87 / 90
86.即位記念パーティ
しおりを挟む月日の経つのは早く、今日はジェスティン皇帝陛下の即位二十周年記念パーティだ。
デルーミア王国に行っていたグレイシアもサイファを連れて帰国し、エヴァンス公爵家一同登宮している。
「あーあ、せっかく帰って来たのだから、シェノンとリアンともっとゆっくり遊びたかったのにぃーーー!」
「「明日、ゆっくり遊んであげてください!」」
グレイシアだから不敬にならないが、皇宮でとんでもないことを言い出す。
リオラやリディアは、そんなグレイシアが大好きだ。
「っ!?また、お前か、グレイシア!いい加減、その口を何とかしろっ!!」
グラナードは叱りながら、これからはこの光景を見ることはなくなるのだと思うと、切なかった。
もちろん、周りの皆も。
「やだっ、お父様、怒りながら泣いてる!?」
そんなグレイシアも分かっているのだ。
エヴァンス公爵令嬢としてパーティに参加するのは、これが最後だと。
ぴしゃりっっっ!!!
ファビオラの扇の音がした。
「グラナードもグレイシアも、結婚したからって親子の絆が切れる訳じゃあるまいし、地味にメソメソしなさんなっ!!
我が家には、シェノンとリアンという『幸せを繋ぐ絆』が新たに生まれたんだから、大人達もシャキッとしなさい。」
「そうだな、デルーミアならすぐ行けるし!
何ならエミリオンの私財で別荘でも建てるか?
シェノンとリアンが、グレイシアみたいに留学するかもしれないしな。」
「はいはい、いいですよ。別荘でも娯楽施設でも、好きな物を建てて、皆で遊びに行きましょう。」
グラナードの発言を面白がりながら、エミリオンは、ついでに楽しげに提案する。
「シェノンとリアンは、語学はグレイシアとリディア、剣術はリオラとジオルグ、絵は俺が教えるし、ピアノやヴァイオリンはエル、算術や経営や人たらしはヴェリティから習えばいいから、将来的に明るいですね。」
「ちょっ、人たらしだけ別物では!?」
「間違ってはいないわねぇ。ふふ。」
「お義母様までっ!?」
ヴェリティは抗議するが、皆、特に反論はないようだ。
「さあ、そろそろ陛下のお出ましだ。行くぞ。」
パーティ会場は、たくさんの貴族が集結していた。
この日は、子爵家から公爵家まで一同に介して陛下の即位を祝うのだ。
リオラは、緊張しているリディアに付きっきりで、二人は口数が少ない。
高らかにファンファーレが響くと、ジェスティン陛下、エレノア皇后陛下、エルドランド皇太子殿下が登場した。
「私の即位二十周年記念パーティに集まってもらって、ありがとう。
このレイグラント帝国の平和は、そなた達や、治める領地の民の努力あってのものだ。
先ずは、それに感謝の意を伝えたい。
皆の者、いつもありがとう。」
会場からは拍手が湧き起こる。
「そして、皆に報告したいことが三つある。
一つ目は、エヴァンス公爵家のリディア嬢を皇太子エルドランドの妃に決定した。
これは、エルドランドの意思が非常に固いことだけでなく、皇立学園の早期入学試験に、史上最年少のタイ記録で優秀な成績を収めたリディア嬢は、そのままの成績を維持しており、稀に見る才女だ。
しかも、既に皇太子妃教育まで終了している。
人柄だけでなく、エルドランドを真に支えていける者と判断し、本日婚約し、学園の卒業を待って二年後に婚姻を結ぶこととなる。」
ジェスティン陛下の言葉に、一斉に注目を浴びたリディアは、その場で素晴らしいカーテシーを披露した。
その気品溢れる所作に、自然と拍手が湧き起こった。
「そして二つ目は、エヴァンス公爵令嬢のグレイシア嬢が、デルーミア王国の王太子妃となることが決定した。
グレイシア嬢は、二年の留学期間、五ヶ国語を習得し、通訳となってデルーミア王国の外交政策に貢献していた。
その際、サイファ王太子と出会い、愛を育んで、この度、実を結ぶこととなった。
デルーミア王国とは、強固な絆を結ぶこととなり、帝国の安泰を誓い合った。
二人は、きっと良き王と王妃になると、私は確信している。」
祝福の拍手喝采に、グレイシアとサイファはお辞儀で応える。
「最後の三つ目は、これから三年、帝国に貢献した者を叙爵または陞爵する。
先の二つはエヴァンス公爵家の話だったが、公平性を保つ為に、この機会を与える。
無論、叙爵や陞爵には厳しい審査は入るが、一代限りではなく永続的な爵位を与える。
なので、しっかりと個々の実力を磨き、国益に貢献するよう励んで欲しい。」
会場は、先程までの祝福から響めきに変わり、騒然としている。
「これは、皆に与えられたチャンスだ。最初の期限は今から三年だが、それ以後も継続していきたいと思っている。
皆で帝国を盛り上げてくれるよう願っている。」
ジェスティン陛下は、微笑みながら会場を見渡した。
その目には、後継ぎになれない子息令嬢の才能を見い出したいとの願いも含まれていた。
「では、皆、グラスを持て!」
ジェスティン陛下の声に一同グラスを掲げる。
「レイグラント帝国に幸多かれ!」
「「「レイグラント帝国万歳!皇帝陛下万歳!」」」
決して容易い道ではなくとも、努力すればする程に報われる道が拓けたのだ。
誰かが失った爵位が割り振られるのではなく、実力で勝ち取る地位と名声。
湧き上がる歓声に、ヴェリティはこの平和なレイグラント帝国の底力を見た気がした。
ーーーーーーー
短編も公開中です
『数多と唯一』 3話完結
偉そうな夫が実はチョロかったというお話です
よろしければ、ご訪問ください
思い付きで短編を公開したりしますので、作者をお気に入り登録していただけますと嬉しいです
よろしくお願いいたします╰(*´︶`*)╯♡
683
あなたにおすすめの小説
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う
ノルジャン
恋愛
「堕ろせ。子どもはまた出来る」夫ランドルフに不貞を疑われたジュリア。誤解を解こうとランドルフを追いかけたところ、階段から転げ落ちてしまった。流産したと勘違いしたランドルフは「よかったじゃないか」と言い放った。ショックを受けたジュリアは、ランドルフの子どもを身籠ったまま彼の元を去ることに。昔お世話になった学校の先生、ケビンの元を訪ね、彼の支えの下で無事に子どもが生まれた。だがそんな中、夫ランドルフが現れて――?
エブリスタ、ムーンライトノベルズにて投稿したものを加筆改稿しております。
〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした
ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。
自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。
そんなある日、彼女は見てしまう。
婚約者に詰め寄る聖女の姿を。
「いつになったら婚約破棄するの!?」
「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」
なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。
それを目撃したリンシアは、決意する。
「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」
もう泣いていた過去の自分はいない。
前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。
☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m
☆10万文字前後完結予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる