするんですかっ!?」
ブチ切れそうなエミリオンを見て、双子達は手を伸ばす。
「「エミリオン父様!!」」
「ほぅら、エミリオン、受け取れ!お前の娘達だ。」
グラナードから手渡され、今度はエミリオンが両腕に双子達を乗せた。
「「エミリオン父様、大好きです!」」
「えっ!?えぇーーー?と、う、さ、まっ!」
へなへなと腰が抜けそうなエミリオンは、双子達を落とさぬよう、床にへたり込んだ。
「父様って呼んでくれるのか…?」
「はい、いつも優しく見守ってくれていたし、お母様を支えてくれていたし。
エミリオン先生がお父様なら嬉しいです。」
「エミリオン父様じゃなかったら、私やリオラは、今幸せだなぁって思えなかったと思います。
お母様を大笑いさせるのも、エミリオン父様しか居ません。
だから、私とリオラのお父様は、今日からエミリオン父様だけです。」
双子達に頬にちゅっと口付けられ、エミリオンは静かに涙を溢した。
何か言い掛けては止めを繰り返し、結局言葉にならない。
それでも、双子達にはエミリオンの気持ちは伝わり、両側からエミリオンを包むように抱き締めていた。
そんな姿をヴェリティは涙を拭うことなく、見つめていた。
「ほら、ヴェリティ様も行かなきゃ!」
グレイシアに突き飛ばされ、ヴェリティはエミリオン達の傍に跪く。
「ヴェリティ…リオラとリディアが…エミリオン父様って…俺、嬉しい…」
うんうんと頷くヴェリティは、三人を抱き締めて、しばらく泣いていた。
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