【完結】 大切な人と愛する人 〜結婚十年にして初めての恋を知る〜

紬あおい

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76.家族旅行 ④ 〜それぞれの恋〜

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エヴァンス公爵家の家族旅行は、皆がたくさんの楽しい想い出を作り、もう最終日の夜となっていた。

「最後の夜は晩餐会だー!」

双子達と遊び、顔にまで擦り傷を作ったグラナードは、爽やかな笑顔で皆に告げた。

食堂には、鹿肉や猪肉、きのこ料理が並び、双子達は好き嫌いなく、いろいろな料理に舌鼓を打っている。

ヴェリティも初めて見る料理ばかりだが、エミリオンが勧める物を順に口にする。

「猪肉なんて、初めて食べました!」

「充分に下処理して、赤ワインで煮込むと美味いんだよな。俺、これ好き。」

「私もです。柔らかくて美味しいです!」

(相変わらず、可愛いな俺の妻は。食の好みが似てるのも嬉しいな。)

エミリオンは、またヴェリティの初めてを手にしてご満悦だ。

食後は思い思いに過ごすこととなり、双子達とエルドランド、ジオルグは音楽室に向かった。

「エルは、何か楽器は弾けるの?」

「ああ、ピアノでもヴァイオリンでも!」

エルドランドは、楽しげな曲を選び、リディアやリオラ、ジオルグに披露した。

「流石、皇太子殿下ね!」

素直に話すリオラを見て、ジオルグは少し悲しい顔をした。

「やらざるを得ない環境だったしな。俺はジオルグみたいに剣術に長けている方が男らしくていいと思うよ?」

エルドランドがジオルグを気遣っていることに気付き、リオラは反省した。

「ジオルグ、ちょっと話そ?」

「はい、リオラお嬢様。」

音楽室を抜け出したリオラとジオルグは、誰も居ない部屋に入った。

「リオラお嬢様、二人きりはまずいです。」

「ドアを少し開けておけば大丈夫よ。」

改めて二人きりになると緊張するが、リオラは思い切って自分の気持ちを話そうと思った。

「ジオルグは、出自を気にしているようだけど、私はジオルグが好き。」

「俺は…嫡男でもない、しがない男爵家の生まれです。
リオラお嬢様のことは大切に思っていますが、侯爵令嬢だったリオラお嬢様が、今は公爵令嬢となられて…
あまりにも身分が違います。どんなに大切な方だと思っても、将来的に結ばれるのは難しいかと思います。」

ジオルグの言うことは尤もだ。
今、ジオルグが双子達の護衛騎士をしていることすら奇跡なのだから。
しかし、そこで諦めるリオラではない。

「ジオルグ、大切だと思う気持ちと、好きだと思う気持ちを切り離さないで!
そんなのはブランフォード侯爵だけで充分よ…
私は、絶対にジオルグと結婚する。お祖母様と約束したの。
これから三年間頑張って、エヴァンス公爵家の騎士団を作れるように。
皆を護る騎士団に、ジオルグも居て欲しい。
だから、私と一緒にジオルグも三年間頑張って!!」

「エヴァンス公爵家の騎士団…騎士として認められれば、リオラお嬢様の傍に居られるのか…」

「そうよ、ジオルグ。私の隣はジオルグだけだから!」

「分かりました。俺もリオラお嬢様の隣に立てるよう頑張ります。」

「そう来なくっちゃ!」

ジオルグは、リオラの手を取り、指先に口付けた。
その手は小さいながらも剣だこが出来ている愛おしい指先。

「リオラ、好きだ…本当はずっと好きだった…」

ジオルグの口から紡ぎ出される甘い言葉に、リオラは胸が締め付けられた。

「私もジオルグが好き。出会った時から、ずっと好きだったの。一生ジオルグだけよ?」

まだまだ幼く、始まったばかりの恋は、この先も熱が冷めることなく、二人の心に燃え続けだろうと思えた夜だった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



