妹に婚約者を奪われた公爵令嬢は只今辺境伯に溺愛されています

紬あおい

文字の大きさ
2 / 101

2.次の婚約者




私、リルア・リュグランは公爵家の長女として、生まれながらに婿を取り公爵家を継ぐ立場にあった。

そして、祖父達の軽い口約束が何故か書類化され、父の代で叶わなかったリュグラン公爵家とゼスト侯爵家の子の婚姻が、私が産まれた瞬間効力を発揮した。

しかも、お相手となる同い年のオリヴァー・ゼスト侯爵令息は、初めて会った三歳の時から美しい男児であった。
私は即座に一目惚れし、オリヴァーとの未来に向けて、幼い頃から努力してきた。

金髪翠眼の眉目秀麗なオリヴァーは、社交界でも人気の侯爵令息だが、私の妹のミエルがいつも隣に居た。

私は父似の銀髪翠眼だが、ミエルは母に似てやわらかな蜂蜜色の髪で瞳は琥珀色だ。
姉妹でも見た目の違う私とミエルは、姉の方は冷たく気難しい、妹は可愛らしいと言われている。

そんな可愛らしい妹をオリヴァーが可愛がるのは当然だと私は思っていたが、デビュタントを機に、それは恋愛感情から来るものだと感じていた。

実際、以前から婚約者のお茶会にミエルを誘うのもオリヴァーであったし、ミエルが話し出すと私は口を挟む隙もなかった。

ある日のお茶会は、ミエルがオリヴァーの好きな小説の続刊を手に入れたと盛り上がり、別の日はオリヴァーの最近好きなお茶の話題となり、オリヴァーの最新情報を、私はその場でミエルから聞くのだった。

ここ一年は、ミエルの話が盛り上がる前に、私は忙しいからと執務を理由にお茶会を退席し、引き留められることもなく、その場を離れた。
ガゼボで話に花を咲かせる二人の声を聞きながら、いつしか私はこの恋を諦めていた。

だから、父が思ったよりも早く動いてくれたことを知った時、正直胸のつかえが下りた。

しかし、それも僅かな時間で、父から伝えられた次の婚約者に私は驚かされた。

「リルア、お前の婚約者として、第二皇子殿下が申し出た。
第二皇子殿下は、此度こたびの辺境地の紛争を制圧し、辺境伯を授爵された。
第二皇子殿下のたっての希望で、リルアを娶りたいそうだ。」

「ーーーはっ!?」

私は、冷たく気難しいと他人から評価される人間だ。
生まれてから記憶する中で、この瞬間が一番まぬけな顔をしていただろう。
第二皇子のヴェルシス殿下は、確かにパーティで壁の花の私と踊ってくれたが、あまり話をしたことがない。

「殿下が………私を…?」

「ああ、そうだ。お前の婚約解消の話を耳にして、是非リルアを娶りたいと陛下に直訴したそうだ。
私としては、可愛い娘を辺境地へ送ることは本意ではないが、望まれて嫁ぐのも幸せかもしれないと、一旦この話を持ち帰ったのだ。
リルア、どうだ?第二皇子殿下との婚姻を受け入れるか?」

ヴェルシス殿下は、オリヴァーとは全く違うタイプだ。
皇族特有の黒髪と深い海のような碧眼であり、騎士をしているので体も大きい。
端正な顔立ちだが、口数は少なめで物静かな中にも威圧感もあり、近寄り難い存在でもある。

「殿下が望んでくださるなら、お受けいたします。」

「そうか。ならば、陛下に早速申し伝えよう。
辺境地は殿下が制圧したとは言え、まだ不安定な地だ。
早急に移住して様子を見たいので、リルアの了承が得られれば、即座にアルカロイドへ向かいたいとのことだ。良いか?リルア。」

「はい、すぐにでも荷造りをいたします。
しかし、こんなに急なお話で、持参金などは如何いたしますか?」

「その点は心配いらない。リルアが執務を上手く回してくれていたおかげで、私は事業に専念出来ていた。
どこかへ嫁がせるミエルの為に多めに準備していた資金をリルアに使うだけだ。
今まで何も配慮しなかった父と母の償いだと思ってくれ。
それに、殿下はリルアにその身一つで来て欲しいとも仰った。
その言葉を聞いて、私はリルアを殿下に託そうと思ったのだ。」

「第二皇子殿下が…そこまで…?」

「ああ、帝国の盾とは思えない位に、殿下はとても穏やかな表情だった。だから、安心して殿下をお支えしなさい。」

「承知いたしました。その代わり、ミエルとオリヴァー様には、私がここを出るまで何も言わないでいただけますか?」

「…っ……分かった…そこまで追い詰めていたこと、すまなかった。」

父との話が終わり、私は急に肩の力が抜け、呆然としたままソファに沈んだ。



感想 108

あなたにおすすめの小説

我慢しないことにした結果

宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

これは一周目です。二周目はありません。

基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。 もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。 そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

あの約束を覚えていますか

キムラましゅろう
恋愛
少女時代に口約束で交わした結婚の約束。 本気で叶うなんて、もちろん思ってなんかいなかった。 ただ、あなたより心を揺さぶられる人が現れなかっただけ。 そしてあなたは約束通り戻ってきた。 ただ隣には、わたしでない他の女性を伴って。 作者はモトサヤハピエン至上主義者でございます。 あ、合わないな、と思われた方は回れ右をお願い申し上げます。 いつもながらの完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティなお話です。 当作品は作者の慢性的な悪癖により大変誤字脱字の多いお話になると予想されます。 「こうかな?」とご自身で脳内変換しながらお読み頂く危険性があります。ご了承くださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

婚約者の様子がおかしいので尾行したら、隠し妻と子供がいました

Kouei
恋愛
婚約者の様子がおかしい… ご両親が事故で亡くなったばかりだと分かっているけれど…何かがおかしいわ。 忌明けを過ぎて…もう2か月近く会っていないし。 だから私は婚約者を尾行した。 するとそこで目にしたのは、婚約者そっくりの小さな男の子と美しい女性と一緒にいる彼の姿だった。 まさかっ 隠し妻と子供がいたなんて!!! ※誤字脱字報告ありがとうございます。 ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。