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7.あの女はおかしい Side アヴィス
しおりを挟むタチアナに対する不信感のようなものが芽生え、三日滞在するつもりが残り二日は公爵家に帰ることにした。
『仕事が忙しく、そちらに行けない』と書いただけの手紙一通の連絡だが、今回が初めてのことではないので、タチアナは気にしないだろう。
仕事を終えて公爵家に戻ると、寝室に居る筈のノアリスが居なかった。
グレゴリーに聞いても「もう休んでいらっしゃる筈」と話にならない。
もしやと思って執務室を見に行ったら、仕事をしながら寝ていた。
夫が居ない日位、サボればいいものを…
風邪をひくといけないので、抱き上げて寝室に連れて行く。
ふわっとスミレの匂いがして、頭がクラクラし、体が熱くなる。
このままでは寝ている子を襲ってしまいそうで、湯浴みをすることにした。
湯浴み後、ベッドに腰掛け髪の毛を拭いていたら、寝ぼけたノアリスが挙動不審になっていた。
天然なのか知らないが、彼女の突拍子もない行動が結構面白くて、気に入っている。
一晩家を空けただけなのに、妙にノアリスが懐かしくて、抱き寄せて眠りたかった。
いたずらで耳に口付けをしたら暴れたけど、強く抱き締めたらすぐ寝てしまった。
子どものように可愛らしく、脱がせば妖艶な大人の女。
おかしな女だと思いながら寝顔を見ていた。
「アヴィス様、愛しています」
ノアリスの寝言に耳を疑った。
俺の愛は求めず、公爵夫人として生きていくのではないのか?
ノアリスの言葉を額面通り受け取っていた俺は、彼女に酷い仕打ちをしていたのではないのか?
いろいろ頭に浮かんで混乱したが、腕の中に居るノアリスを見ていたら、いつの間にか寝落ちしてしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、公爵家の『影』と呼ばれる調査員にタチアナの行動を報告させた。
訪問時に感じた違和感は、やっぱり男だった。
しかも、借りてやった住まいに同居していた。
俺が行く日は、別の部屋に隠れていたのだろう。
完全にヒモ男だ。
俺は頭を抱えた。
俺も兄上も、女を見る目が無さ過ぎる…
もっと早く影に調査させときゃ良かった。
そして、恐ろしい想像が頭を過ぎった。
あの女、処女じゃねえな?
「ギルバートとは何も無かったの!心で繋がってたから。純潔はあなたに!!」
そんなこと言ってだけど、今考えたらアソコはゆるゆるだったような?
しかも、この前、ぬるぬるだったのは直前にヒモ男とやって出された後だったりして??
どうやらタチアナは同じ『おかしい』でも、面白おかしいノアリスと違って、頭がおかしい女だったようだ。
俺は急に吐き気がして、仕事を早退した。
俺の早退に驚いたノアリスは、付きっきりで身の回りの世話をしてくれた。
ああ、この子は可愛いと心から思った。
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