今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜

紬あおい

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12.落とすつもりが…

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一日の終わりに、エミリオンを寝室で休ませる時、突然言われた。

「明日から送り迎えは要らないよ。」

エミリオンに突然言われ、ヴェリティは何か粗相をしてお役御免になったのかと不安になった。

「申し訳ありません…何かしましたでしょうか、私…」

不安げな顔も可愛いなとエミリオンはマニアックなことを考えていた。

「いや、もう学生じゃないから!卒業してくれって言われてしまったんだ。だから、ヴェリティと執務に励むよ。」

「はっ!?卒業してくれって?」

「天才過ぎて教えることがないんだって!」

「えっ!?でも………ふっ、ふふふっ!流石ですね、エミリオン様!!」

ころころ変わるヴェリティに愛しさが止まらないエミリオン。

「取り敢えず、明日はカフェに行こう!街の視察も大切じゃん?」

「はい、初めてなのでお供させていただきます。
あっ…でも、ファーガソン様に言わないと…」

「初めて…初めてかっ!!大丈夫、大丈夫!俺が言うから。」

「お、俺!?」

「うん!僕って子どもっぽいからさ。」

急に背伸びを始めるかのようなエミリオンを微笑ましく思うヴェリティだった。

「では、明日楽しみにしていますね。今夜はゆっくりお休みください。」

「うん、おやすみー!」

笑顔のエミリオンは、また子どもに戻っていた。

(本当にお可愛らしい方だわ、エミリオン様は。)

ヴェリティは、その笑顔の意味をまだ知らなかった。




翌日、エミリオンはヴェリティと初のカフェデートに向かった。
そこには、ヴェリティにぴったりの薔薇の花を模ったケーキがあった。

「エミリオン様!可愛らしいケーキですね。」

「うん。でも、可愛らしいのはヴェリティだよ?」

「っ!?揶揄ってはいけません!」

「本心だよ?俺はヴェリティに夢中だからな。」

外出先でもおかしなことを言い出すエミリオンに、ヴェリティは、これも令嬢除けなのだろうと話を合わせることにした。

「エミリオン様ったら!甘いのはケーキだけではありませんのね?エミリオン様も甘くて、優しいですわ。」

「なっ!?ヴェリティ、俺のこと、好き?」

「はい、大好きですわ。」

甘々に甘やかして落とすつもりが、あっさり何度もヴェリティに落ちるエミリオン。
しかし、ヴェリティは飽く迄も令嬢除けだと思っているので、以降、エミリオンは、実力行使という名の婚前交渉に力を入れ始めることになるのだった。

若干十三歳のエミリオンの苦悩は、まだまだ続くのだ。




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