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13.グレイシアのアドバイス
しおりを挟むエミリオンがヴェリティと執務に励むようになり、二週間。
未だヴェリティとの距離が劇的に深まる訳もなく、珍しくエミリオンは悩んでいた。
「お兄様、最近変よ?」
朝食後に私室に向かおうと、とぼとぼ歩いていると、グレイシアに話し掛けられた。
「だって、ヴェリティが俺を子ども扱いするんだ。」
「だって、子どもじゃない?十七歳から見たら、十三歳ってまだまだ子どもじゃない!?背もそんなに変わらないし。」
揶揄うグレイシアに、エミリオンはあからさまに不機嫌な顔を見せた。
「お兄様は、頭がいいけど、女心には全くの理解がないわ。寧ろ、すっとこどっこいの頓珍漢だわねぇ…」
「グ、グレイシア…お前の口を縫い付けようか?」
「あら、やだ!怖っ!!せっかく私がお兄様にアドバイスしてあげようとしたのに!?」
「何だよ、アドバイスって?」
「先ずは、体を鍛えなさいませ。女はガシッとした胸板が好きですわ!お兄様みたいなひょろガリではいけません。
そして、お肌のお手入れもちゃんとなさいませ。
頬擦りした時、つるぴかりんのほっぺに女は萌えるのです。
でも!ちょっとお髭を剃ったじょりじょり感に男を感じるのですわ。
ヴェリティ様は、お髭もすね毛もないお兄様しか知らないでしょうから、お髭じょりに成長を意識する筈ですわ。
あとは、声変わりした低いお声!
寝起きの掠れた重低音に女はどきどきしますのよ。
グレイシアは、えっへんと得意げに秘策を披露した。
「なるほどなぁと思うこともあるけど、背はどうやったら伸びるんだ?」
「それは、今からですわ!お父様は背が高いし、きっと遺伝子で何とかなりますわよ!!」
「ふーん…そんなもんかなぁ…」
「私の言うことを聞いていれば間違いありませんわっ!一年後、きっとお兄様は頭脳と見た目は完璧な公爵令息ですわよ!!(性格はともかく…)」
そんな馬鹿なと思いながら、そこから一年、エミリオンは筋肉増強マシンのように鍛え、お肌の手入れに余念のない日々を送るのだった。
そんな兄を、まぁ、何てちょろいのかしらとグレイシアがほくそ笑んでいたことは、エミリオンは知る由もなかった。
でも、グレイシアの良いところは、ただほくそ笑んでいただけでなく、自分の兄が如何に素敵な男であるかを、一年掛けてヴェリティに刷り込んでいたことだ。
グラナードの背高のっぽ遺伝子は、大変活躍し、一年後にはエミリオンはヴェリティより遥かに大きく成長していた。
「ねぇ、ヴェリティ様、最近のお兄様ってカッコ良くない?」
「そ、そうですわね。とても素敵になられましたね!」
頬を染めるヴェリティに、グレイシアはこちらもちょろいとによによするのだった。
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