その頃、音楽室に残ったリディアとエルドランドもまた、二人の気持ちを確かめ合っていた。

「リディア、この前は急に皇太子妃にしたいなんて、皆の前で言っちゃってごめんね?」

「大丈夫よ?私こそ、利用するみたいな言い方で、ごめんなさい…」

「僕は本気だし、リディアが妃になってくれるなら、これから好きにさせるから大丈夫だよ。」

エルドランドは、穏やかな性格なので、特に急かしていない。
でも、リディアは自分の気持ちを伝えようと思っていた。

「私もエルが好きよ。エルは、最初からリオラと私の区別がついていたし、いつも私にいろいろ教えてくれるもの。
勉強しかないと思って、外国語を選択したけど、私はエルの隣に立てる人になりたい。
だから、これからもいろんなことを教えて?」

エルドランドの顔がぱぁっと明るくなり、リディアをそっと抱き締めた。

「もちろんだよ!皇太子妃教育もあるけど、きっとリディアなら余裕だよ。
母上には会ったことがないだろうけど、きっとリディアを気に入るよ。」

「皇后陛下は、どんな方なの?」

ジェスティン陛下には会ったことがあるが、皇后陛下は謎のままだった。

「母上はね、アルベーヌ伯爵令嬢だったんだ。
体が弱いから、公務も僕が代わりに父上とやってるんだ。
身分も高くないし、生まれつき心臓が弱いから、本当は周りは父上との結婚も反対したみたいなんだけど、先に結婚したグラナード伯父上が、エヴァンス公爵家が後ろ盾になるからと応援してくれて。」

「お祖父様、大活躍ね!優しい方だわ。」

「だから、リディアの出自は問題ないよ。
母上が会いたがっていたから、今度皇宮に来て欲しいな。」

「分かりました。是非、ご挨拶させてください。」

「了解です。僕のお嫁さん!」

エルドランドは、リディアを抱き締めたまま頷いた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そして、グレイシアとサイファも、グレイシアの部屋となっている客間でソファに座り、想いをあたため合っていた。

「グレイシア、本格的に結婚の話を進めようと思う。
今回、国王陛下の立場じゃなく、俺の父上として一年待ってくれたんだ。
グレイシアを必ず妃にしろって。
だから、俺が刺されても国と国の話にはならなかったんだろうし、寧ろ俺の勝手な判断だと怒られるかもな。」

「サイファが刺された時、本当に生きた心地がしなかったわ。
あの瞬間思ったの、私、サイファとずっと一緒がいいって。
例え、お兄様がヴェリティ様と結婚していなくても、私はサイファしか考えられないって。
実際には、言い方は良くないけど、お兄様がヴェリティ様を見初めなかったら、あの事件は起こらなかったんだけど…
だけど、お兄様がヴェリティ様を好きにならなきゃ、私もデルーミアに留学しなかった訳で、サイファを知らないままだったかも?
運命って分からないわね、ほんとに!」

「俺は、それでもグレイシアを見つけたと思うよ。
レイグラント帝国とデルーミア王国は、近しい関係だからな。
でも、あの勇ましいグレイシアを見ることはなかったのか…?
まあ、どっちでもいいよ、グレイシアと添い遂げられるなら。」

別れを覚悟した日もあった。
責任感だけで、エヴァンス公爵家を継ぐ道も考えた。
だけど、サイファと出会ってしまった。
複雑に絡まった運命の糸が解けた時、各々のパートナーは、何も代え難い存在となったのだろう。

「サイファ、愛してる。私をお嫁さんにしてください。」

「こちらこそ、俺を生涯唯一の伴侶にしてください。」

サイファはグレイシアに口付け、グレイシアもそれを受け止めた。

「グレイシア、傷はもう大丈夫だから、この先に進んでいい?」

グレイシアは、頬を染めて頷いた。
サイファが刺された後から意識が戻るまでの時間、不安と闘いながらグレイシアは誓ったからだ。
サイファの望みは何でも叶えようと。

「優しくしてね?初めてだから。」

「俺も初めてだ。怖かったら、すぐ言って?止めてあげられるか、分かんないけど。」

「サイファなら怖くないよ。」

微笑み合う二人、ゆっくりとお互いを確かめながら、忘れられない夜を過ごした。





ーーーーーーー



グレイシアとサイファの夜のお話は、何れスピンオフの『嫌われ悪女は俺の最愛』の方で公開しようと思います!(≧∀≦) 

更新が滞ってますが、本編との兼ね合いで控えています

ご了承の程、よろしくお願い申し上げます
m(_ _)m ゴメンナサイ



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