妹に婚約者を奪われた公爵令嬢は只今辺境伯に溺愛されています

紬あおい

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34.日常と不思議な贈り物




子育て応援隊のマリエルとセレンとナタリーが来て、夜はまとめて睡眠が取れるようになり、私の体力は劇的に回復した。

そして、母のノクリアは、一日数時間だけ気分転換に執務をやるようにと気遣ってくれたので、三つ子が三ヶ月になる頃には、ヴェルシスと二人で執務室に籠る時間が出来た。

家令のエリオンや執事のロナルドがしっかりと執務を交代してくれていたので、当主のヴェルシスの決裁が必要な書類を見ればいいので助かっている。

「辺境地は執務が簡潔に整理されていていいわね。リュグラン公爵家よりも楽だわ。」

過去を思い出し、私が呟くとヴェルシスが目を丸くする。

「っ!?これで?俺はこれでも面倒だが…」

「この位でを上げたら駄目よ?」

「リルア…どんだけ働いてたんだよ…」

可哀想な生き物を見るような目でヴェルシスが私を見つめる。

「だって、公爵家を継ぐ者としては当たり前じゃない?
あの頃はお母様も寝た切りに近かったし、ミエルや元婚約者はあんなんだし。
ああーーー、ヴェルシスと結婚して、本当に良かった!」

「そうか!それなら良かった!!」

がたんと音を立てて執務机から立ち上がり、ヴェルシスは私を抱き上げた。

「リルアの喜ぶ顔が見られるなら、俺は幸せだ。」

くるくる回りながら、嬉しさを全身で表現する。
こんな姿を見ると、二歳とはいえ年下なのだなと可愛く思えてくる。

「ヴェルシス、目が回ってしまうわ!そろそろやめてぇーーー!!」

ぴたっと止まり、頬擦りしてくるヴェルシスは、ドキドキする位イケメンだ。

「もう、ヴェルシスったら!お仕置きよ?」

ちゅっと唇を吸いすぐに離すと、耳まで染めたヴェルシスが居た。

「リルア、それは反則だ。昼間だけど欲しくなる…
でも、まだ体が戻っていないだろうから我慢する。」

しゅんとしたヴェルシスは、垂れ耳の大きな犬みたいだ。

「私の旦那様は可愛らしいのね。体が戻ったら、たくさん愛してね?」

「うん!約束だ!!」

「さあ、執務は終わりにして、私達の天使を見に行きましょう。」

「ああ、そうだな。そろそろ腹が減る時間だろう。」

授乳が定期的になってきたのをヴェルシスも把握していた。

他にも育児について勉強しているヴェルシスは、私に秘密にしてある人に相談していたのだった。

「領主様、贈り物が届いています。」

子ども部屋に着くと、フェリスが青いリボンの掛かった箱をヴェルシスに手渡した。

私が訝しげに贈り物に添えられた手紙を読むヴェルシスを見ていると、嬉しそうに叫んだ。

「リルア、これで授乳が楽になる筈だ!!!」

ヴェルシスが楽しそうに箱を開けると、香水瓶のような曲線的なガラス容器に、オレンジ色のゴム球がついた不思議な物が現れた。

「ヴェルシス、それはなぁに?」

「これは搾乳器というらしい。搾って保存した乳を赤子に飲ませるんだ。
リルア、乳が張って痛そうにしていただろう?
夕方までに乳を搾って、夜は乳母にこれを飲ませてもらえば、痛みも防げるし赤子も腹いっぱいになるし、俺達もいちゃいちゃ出来る。
こんな優れ物、使わない手はない!!」

嬉々として説明するヴェルシスに、私は吹いてしまった。

「ぷっ、ぷぷぷっ!俺達もいちゃいちゃってところで、優れ物のイメージが吹っ飛んじゃったわ。
あはははっ!!」

「いや、そこ、大事だろっ!?夫婦の触れ合いは大事だ!!」

「はいはい、分かってますわ。でも、搾乳器なんて、どなたから届いたの?」

「兄上だ!政務の間に育児書を取り寄せて読んでいるらしい。」

「はっ!?婚約者もいらっしゃらないのに!?」

「兄上は先見の明があるからな。未来への先行投資とか不確実性への備えとか?
兄上は昔から可能性の拡張をモットーにしているからな。」

「………おかしな人…皇太子殿下なのに…」

「まあ、そう言うな。甥っ子が可愛くて仕方ないのだろう。」

おかしな兄を持つおかしな弟は、私の戸惑いを他所よそに爽やかに微笑むのだった。



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