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10.笑う女
しおりを挟む応接室で待つと、レオン陛下とミレイユ王女が入って来た。
私はカーテシーで迎える。
「そんなに堅苦しくなくていいわ。ノエルと呼んでいいかしら?」
「はい。」
「ノエル、緊張してるのか?今日は『へいくぁ』って言わないんだな。あははは!」
レオン陛下は、こんな時でも私を揶揄う。
しかし、ムスッとする訳にもいかず微笑む。
「ちょっと、レオン陛下、止めなさいよ。ノエルが困ってるでしょ!ノエル、ごめんなさいね?レオン陛下ったら失礼な奴でしょう?昔から、気を許した相手にはこうなのよ…幼い頃から知ってるけど、大事な場面で私もよく揶揄われたわ。」
ミレイユ王女の気さくさに、私はほっこりする。
「おい、ミレイユ!失礼な奴とは言い過ぎだぞ?ノエルは猫被ってるから、たまに剥がしてやるんだ。」
「あらまぁ、随分お気に入りみたいね。ノエル、大変な人に目を付けられたわねぇ…」
いたずらっ子のように笑うミレイユ王女に、私が恋に落ちそうだ。
「ところで、この後の日程だが、殆どがキースハルトと同行になるからな。ちなみに、キースハルトとクラリスは夫婦で、ミレイユと同い年の十九歳、セドリックとノエルも夫婦で、十七歳だ。今回は歳の近い者で対応することにしたんだ。ミレイユもジジイ相手は嫌だろう?」
「そうね、若い方の方が楽しいし。レオン陛下だけオジサンね?」
「はっ!?俺だってまだ二十二歳だが?」
「一国の皇帝が二十二歳で独身、恋人なしとか…あっ…でも…ふぅん。そういうことか!レオン陛下、協力しますわ。私も気に入ったし!!」
「流石、ミレイユ!勘がいいな。」
レオン陛下とミレイユ王女は、物凄く良い顔で微笑み合うが、私には悪巧みをするいたずらっ子に見えていた。
「あ、ノエル、一人にして悪かった。早速、本題に入ろう。」
そうは言っても、特に通訳が必要とも思えない位に会話が成り立っている。
私がこの場にいる意味があるのか、疑問に思えてきた。
「ノエル、通訳なしでもいいのでは?って思ってるでしょう?」
ミレイユ王女が笑いながら言った。
「はい…」
「私がこの日の為に、日常会話位はと勉強してきたのよ。特にキースハルトと会話が通じないようじゃ困るしね。それに交渉にあたる他の者達は、込み入った話の時は通訳が必要だし、ノエルに傍にいてもらわないと!あとノエルは、レオン陛下のお相手もちゃんとしてあげて?」
「はぁ…陛下のお相手ですか…私に通訳が必要かもしれません…」
「おい!ノエル!?」
つい本音が出てしまい、レオン陛下は慌て、ミレイユ王女は大笑いした。
「レオン陛下、この子、面白いわ!気に入った!!」
いつかのデジャヴのような光景に、私は頭が痛くなってきた。
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