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11.優秀過ぎるエミリオン
しおりを挟むエミリオンとヴェリティの婚約から二年。
ヴェリティは、秘めたる才能が開花したのか、エヴァンス公爵家の執務を完璧に熟すまでに成長し、グレイシアだけでなく、使用人達もたらし込む偉業を成し遂げていた。
しかし、そんなヴェリティの人たらしさえも僻んだのが、最初ヴェリティに嫉妬していた新米侍女オーレリアとベテラン侍女スーザンだ。
二人は、ヴェリティ以外にも自分の失敗を他人になすり付けたことが露呈し、三回目でファビオラがブチ切れ、紹介状も渡さずにクビにした。
ファビオラは、嘘吐きが大嫌いだった。
それ以降は、エヴァンス公爵邸内は平和である。
一方では、何とエミリオンがたった二年で皇立大学院まで卒業してしまった。
読めば頭に入る見目麗しいエヴァンス公子は、実は腹黒で教師達が教えることがなくなってしまったのだ。
「公子様は、大変優れた頭脳と器用な手先をお持ちですから『学校』などという狭い場所ではなく、広い世界でご活躍いただきたい。」
要は、扱いづらい天才はさっさと社会に出てくれとやんわり言われたのだ。
「エミリオン…お前は学園と大学院で何をやらかしたのだ…?」
グラナードは呆れたが、エミリオンは爽やかに笑った。
「真面目に勉強し過ぎたら、教師を超えてしまっただけです。
僕の本気は全然見せてないんですけどねぇ…
まあ、他に学ぶ場所はありますから、もう学生を卒業して、結婚までの一年は、絵を描いたり、ヴェリティと公爵家の執務にあたります!
あっ、恋愛もしなくては!!
男らしさを見せなきゃいけないし、今日からは『俺』って言わなくちゃ!」
(何かが間違ってる…?)
グラナードは、我が子ながらとんでもない化け物を世に放ってしまったと思った。
「エミリオン、恋愛は学問のように上手くはいかないわよ?
特に、ヴェリティのような子は…ね?」
ファビオラは、ヴェリティの鈍感で無垢なところをこの二年で理解していた。
ヴェリティは、いつも他人に優しい人たらしなのに、全く好かれていることに気付かず、自己肯定感があまりにも低いのだ。
(まあ、エミリオンが手を焼くのを見るのも楽しいかも!?)
「うーん…そうかもしれませんが、手に入らなければ燃えるので、一年でヴェリティをモノにして見せます!!」
「「……………」」
変なやる気スイッチが入った暇人公子エミリオンは、この日から怒涛のヴェリティ溺愛を展開するのだ。
しかし、ファビオラが懸念したように、ヴェリティは一筋縄ではいかない女性だとエミリオンが実感するのに、そう長くは掛からなかった。
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