13 / 17
12.落とすつもりが…
しおりを挟む一日の終わりに、エミリオンを寝室で休ませる時、突然言われた。
「明日から送り迎えは要らないよ。」
エミリオンに突然言われ、ヴェリティは何か粗相をしてお役御免になったのかと不安になった。
「申し訳ありません…何かしましたでしょうか、私…」
不安げな顔も可愛いなとエミリオンはマニアックなことを考えていた。
「いや、もう学生じゃないから!卒業してくれって言われてしまったんだ。だから、ヴェリティと執務に励むよ。」
「はっ!?卒業してくれって?」
「天才過ぎて教えることがないんだって!」
「えっ!?でも………ふっ、ふふふっ!流石ですね、エミリオン様!!」
ころころ変わるヴェリティに愛しさが止まらないエミリオン。
「取り敢えず、明日はカフェに行こう!街の視察も大切じゃん?」
「はい、初めてなのでお供させていただきます。
あっ…でも、ファーガソン様に言わないと…」
「初めて…初めてかっ!!大丈夫、大丈夫!俺が言うから。」
「お、俺!?」
「うん!僕って子どもっぽいからさ。」
急に背伸びを始めるかのようなエミリオンを微笑ましく思うヴェリティだった。
「では、明日楽しみにしていますね。今夜はゆっくりお休みください。」
「うん、おやすみー!」
笑顔のエミリオンは、また子どもに戻っていた。
(本当にお可愛らしい方だわ、エミリオン様は。)
ヴェリティは、その笑顔の意味をまだ知らなかった。
翌日、エミリオンはヴェリティと初のカフェデートに向かった。
そこには、ヴェリティにぴったりの薔薇の花を模ったケーキがあった。
「エミリオン様!可愛らしいケーキですね。」
「うん。でも、可愛らしいのはヴェリティだよ?」
「っ!?揶揄ってはいけません!」
「本心だよ?俺はヴェリティに夢中だからな。」
外出先でもおかしなことを言い出すエミリオンに、ヴェリティは、これも令嬢除けなのだろうと話を合わせることにした。
「エミリオン様ったら!甘いのはケーキだけではありませんのね?エミリオン様も甘くて、優しいですわ。」
「なっ!?ヴェリティ、俺のこと、好き?」
「はい、大好きですわ。」
甘々に甘やかして落とすつもりが、あっさり何度もヴェリティに落ちるエミリオン。
しかし、ヴェリティは飽く迄も令嬢除けだと思っているので、以降、エミリオンは、実力行使という名の婚前交渉に力を入れ始めることになるのだった。
若干十三歳のエミリオンの苦悩は、まだまだ続くのだ。
114
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
王太子殿下との思い出は、泡雪のように消えていく
木風
恋愛
王太子殿下の生誕を祝う夜会。
侯爵令嬢にとって、それは一生に一度の夢。
震える手で差し出された御手を取り、ほんの数分だけ踊った奇跡。
二度目に誘われたとき、心は淡い期待に揺れる。
けれど、その瞳は一度も自分を映さなかった。
殿下の視線の先にいるのは誰よりも美しい、公爵令嬢。
「ご一緒いただき感謝します。この後も楽しんで」
優しくも残酷なその言葉に、胸の奥で夢が泡雪のように消えていくのを感じた。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」「エブリスタ」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎泡雪 / 木風 雪乃
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
※新作です。アルファポリス様が先行します。
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる