【完結】 女に弄ばれた夫が妻を溺愛するまで

紬あおい

文字の大きさ
7 / 12

7.あの女はおかしい Side アヴィス

しおりを挟む

タチアナに対する不信感のようなものが芽生え、三日滞在するつもりが残り二日は公爵家に帰ることにした。
『仕事が忙しく、そちらに行けない』と書いただけの手紙一通の連絡だが、今回が初めてのことではないので、タチアナは気にしないだろう。

仕事を終えて公爵家に戻ると、寝室に居る筈のノアリスが居なかった。
グレゴリーに聞いても「もう休んでいらっしゃる筈」と話にならない。

もしやと思って執務室を見に行ったら、仕事をしながら寝ていた。
夫が居ない日位、サボればいいものを…
風邪をひくといけないので、抱き上げて寝室に連れて行く。
ふわっとスミレの匂いがして、頭がクラクラし、体が熱くなる。
このままでは寝ている子を襲ってしまいそうで、湯浴みをすることにした。

湯浴み後、ベッドに腰掛け髪の毛を拭いていたら、寝ぼけたノアリスが挙動不審になっていた。
天然なのか知らないが、彼女の突拍子もない行動が結構面白くて、気に入っている。

一晩家を空けただけなのに、妙にノアリスが懐かしくて、抱き寄せて眠りたかった。
いたずらで耳に口付けをしたら暴れたけど、強く抱き締めたらすぐ寝てしまった。
子どものように可愛らしく、脱がせば妖艶な大人の女。
おかしな女だと思いながら寝顔を見ていた。

「アヴィス様、愛しています」

ノアリスの寝言に耳を疑った。
俺の愛は求めず、公爵夫人として生きていくのではないのか?
ノアリスの言葉を額面通り受け取っていた俺は、彼女に酷い仕打ちをしていたのではないのか?

いろいろ頭に浮かんで混乱したが、腕の中に居るノアリスを見ていたら、いつの間にか寝落ちしてしまった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


翌日、公爵家の『影』と呼ばれる調査員にタチアナの行動を報告させた。
訪問時に感じた違和感は、やっぱり男だった。
しかも、借りてやった住まいに同居していた。
俺が行く日は、別の部屋に隠れていたのだろう。
完全にヒモ男だ。

俺は頭を抱えた。
俺も兄上も、女を見る目が無さ過ぎる…
もっと早く影に調査させときゃ良かった。

そして、恐ろしい想像が頭を過ぎった。
あの女、処女じゃねえな?

「ギルバートとは何も無かったの!心で繋がってたから。純潔はあなたに!!」

そんなこと言ってだけど、今考えたらアソコはゆるゆるだったような?

しかも、この前、ぬるぬるだったのは直前にヒモ男とやって出された後だったりして??

どうやらタチアナは同じ『おかしい』でも、面白おかしいノアリスと違って、頭がおかしい女だったようだ。

俺は急に吐き気がして、仕事を早退した。
俺の早退に驚いたノアリスは、付きっきりで身の回りの世話をしてくれた。
ああ、この子は可愛いと心から思った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

萎んだ花が開くとき

陽花紫
恋愛
かつては美しく、男たちの愛から逃げていたクレアはいつしか四十を過ぎていた。華々しい社交界を退き、下町に身を寄せていたところある青年と再会を果たす。 それはかつて泣いていた、小さな少年ライアンであった。ライアンはクレアに向けて「結婚してください」と伝える。しかしクレアは、その愛に向き合えずにいた。自らの身はもう、枯れてしまっているのだと。 本編は小説家になろうにも掲載中です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

真面目な王子様と私の話

谷絵 ちぐり
恋愛
 婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。  小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。  真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。 ※Rシーンはあっさりです。 ※別サイトにも掲載しています。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

処理中です...