3 / 42
3.端折ってしまった言葉と即答
しおりを挟む翌日、システイン様からお手紙が届いた。
『明日の昼、一緒に食事しましょう。迎えの馬車を送ります』という内容だ。
お手紙の美しい文字と、二人での食事に気分が上がる。
みんなで集まるのもいいのだが、システイン様は人の話をじっくり聞いてくださるので、話していてとても楽しいのだ。
幼馴染とはいえ、尊敬とか憧れとか、そういった対象であることは間違いない。
ウキウキとした気持ちで迎えた当日。
公爵家の馬車に乗り、待ち合わせの場所へ向かった。
予約してくださっていたらしく、個室に通されると、以前会った時よりも大人びたシステイン様が笑顔で出迎えてくれた。
艶のある金髪とブルーグレーの目が美しい。
「久しぶりだね、リシェル。元気にしてたか?すっかりレディだな。」
「ご無沙汰しておりました。システイン様は相変わらずの美丈夫ですね。眩しい位です。」
「ちょっと会わないうちに、リシェルが社交辞令を?くくくっ!」
システイン様は楽しそうに笑った。
子どもの頃と変わらない笑顔にほっこりする。
食事をしながら、お互いの近況報告から会話は始まった。
途中、あまりにお料理が美味しかったので会話が止まることもあって、その時はお互いに、にこにこと目だけ笑った。
会えていなかった半年間、システイン様は仕事が忙しいこと、生活が不規則になって少し痩せたことなどを話してくれた。
私はこの前ソフィア様に話した、自分の今後のことなどを相談した。
結婚してもしなくても、女性が自立する為に勉強しているけど、なかなか難しいと愚痴も聞いていただいた。
「リシェルは真面目だなぁ。でも、凄くいいことだと思う。自分の立場や今後のことを考えるのは良いことだ。相談したかったり、分からないことがあれば、母上や俺を頼りにしてくれ。忙しいとはいえ、その位の時間は取れるしね。今日みたいに!」
システイン様の優しさに嬉しくなる。
この方は、人に寄り添うことが出来る方なんだ。
「あ、そう言えば、リシェルが俺に話があると母上に聞いたのだけど?」
私ったら、肝心なことを忘れるところだった。
ソフィア様との約束!
こんな素敵なシステイン様なのに、お相手が居ないのか?とか、居たら私はショックかも?とか、急に混乱してきたが、約束は守らねば!!と焦ってしまった。
「(どなたか良い方を見つけて)結婚しましょう!」
私はテーブルにバンッと手を付き、立ち上がって、システイン様に言い放った。
頭の中にだけ在った言葉と口から出た言葉が合致してないことに気付かない。
システイン様は口をあんぐり開けて、数秒考えた後にキッパリ言った。
「分かった!すぐしよう!!」
「ん?」
「これから母上の所に行くから、リシェルも来て!」
こうして、私とシステイン様は馬車に飛び乗るように公爵家に向かった。
馬車の中で、システイン様のお相手について聞きたかったが、先程から自分の心臓のドキドキと、少し悲しい気持ちの胸の痛みがぐちゃぐちゃに襲ってきて、結局黙っていた。
システイン様は目を瞑って考えごとをしているようだった。
そんな顔まで美しいこの人を幸せにするのは、どんな方なんだろう。
胸の真ん中に、冷たい針がすうっと刺さるような痛みを覚えて、少しだけ泣きたくなった。
194
あなたにおすすめの小説
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません
恩田璃星
恋愛
蓮見千歳(はすみちとせ)は、血の繋がりのない叔父、遼平に少しでも女性として見てもらいと、幼い頃から努力を続けてきた。
そして、大学卒業を果たし千歳は、念願叶って遼平の会社で働き始めるが、そこには幼馴染の晴臣(はるおみ)も居た。
千歳が遼平に近づくにつれ、『一途な想い』が複雑に交錯していく。
第14回恋愛小説対象にエントリーしています。
※別タイトルで他サイト様掲載作品になります。
番外編は現時点でアルファポリス様限定で掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる