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84.幸せを繋ぐ絆
しおりを挟む結婚式後、ヴェリティは順調に妊婦生活を送り、いよいよいつ産まれてもおかしくない状況になった。
それまでは、訓練所に顔を出して、刺繍などを見習い侍女達に教えていたが、流石にエミリオンから禁止令が出た。
「ヴェリティ、庭園なら付き合うけど、邸の外は駄目だからな?」
「はい、分かっていますわ。ふふ。」
もう何度目か分からない位にした会話。
エミリオンの心配性は加速していった。
少し離れて見守るコリンヌは、愛され妻のヴェリティにほんわかし、また始まったと内心にやにやしていた。
ヴェリティはヴェリティで、悪阻が治まってから食欲旺盛になり、体重の増加を気にしていた。
「エミリオン様、赤子が産まれたら、体型を戻すお手伝いもしてくださいね?
お散歩したり、お食事はお野菜中心にしたり、一緒に体操もしましょう。」
「ヴェリティが丸々と太っていても構わない!
どんなヴェリティでも、俺は愛する自信があるんだっ!!」
「あはははっ、そんなにきっぱり言われるなんて!あはははっっっ!!
ーーーっ、やだっ、痛っ、いたたたっ!
エミリオンさまっ、たぶん陣痛ですっ!!」
真面目に言い放つエミリオンに、ヴェリティは爆笑してしまった瞬間、産気付いた。
「ヴェリティ、大丈夫かっ!!誰かっ、医者を呼べ!」
「はい!」
コリンヌは走ってファーガソンに連絡し、医者の手配を頼んだ。
そして、待機していたかのように、すぐにイリスはやって来た。
「ここからは、男性は立ち入り禁止です。」
「でも、ヴェリティが苦しそうで!」
傍に居たいエミリオンは、イリスに詰め寄るが一蹴される。
「ヴェリティ様の命懸けの闘いです。お産まれになったらお声掛けしますので、産後に口に出来そうな物でもご準備ください!
では、私も最善を尽くして、ヴェリティ様とお子様をサポートして参ります!!」
ばたんとドアを閉められ、エミリオンはぽつんと跪いた。
「ヴェリティ、頑張ってくれ。」
祈るように、エミリオンは呟いた。
そして、半日後、学園の寮から駆け付けた双子達や、外出中だったエヴァンス公爵夫妻が帰宅した頃、赤子の産声が邸内に響き渡った。
「さあ、エミリオン様、中へ!」
イリスに呼ばれて部屋に入ると、そこには産着に包まれた赤子がふにゃふにゃと泣いていた。
「ふ、ふ、ふ、双子!?」
エミリオンの叫び声に、外で待機していたリオラやリディア、グラナード、ファビオラが突入して来た。
「「「「うわっ、双子だ!!」」」」
「どちらも男の子ですわ。お腹の中で、仲良くくっ付いていたようで、気付きませんでした。」
微笑みながらも、げっそりとしたヴェリティが皆に告げた。
「うわっ、かわいいーーー!お鼻はお母様似かしら?」
「お目々がぱっちり!お父様にそっくりです!」
リオラやリディアは、赤子を覗き込んで興奮している。
「ねぇ、お祖父様、お祖母様も見てーー!」
リオラが振り返ると、グラナードとファビオラは静かに泣いていた。
「ど、ど、どうなさったの!?」
リディアが二人に駆け寄ると、ファビオラが涙を拭いながら話した。
「無事に産まれたことが嬉しいの。それに、リオラやリディアにも、そっくりじゃない。
赤子達の少し明るい茶色と、年々変化してきたあなた達の髪色がそっくりよ?
あなた達の瞳も、今ではエミリオンやヴェリティに似てきたわ。
あなた達も赤子達も、皆、エヴァンスの子だわ。」
「紛れもなく、皆、うちの子だ。」
グラナードも泣きながら呟いた。
グラナードとファビオラは、赤子の誕生が双子達の心に影を落とさないか心配していたのだ。
しかし、今産まれた赤子達は、本当にエミリオンとヴェリティに似ていた。
そして、女性らしさが増してくるに連れ、リオラやリディアは顔付きはヴェリティに、ふとした表情はエミリオンに似てきていた。
「一緒に過ごすと、どんどん似てくるのだな。
この赤子達は、私達の結び付きをも強くしてくれる。
生まれ持った運命のように。」
「そのようですね。皆、喜んでくれてますわ。
エミリオン様も、目に涙が…?」
「ヴェリティ、ありがとう。君も赤子達も無事だったことが、何よりも嬉しいよ。」
「こちらこそ、こんなに可愛らしい赤子達を授けてくださって、ありがとうございます。
痛みなど消えてしまう位に嬉しいです。」
「ヴェリティは、太ったんじゃなくて双子だったから、体型が変わったと勘違いしたんだな。
こういうのも、いつか思い出して笑い話の一つになるのだろう。」
「そうですね、一つ一つが大切で愛おしい想い出になるのでしょう。」
ヴェリティとエミリオンは、やっと皆から戻って来た赤子を抱き締め、命の尊さをしみじみと感じた。
ふにゃふにゃと泣いていた赤子は、いつの間にか、すやすや眠り、その寝顔はエミリオンにそっくりだった。
そして、産まれた赤子は『幸せを繋ぐ』という意味のシェノン、『絆』という意味のリアンと名付けられた。
二人併せて『幸せを繋ぐ絆』という名前は、エヴァンス公爵家にぴったりだった。
翌日、ジェスティン陛下とエルドランドがお祝いに駆け付けた。
「グラナード、来たぞー!ヴェリティ、良くやったな!!
私が、これからも双子の未来を更に明るくしてやる。
誰が何と言おうと、私やグラナードのようには、絶対にさせないから、健やかに育てるがいい。」
忌み子と言われた双子の歴史は、このジェスティン陛下の代で、完全に終わりを告げた。
それに代わり、双子に限らず、子ども達は皆、帝国の宝として大切に愛される存在となったのだった。
ーーーーーーー
この後 7時から短編を公開します
『数多と唯一』 3話完結です
偉そうな夫が実はチョロかったというお話です
よろしければ、ご訪問ください
思い付きで短編を公開したりしますので、作者をお気に入り登録していただけますと嬉しいです
よろしくお願いいたします╰(*´︶`*)╯♡
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